目次
名作? 劣化カイジ?
先日、イカゲームを見た。
まず、結論から言うと、かなり楽しめた。
今回は、話題作イカゲームの感想をば。
イカゲームって何?
タイトルにもなっている「イカゲーム」とは、朝鮮半島では馴染みがある子供の遊びだと言う。
詳しくは本編か、Wikipediaの説明を見て欲しい。
本作は、優勝すると456億ウォン(日本円で約45億円相当)の賞金が貰えるデスゲームに訳アリの登場人物達が挑んでいく物語である。
ザックリ、ヒットの要因は?
単純に面白いのは勿論だが、近年の韓国エンタメの世界的躍進やコロナによる自宅で楽しめるエンタメ需要の拡大は、要因として外せないだろう。
ネットフリックスでは、愛の不時着、梨泰院クラス、ナビレラ等を始めとした良質な韓国ドラマが配信、ヒットしていて、その流れに乗った形だ。
まだ、全9話とドラマシリーズとして見るとコンパクトで、非常に見やすく、まとまっているのも良い。
人こそ選ぶが、グロい描写が多いのも本作の魅力で、撃ち殺される刺し殺されるは、ぬるい方。
高所から落ちて、脳みそがテロりとしてる描写など、画面から目を背けたくなるグロ描写が時々出てきて、非常に刺激的だ。
また、俳優たちの演技が非常に上手く、クサイ演技ではなく上手い演技を俳優陣が心掛けているので、見ていて違和感が少ないのは、非常に見やすかった。
名作の良いとこ取りが上手い!
本作は、様々な作品の良いとこ取りが上手に出来ている。
人によってはパクリと感じるかもしれないが、それをオリジナルに昇華出来ているからこその、世界的ヒットなのは間違い無いだろう。
良く引き合いに出される「カイジ」「ライアーゲーム」の、金をかけた命がけのゲーム設定に、「バトルロワイアル」的な直接的な命がけ感が加わり、それらの作品を知っていると似てると感じるシーンも多いだろう。
そこに誰でも簡単に理解出来る子供の遊びをモチーフにしたゲームが毎回設定され、カイジの限定ジャンケンの様な駆け引きのゲーム性よりも、より感覚的に簡単になっているのだが、ゲームに負けると借金を背負うではなく容赦なく殺されると言うバトルロワイアル要素によって、緊張感が凄まじい事になっている。
また、デスゲームの要素としては理不尽な死や物語の仕掛けから、「SAW」の影響も見て取れた。
赤基調の服に、特徴的なマスクで揃えた管理者達の洗練された組織感は、カイジの黒服よりは「ペーパーカンパニー」の強盗団に、見た目で受ける印象は近く、スタイリッシュだ。
子供の遊びに命をかけるギャップ
- トライアル:メンコ→負けるとビンタ
- 第1ステージ:だるまさんが転んだ→鬼に動いた所見られるか制限時間以内にラインを超えないと射殺
- 第2ステージ:型抜き→制限時間内に型抜き成功以外射殺
- 第3ステージ:綱引き→負けたチーム全員転落死
- 第4ステージ:ビー玉遊び→手持ちのビー玉を相手に非暴力的駆け引きで奪われたら射殺
- 第5ステージ:飛び石ゲーム→制限時間内にガラスの橋を渡りきらないと転落死
- 第6ステージ:イカゲーム→負けた方が死
と、ルールが明快な遊びで行われる駆け引き。
遊びに負けたら死亡の恐怖も刺激的だが、各ゲーム毎に攻略法を参加者が編み出し、それで勝負の結果が逆転する展開は、分かりやすく面白い。
表と裏から描く仕掛け
本作は、ゲーム参加者の主人公や敵味方のキャラクター視点からの描写と、ゲーム運営側の視点、そして行方不明の兄を探しにゲーム会場に潜入する有能な刑事視点と、複数の立場による視点で一つの出来事が描き出される。
主人公目線では、訳アリな登場人物達が金欲しさに自分の意思でイカゲームに参加し、人生の一発逆転を狙う。
ゲーム運営者側は、独特な思想を持ちつつ、ゲームを滞りなく運営する事に尽力し、やっている事は外道なのだが、自分達が課したモラルやルールに従っている事で、変な魅力がある。
ゲームは自主的な参加のみ認め、参加者の機会は平等、民主主義が基本原則、投票で過半数が中止を求めれば止められる、ズルがバレれば参加者も運営者も罰せられ、優勝すれば本当に金は支払われる等。
