構図のベストセラー本、待望の続編!
「クライマックスまで誘い込む絵作りの秘訣ストーリーを語るための必須常識:フレーム、エネルギー、構図/vol.2」は、その名の通り続編である。
本国で2010年、日本では2014年に刊行された「クライマックスまで誘い込む絵作りの秘訣ストーリーを語る人のための必須常識:明暗、構図、リズム、フレーミング/vol.1」の続きに当たる本だ。
構図、レイアウト、優れたビジュアルストーリーテリングに必要な要素の基本概念を、230のユニークなイラスト、166の図解によって分かりやすく解説。
と言うのが前作の内容で、とても良い本だった。
今作は、前作で触れられなかった基本概念に触れ、優れたビジュアルストーリーテラーになる為の基礎知識を、同じぐらい詰め込んだ珠玉の1冊となっている。
クライマックスまで誘い込む絵作りの秘訣ストーリーを語るための必須常識:フレーム、エネルギー、構図/vol.2
マルコス・マテウ=メストレ (著), 平谷 早苗 (編集), 株式会社Bスプラウト (翻訳)
世界中で読まれているベストセラー、待望の続編
ジャンルを問わず役立つ強力なツール、「構図」の知識を広げましょう。
構図(ショット)を検討するときには、鑑賞者の視点に立ちます。
「何を」「どう」見せるかをしっかり考え、ストーリー、キャラクター、アクションに鑑賞者を引き込みます。ベストセラーの前著「クライマックスまで誘い込む絵作りの秘訣 vol.1」では、構図の基本的な考え方に加えて主にライティングの効果に注目しました。本書では、フレーム(画面、コマ)という限られた領域に、要素(対象)を配置する方法に注目します。
現代は媒体が増え、映画、TV、ゲーム、SNS、コミックなどのコンテンツを視聴するフォーマット(サイズ、縦横比)の選択肢が広がりました。
さまざまなフォーマットで具体例を分析しながら、フレーム(画面、コマ)のフォーマットの利点を生かした画作りの方法を学びます。知識の幅を広げ、優れたビジュアルストーリーテラーに成長するための基礎を固めましょう。
【概要目次】
はじめにCHAPTER 1 フレームの空間(と、その中のエネルギー)を利用する
CHAPTER 2 構図におけるフロー 基本
CHAPTER 3 構図におけるフロー 実践演習
CHAPTER 4 構図におけるフロー 群衆を描く
CHAPTER 5 1.85:1と 2.35:1 のわずかな違い
CHAPTER 6 題材とフォーマットの不一致に対処する
CHAPTER 7 画面の分割 三分割法、二分割法、四分割法の構図
CHAPTER 8 短いシーケンスのキーショットを検討する
CHAPTER 9 グラフィックノベルのコマ
CHAPTER 10 プロセスとギャラリーの分析索 引
本書は、「Framed Ink: Frame Format, Energy, and Composition for Visual Storytellers」(Design Studio Press刊)の日本語版です。
Amazon引用
著者について
マルコス・マテウ=メストレ:スペインのパルマ・デ・マヨルカ生まれ。リードアニメーションデザイナー、グラフィックノベルアーティストとして活躍しています。長編アニメーションの業界での経験は、30 年を超えました。クレジットされた主な映画作品には、「バルト」「プリンス・オブ・エジプト」「サーフズ・アップ」「ヒックとドラゴン2」などがあります。長編映画の制作においては、主にドリームワークス・アニメーション、ネットフリックス・アニメーション、ソニー・ピクチャーズ アニメーションの作品に参加し、デザインおよびシネマティックの観点からの構図、ライティング、ビジュアルコンティニュイティを専門にしています。
そのなかで培った経験は、国際的ベストセラー「クライマックスまで誘い込む絵作りの秘訣」「パースによる絵作りの秘訣 vol.1、vol.2」「ストーリーを語るドローイングの秘訣」に著されています。映画制作に参加する傍ら、ドローイング、イラストレーション、ビジュアルストーリーテリングを10年以上にわたって教えています。
現在はロサンゼルス在住、Netflix作品にプロダクションデザイナーとして参加。
