分かんないなら、こう魅力を引き出せ!
どんなに本当は魅力的だとしても、その魅力を引き出して描写しない事には、誰にも伝わることは無い。
物語を描く際、登場人物の魅力を引き出すのは、自然に出来ていないならば、意識して引き出してやるしかない。
しかし、魅力を引き出すには、どうすれば良いのか?
そもそも、そのキャラの魅力は?
まず、マニュアル運転で魅力を引き出す場合に重要なのは、その登場人物の魅力が、そもそも何なのかの認識だ。
その際、重要となるのは何だろうか?
フィジカル
見た目の魅力は、強力な武器となる。
フィジカル面の魅力は、それだけで相当強い。
見た目の可愛さ、格好良さ、美しさ、セックスアピール、等々の魅力がある事は有利に働く。
しかし、それだけだと、それだけの登場人物となってしまう。
考えてみて欲しい。
性格が最悪の写真モデルと、性格も良い写真モデル、どちらがより魅力的に感じるか。
愚問だろう。
人とは正直なので、似たフィジカルのスペックであるなら、見た目では近くても性格が良い方を選んでしまう。
登場人物を描く以上は、見た目だけの魅力では、足りないのだ。
メンタル
では、性格的な魅力は、何だろうか?
メンタル面の魅力とは、何だろうか?
優しい、明るい、頭が良い?
そう言ったポジティブな面を魅力的と感じるのは理解出来る。
実際に、それらは魅力に繋がるし、美徳だろう。
だが、同時に、登場人物の魅力としては、弱く感じないだろうか?
そう、それらは、普遍的な域を、出ていない。
性格的な魅力とは、普遍性の外にある。
普遍性の外側とは、新規性であり、キャラの魅力とは、そのキャラクター特有と分かる個性の獲得が必須と言える。
想像して欲しい。
優しく明るく頭が良いイケメンと、優しく明るく頭が良いブラコンなイケメン、どっちが個性的に感じるだろうか?
ちなみに、性格の個性は、魅力を引き出す為のとっかかりに過ぎない。
なので、性格の個性は、ポジティブでもネガティブでも構わない。
大事なのは、意外性だ。
基本の性格や、見た目に反している事が好ましい。
個性を刺激する状況を描け!
魅力を引き出すには、性格的な個性を引き出す状況が必要になる。
つまり、ブラコンと言う個性があるなら、キャラ固有の魅力を引き出すには、ブラコンと言う性格が表出してしまう状況を描く必要がある。
フィジカルとメンタルを下支えするキャリアとパーソナル
登場人物の見た目と性格は、必ず、キャリアとパーソナル、つまり、これまでの人生と、変えようがない個人の情報が影響を与える。
特に、キャリアと言う、これまでの人生は、キャラを魅力的にする個性を形成したエピソードがあれば、キャラクターの奥行きとなり、リアリティにも繋がる。
これまで、こんな人生を送ってきたから、こんな性格になって、こんな見た目をしている。
それを形成するのが、キャリアとパーソナルだ。
状況形成で、反応を引き出せ!
キャラが輝くには、輝ける状況が不可欠だ。
言われりゃ分かっていても、その登場人物の魅力が溢れ出るシチュエーションを作り出していない人は沢山いる。
分かっている事と、出来てる、やっている事は、全然別物だ。
魅力的な登場人物の設定を、いくら丁寧にコネて形にしても、それを活かせる状況を整えない事には、魅力は伝わらない。
魅力を引き出す状況とは、個性的な反応を登場人物に呼び起こさせる。
その登場人物を特別にしている個性が、その状況では表に引き出され、尚且つそれが魅力に繋がる所まで描けて、ようやく、ここでようやく、見ている人に登場人物の魅力が伝わる。
長かった。
実に長かった。
と言う程は、長くない筈だ。
だが、キャラだけを作って、安心して物語の上で動かしてしまう人は、実に多い。
それで魅力を引き出せる状況を自然と設定できるなら、それで問題は無い。
だが、魅力を感じさせる個性と、物語の描きたいテイストや方向性に噛み合いが悪いと、登場人物の魅力の良い所を表に出せず、物語だけが淡々と進んでしまうなんて事態になりかねない事も起きうる。
もちろん、個性的な行動も描け!