正直さを重要視しているので、犯罪者で敵なのだが、思わぬところで道徳的で、見ている側は「正しい事を言っている」と感じてしまう事も多いだろう。
時々、ゲーム外の殺人を黙認したり、VIPの娯楽として見世物にしたり、金持ちの気まぐれで貧乏人が殺される要素が出てきて、結局芯の部分は悪なのも分かりやすい。
その裏と表の間に、組織を探る刑事が紛れ込み、同時進行でイカゲームの輪郭が見えていく事で、物語の世界観には奥行きが感じられるわけだ。
社会に見放された人々の逆転のチャンス
イカゲームの参加者は、共通点として金を必要としている。
金が必要な理由は人それぞれで、社会から見放されたり、適応出来なかったり、はぐれ者だったり。
そんな登場人物だが、それぞれが社会問題を象徴し、背負っている。
・主人公のソン・ギフン。昔は働いていたがリストラされてしまい、現在は運転代行をしつつ、糖尿病を押して市場で働く母親のスネをかじって生きている、ギャンブル好きな中年の男。別れた妻との間に愛する娘がいるが、妻の再婚相手がアメリカに家族で移住しようとしている事で、唯一生きる意味の家族が引き裂かれる事態に晒される。更に、母親の糖尿病が悪化し、治療費用が必要になった事で、娘を取り戻し、母親を救う為にイカゲーム参加を決意する。一度成功のレールから落ちると這いあがれない社会の敗北者として描かれるが、基本が仲間や家族思いの良いヤツ。
・秀才の幼馴染、チョ・サンウ。アメリカにいると思っていたが実は先物取引で失敗するわ詐欺で逮捕状が出ているわで、60億ウォン近い借金を抱え、まあ、このキャラがとにかく悪いw「ブレイキングバッド」のウォルター先生を想像出来れば分かりやすいが、キャラクター性が完全にウォルターで、一見外面も人当たりも良いが、自分の目的の邪魔になる相手は友人であろうと殺そうとすると言うヤバい奴で、隠れたモンスターである。
・一応のヒロインポジションのカン・セビョク。一番の仲間になる、家族を救いたい脱北者の女性で、スリ師をしている。
・悪徳経営者に給料未払いで苦しめられるパキスタン人の出稼ぎ労働者、アリ・アブドゥル。子供と妻の為に参加する。
・牧師の父親にレイプされ、母親を殺された為に父親を殺した、ジヨン。
・脳に腫瘍が出来て余命長くない老人、オ・イルナム。
・裏切り過ぎて追われる身となったヤクザ、チャン・ドクス。
・周囲を利用してでも生き残ろうとする詐欺師の、ハン・ミニョ。
と、紹介したのは一部のキャラだが、この先、社会で生きていても大成功どころか普通の生活も望めない人々が、一発逆転を狙って命がけで参加する。
この設定は、貧富の差が広がる、あらゆる社会で「もしも自分だったら」と考えさせ、共感させるには十分なパワーがある。
どんでん返しも、完璧
上記した、既存の作品を見た事がある人なら、どんでん返しを先に読む事が出来るだけの材料が劇中に散りばめられている。
だが、その認識が無い人が見ると「お前が黒幕だったのか!」と言う展開が、何回かある。
これは、オチが読めていても、かなり楽しめた。
バッドエンドは、辛いよ
イカゲームだが、かなりメンタルに来るバッドエンドが待っている。
あまりにも救いが無い終わりが待っていて、優勝者が456億ウォン入りのクレジットカード貰っても、これは素直に喜べない。
見た人は分かると思うけど、あのオチ、きついよね。
シーズン2に続く?
人気度と終わり方から、シーズン2の可能性は十分に感じられる。
1シーズンだけで、今回のイカゲームは綺麗に終了しているし、話としてもまとまっているので、安心して見られるが、解決していない問題、残された謎、次回作への引きで本作は幕を閉じている。
終わりに
核心的なネタバレを、一応は避けての感想だったが、例に出した作品が好きな人なら同系統の作品として楽しめるだろうし、嫌いなら無理だろう。
まあ、話題だし、ブームに乗っておくのも悪く無い。
そんな感じ。