興味を引いて、心を掴むテクニック
ここで言う「つかみ」とは、物語の冒頭部分で、作品に興味を持ってもらう為に、視聴者のハートを鷲掴む事を指す。
映画脚本では「フック」とも言われ、そっちは心を引っかける的なニュアンスだ。
漫画でも、映画でも、小説でも、ゲームでも、他の何でもこの「つかみ」は非常に大事な要素である。
「つかみが弱い」「もっとつかみを強く」そんな事を言われた事がある人も多いのでは無いだろうか?
具体的には、つかみを作るには、どうすれば良いのか?
どうすれば、興味を持ってもらえるのか?
謎の提示
基本となるつかみの一つ、それは謎の提示だ。
気になる謎を提示され、その答えを知りたければもう少し話に付き合ってくれとなれば、知りたかった謎の答えを提示されるまでは人は興味を持って作品を追い、率先して情報を収集してくれる。
謎の提示は、非常に強いつかみになる。
では、具体的にどのような謎を提示すれば良いか?
と、ドンドン対象の人が気になり、知りたがるであろう疑問を提示する事で、読者や視聴者の中では自然と謎が浮上する。
疑問を浮かばせるには、問題を提示する必要がある。
その問題は、対象読者が答えを聞けば理解出来る事が望ましい。
だが、簡単すぎる問題では、意味が無い。
考える材料の殆どは対象読者が持っていて、作品を読んだり見たりする中で、情報を合わせて初めて答えに辿り着く難易度が丁度良い。
ちょっと難しいが、難しすぎないのが良い。
そう言う答えにいずれたどり着く、そんな問題をジャジャンッと提示する事で、それがつかみとなるわけだ。
では、改めて、物語を作る上で具体的には、どの様な謎があるだろうか?
大別すると、
- これからどうなる
- どうしてこうなった
この2つが基本となる。
これからどうなるは、知ってしまったら、その物語の先が気になる事の提示だ。
良い例は幾らでもあるが、有名な物と言えばジャンプの看板マンガ「ワンピース」だろう。
5ページ目に注目。
手元にあるなら見る。
無くてもAmazonのkindleお試しで無料で確認できる。
と言うか、有名過ぎてネットに転がってるだろう。
まず、この1ページ目のプロローグからフックを取り除いてみよう。
簡単だ。
ロジャーのセリフを引いてみよう。
では、フックがある事で、どう変わっただろうか?
改めて5ページ目を見よう。
大海賊時代と言う世界観説明だけでなく、強力なつかみとなる「おれの財宝か?欲しけりゃくれてやるぜ…探してみろ この世の全てをそこに置いてきた」がある事で「この物語は、これからどうなるの?」と読み手は嫌でも思うわけだ。
手法としては、他にも色々あるが、ニュアンスが少しでもつかめれば良い。
面白いと思う作品の1話目を色々見て見よう。
これがフックかと言う要素に気付けるはずだ。
次は、どうしてこうなっただ。
これは、知ってしまったら、その登場人物や状況に至った経緯が気になる事の提示となる。
基本的に、作品本編内に存在する事が確定している未来の事の、チラ見せの先出しだ。
これも良い例は幾らでもあるが、有名な物と言えばジャンプの看板マンガ「鬼滅の刃」が良いだろう。
プロローグである5ページ目が後の20、21ページの流れに乗るコマである事がそこまで読めばわかる。
これが、未来のチラ見せと言う意味だ。
この手法を使うと、シーンが未来に追いついた時に「だからこんな状況だったのか」と言う、一種の達成感を読み見る者に与えることができる。
まずは、
- これからどうなる
- どうしてこうなった
を覚えよう。
作品が好きならワンピース式とか鬼滅式と覚えても良い。
ご褒美のチラ見せ
謎以外にも、つかみを作る方法がある。
だが、こちらは謎方式を強化するぐらいの方が良い事だけは断っておく。
それが、ご褒美のチラ見せだ。
さて、あなたの描いている書いている撮っている演じている、その作品のジャンルは、何だろうか?
このご褒美のチラ見せは、作品ジャンルが重要になる。
そのジャンルの物語の、ご褒美シーンは何だろうか?
これが、つかみとなる。
要は、撒き餌作戦だ。
例えば、ホラーだとする。
スプラッタだとする。
ご褒美は、何だろうか?
そう、スプラッタなシーンだ。
それも、作中では一番刺激が強いわけじゃないが、主人公達が遭遇する最初には絶対持ってこない過激な物が良い。
要は、真中ぐらいのレベルを見せて、これ以上の良いの、入ってますよとニッコリするのだ。
他のジャンルでも、同じだ。
サメ映画なら、サメがジャブをシュシュシュと不幸な海水浴客にお見舞いして、血の海や肉片を作るとかが良い。
その作品を見て、どこに大勢が快感を感じているかを正確に理解しよう。
ただ、もし、あなたが思うジャンルの見せ場と、あなたの作品に他人が求めるジャンルの見せ場に乖離があると、悲惨な事になる。
そこだけは一致させよう。
もし、ヒロインの裸がウリじゃなくバトルがウリなのに、客寄せで冒頭はヒロインの全裸やラッキースケベから入ったら?
以後、裸がウリだと信じている客が入り続ける事になる。
そうなると、作品は裸を求めるバトルがオマケの客と、バトルを求める裸はオマケの客が同居する事になる。
それを狙っていてバランスが取れれば良いが、狙っていない場合は、客寄せで使ったつかみの要素に作品の足が引っ張られ続ける事になる事も少なくない。
だから、ジャンルの把握が重要なのだ。
作品を見て欲しい対象者が、どんなジャンルだと思って見に来ていて、つかみのご褒美のチラ見せを見て「そうそう、これの凄いのが味わいたい」と言うのが、理想だろう。
終わりに
つかみについて、基本的な事の解説をしてみた。
他に、
あたりの記事が役にたつかもしれない。
もっと良いのは、好きな作品の冒頭部分を見て、どこで「おもしろそう」とか「先が気になる」と思ったかを、自身の中で形にする事だ。
つかみが作れる様になると、作品が目にとまり、じっと読んだり、見たり、聞いたりして貰えた時に、つかみが無いよりも少し先までは、付き合って進めてもらえる確率が上がる。
これは、物語を作る者からすると大きな価値がある。
なぜなら、冒頭部分が最も物語作品は覚える事が多く、脱落する確率が高いからだ。
1話切り、3話切り、そんな言葉がある。
アニメやマンガを判断する時は、そのぐらい余裕をもって判断しよう、的な使い方をされる言葉だ。
ただ、切る人は1話の冒頭で、切る時は切る。
絵が無理、文章が無理、演者が無理、そう言う場合は、仕方が無いかもしれないが、つかみの有無で「おもんなさそ」と切られては、それは勿体無い。
つかみを作って、興味を引こう。
興味が引ければ、本当に作品世界に興味を持ってもらう様になるまでの猶予が与えられる。
猶予を使ってセットアップを終えれば、最高の形で物語が動き出す。
もっと大きな謎や、ご褒美があるよと言えば、飽きるまでファンはついて来てくれるはずだ。