反応を個性的に描けたら、それだけでも、かなり良い。
だが、足りない。
物語であれば、個性的な反応だけでなく、個性的な行動も描かなければならない。
個性的な行動とは、その登場人物の魅力となりうる個性を備えた、価値観によって決断の末に取られた行動だ。
魅力的に描くのが主人公であるなら、その行動は問題解決に繋がっている事が望ましい。
だが、全てを問題解決の正解の行動にすれば良いと言うわけではない。
別の記事で挙げた「綱引き状態」を描くなら、間違った行動も描くべきだ。
その際、その間違った決断の根拠は、登場人物の持つ個性が由来する描き方であれば、キャラクターの描写は深まり、登場人物の魅力を表出させる事にシッカリ繋がる。
まとめ
- キャラに個性的な魅力があるか
- 個性的な魅力を引き出す状況を作れているか
- キャラの個性的な反応と行動を描けているか
それらが噛み合って、ようやく登場人物の魅力は引き出される。
そして、魅力だけでなく、特徴と言う観点でも、これは同じ事が言える。
例えば、金持ちと言う特徴を持つキャラの特徴や魅力を出すなら、金を使わせるシーンを描く事が有効なのは理解出来るだろう。
物凄い解像度とディティールを備えた複雑なキャラクターを描く際も、それを意識した状況を描く事で魅力が溢れる。
むしろ、それが出来る様になると、高い瞬間火力を登場人物の魅力で発揮出来る様になる。
登場人物の魅力が瞬間火力的に高いのは、あらゆる場面で非常に強い。
まずは、とにかく登場人物をオンリーワンにする個性的な独自性を掴もう。
独自性さえ設定出来れば、いくらでも設定を活かせる状況はイメージ出来る。
狙うのは、そのキャラの意外な一面が溢れてしまう状況だ。
テクニック:キャラ愛への契機
その登場人物の事を、はじめて知った人が「大好きになる瞬間」を、まずイメージしよう。
既存のキャラクターでそれを掴めると、新たに作るキャラクターにも、そのエッセンスを使う事が出来るようになる。
大好きになる瞬間を描く為には、登場人物と状況に何が必要かを考える必要がある。
必要が分かれば、分解して必要を特定して満たしていけばいい。
逆算すれば、答えは分かる。
辛い思いをしているのに仲間の為に我慢をして強がる瞬間、初めて仲間に心を許す瞬間、絶望から救われる瞬間、自信を打ち砕かれる瞬間、悪人の自信を打ち砕く瞬間、ピンチに駆けつける瞬間……
魅力が溢れる、その瞬間が特定できれば、勝ったも同然だ。
そのシーンは、最高に画になる一瞬で、額に入れて飾りたくなる筈だ。
見ている人が登場人物の反応や決断で、意外性やカタルシスを感じる瞬間こそ、登場人物を大好きになる瞬間であり、物語を見ていて気持ち良くなる瞬間でもある。
物語の山場だけがカタルシスとは限らないし、刺さる意外性は意外な物かもしれない。
キャラを愛する契機となる山場は、思わぬ所に潜んでいる事もある。
仲間の死に怒り震えるシーンが登場人物の魅力を表しているなら、それを描ける登場人物と状況が必要だ。
頭の中でシミュレーションして、あまりのエモさに涙が出たり、痺れたり、惚れたり、呼吸が荒くなる瞬間を沢山持とう。
怒られて拗ねる、しょげる、みっともなく言い訳をする事で魅力が溢れる事だってある。
昨今の人気作品のヒロインは、変顔と言うテクニックで意外な一面を出して人気を獲得している。
イケメンや美人売りのタレントや配信者が、思わぬお茶目な一面を見せたり、見た目では分からない趣味を披露すれば、大きな魅力となる事も珍しくない。
あんな感じなのに、実はオタク趣味とか、実は運動音痴とか、実はスポーツ万能とか、実は優しいとか、明かされて面白いとか共感出来るとか愛せる二面性が漏れ出ると、人気が嫌でも出てしまう。
逆に「あれ、そんな瞬間、全然ないぞ?」と感じるなら、キャラが見ている人の心に刺さっているのか、疑いの目を向ける事が作品の改善に繋がる事もある。
魅力的なキャラクターは、その瞬間さえ、一発気持ちが良い個性の発露をする瞬間さえ描ければ、短い時間で好きになって貰える。
時間をかけないと愛されない、魅力が伝わらない登場人物は、その瞬間が訪れるまで時間がかかったり、お膳立てに時間がかかっている。
それで構わないキャラもいるが、主人公とヒロインは、それでは問題がある。
出来ればメンターやライバルも、早いうちに魅力を伝えたいところだ。
あなたの好きな物語のキャラは、どの瞬間にあなたに真に愛される様になっただろうか?