世界を作ろう
ファンタジーでも、SFでも、現実ベースでも。
物語作品の世界が魅力的な舞台と感じると、世界その物に興味を持ち世界観の広がりと深まりが喜びとなる事さえある。
そんな、魅力的な世界を考えるには、どうすれば良いか。
今回は、その為の視点について解説していく。
神視点で見ると?
まず、創作する世界を見る時、神の視点がある。
神や創造主以外が知り得ない情報を前提に、世界観を作って行ける点で、一見万能に見える。
だが、神視点と言うのは、はるか上の方から俯瞰して見ているに過ぎない。
Googleマップ等のマップアプリ、世界や国の地図を見た方が良い制作過程はあるが、それが向かない部分がある事も同時に分かるだろう。
広く浅い範囲が見えるこの視点は、世界の大きな流れを把握するのに役立つ。
国と国の関係や、長い歴史と言った非常にマクロな視点だ。
なので、神の視点で全体を把握した後は、視点を何かにフォーカスしていく必要がある。
神の視点では、近くが見にくいのだ。
地図視点で見ると?
地図を見る事で、実に様々な事が分かる。
気候、地形、地質、水源、都市の位置、接する隣国、土地の広さ、そう言った情報から湧くイメージがある。
スケールをダウンしても、見取り図、間取り図、周辺地図、等の有無はディティールに大きな差を生む。
歴史視点で見ると?
時間の経過がある以上、その世界には歴史が必ずある。
歴史とは、大きな事件や出来事であり、その世界の中でルールが大きく変化したターニングポイント集と言える。
支配者の変化、条約、気候変動、大災害、どれも文明や社会と言う環境に大きなルールチェンジが起きるタイミングだ。
歴史を知るとは、ルールチェンジの過去を知る事と同義だ。
作る世界の中で、過去に、どんなルールチェンジが起きて来たかを考えれば、独自の世界を形成できる。
旅行者視点で見ると?
魅力的な世界を作る為には、その世界に何があると魅力的に感じるかをイメージすると良い。
その為には、旅行者となってみよう。
旅行者となり、何をするか。
その土地で特有の料理、動物、ランドマーク、異国の文化、そう言った物を楽しむシミュレーションをするのだ。
そして、それを世界観の設定として使おう。
旅行者視点で見れば、魅力を感じる様に出来る筈だ。
安全に観光出来る旅行者視点として魅力を感じない世界では、その点での魅力が望めなくなる。
聖地巡礼が出来るならしてみたいと思える様な舞台にするには、何が必要だろうか。
移・居住者視点で見ると?
引っ越し、異世界転移や転生、何らかの理由で別の場所で急に暮らさないといけなくなったとする。
あるいは、元々その土地で暮らしてきたとしよう。
その場所に暮らし、独自の文化を知っていく視点は、旅行者とは全然違う。
居住する場合は、その土地に染まる必要があり、旅行者よりも多くの場合は期間も長くなる。
居住するからこそ起きるイベントやドラマもある。
冠婚葬祭や、その土地、その場所でのお約束の出来事は何だろうか。
住む事で、どんなルーティンで毎日を過ごす事になるだろうか。
中心的ランドマークは何?
特徴的な舞台としたいなら、その中心的なランドマークから世界を広げていくと良い。
- 異種族・異文化の村、町、都市、国、空中都市、水中都市。
- 特別な機関、城、魔法学校、魔法使いの塔。
- 未踏の地、ダンジョン、大空洞、坑道。
- 滅んだ凄い文明や集団、ポストアポカリプス、オーバーテクノロジーの眠る廃墟。
- 超巨大建造物、ダイソン球、リングワールド、墜落した巨大宇宙船。
- 等々……
ランドマークは、作品の象徴となりえるパワーを秘めている。
魅力的な文化や文明と、何か全く新しい要素を掛け合わせてオリジナルランドマークを作ると、世界設定はかなり強い。
- イギリスの寄宿学校×魔法学校=ホグワーツ
- リングワールド×オーバーテクノロジーの廃墟=Halo
- 大空洞×ダンジョン=アビス
みたいな掛け算だ。
そのランドマークの設定が面白かったり魅力的なら、作品パワーは大幅に強化されるだろう。
中心的支配者、支配層、支配ルールは何?
その世界を支配しているのは、誰だろうか?
あるいは、何だろうか?
その土地で生きるには、誰の顔色をうかがったりする必要があるか。
その土地では、どんな他の土地ではダメな事がまかり通り、他の土地では良い事が禁止されているだろうか。
現実に無い追加ルールの結果をシミュレーションすると?
魔法が本当にある世界なら、全ての事象が魔法がある事を前提に設計される事になる。
特殊な素材や、物凄い科学技術がある事が前提の世界なら、やはり、その前提で全てが設計された世界となる。
例えば、身近に実態があってコミュニケーション可能な神が存在する世界なら、現実とは宗教観が大きく変わるのは想像しやすいだろう。
神が一人なら一神教以外存在し得ないし、神が複数いるなら多神教以外あり得なくなってしまう。
神の存在の有無が明瞭でない世界とは、解釈や想像の余地に差が生まれる為だ。
もし、美形しか生まれない世界なら、その世界からは顔の美醜と言う概念は薄れるかもしれない。
多くの人がテレパシーが出来る世界なら、コミュニケーションギャップは大幅に減るかもしれない。
人種や肌の色が多かったり、少なければ、差別の歴史の形は大きく変わるかもしれない。
不死身なら死の概念が無い世界になるし、多産多死が前提の世界なら命の価値は軽くなるかもしれない。
現実に無い追加ルールを前提としたシミュレーションの結果を描くのは、それだけで独自性が高い世界を作る事が出来る。
魅力的な居住者をシミュレーションすると?
その世界に、主人公以外に1人、あるいは数人しか登場しないとする。
その人が魅力的で、一緒に暮らしたいと思えるなら、なかなか魅力的な世界をフォーカスして見れている可能性がある。
世捨て人の魔法使い、変人の女騎士、田舎暮らしの貴族、達観した辺境伯、人から隠れ暮らす魔族、人の社会に紛れる宇宙人、健気に一人暮らしをする子供、一緒に暮らして楽しそう、面白そう、一緒に幸せになりたい、幸せにしてあげたい……
そこを中心に、世界を広げて見ると、キラキラとした世界を上手に溢れさせる事が出来るかもしれない。
終わりに
世界観を作る際に、持っていると役立つ視点についての解説でした。
魅力的な世界を想像・創造する役に立てば嬉しい限りだ。