- 出版社 : ボーンデジタル
- 発売日 : 2022/6/14
- 言語 : 日本語
- 大型本 : 128ページ
- ISBN-10 : 4862465293
- ISBN-13 : 978-4862465290
- 寸法 : 0.7 x 22.3 x 29.7 cm
更に深く理解出来る、構図の専門書
本書の目次は、
- はじめに……009
- 本書について……010
- さまざまな画面フォーマット……010
- すべてのフォーマットに当てはまること……011
- フレーム内のフロー(流れ)と緊張……011
- 最後にもうひとつ……011
CHAPTER 1 フレームの空間(と、その中のエネルギー)を利用する……012
- フレームのスペース
- 主な要素
- ゲームフィールドのエネルギー
- ストーリーの同じ瞬間、違うアスペクト比
- 縦長のフォーマット
- 横長のフォーマット
- 奥行き感を表現する
- 緊張のライン
- 農夫とタルの作例
CHAPTER 2 構図におけるフロー 基本……025
- 複数の要素:キャラクターを組み合わせる
- はじめにすべきこと
- 新鮮なアプローチを保持する
- シルエット:イントロダクション
- シーン内の要素をフォーマットに適合させる
- 太平洋の漂流者
CHAPTER 3 構図におけるフロー 実践演習……033
- 意味があり、自然なフローの基本
- 楽しい演習(1):ボールを投げる
- 楽しい演習(2):木から木に飛び移る
CHAPTER 4 構図におけるフロー 群衆を描く……043
- 大群衆:白熱のサッカーゲーム
- 中世の戦闘
- 参考資料の重要性
CHAPTER 5 1.85:1と 2.35:1 のわずかな違い……055
- アスペクト比の変更
- 幅を変える:高さは同じ
- 掩体壕の襲撃
- 低空飛行
- 高さを変える:幅は同じ
- 掩体壕の襲撃:幅は同じ
- 妥協点を探る:高さと幅を調整する
CHAPTER 6 題材とフォーマットの不一致に対処する……065
- 縦長の題材、横長のフォーマット
- パースのごまかし
- 横長の題材、縦長のフォーマット
CHAPTER 7 画面の分割 三分割法、二分割法、四分割法の構図……072
- 三分割法での構図
- 二分割法での構図
- 四分割法での構図
CHAPTER 8 短いシーケンスのキーショットを検討する……090
- 本質を探る:実践例
- 一般的なシェイプ言語
- ショットの構成要素についての考察
- キーショット:ある日のマリーナ
- フォーマットの変更:構図にどう影響するか
CHAPTER 9 グラフィックノベルのコマ……105
- 言語として、コマを構成する
CHAPTER 10 プロセスとギャラリーの分析……113
索 引……126
と言う構成となっている。
内容としては、前作で触れられていなかった様々な構図に関する知識を詰め込んだ専門書で、前作を読んだ身からすると構図と言うテーマで前作と似た様な量の知識を更に1冊書いてまとめられる著者の専門性の高さ、深さ、広さにはシンプルに驚いた。
【good】確かな実力と情報
長編アニメーション業界で30年のキャリアと、10年を超えるアーティストへの指導者としての経験を持つ作者による同出版社通算5冊目(多分)の書籍で、ファンからすると安心のいつも通りのクオリティだ。
を以前ブログでも紹介した事があるが、過去作を読んだ事があるなら雰囲気は掴みやすいだろう。

全ページが、絵と文字によって、この密度で情報が詰め込まれていて、前作同様に128ページの専門書とは思えない、重めのボリューム感を中身で出している。
その状態で、各章でテーマに沿って、構図の基本知識、ケーススタディ的な「この場合、どうする事が最適解か?」の提示等を行い、1冊通して構図について語っていて、マジで凄い。
ちなみに書籍説明にも軽くあるが、前作が「物理的要素とライティング」をコンセプトに絵作りを説明していたのに対して,今回のコンセプトは「フレーム(表現可能領域)とフォーマット(アスペクト比)」を土台に「アクションとリアクション、圧迫ポイントと解放領域、緊張ラインとスムーズなフロー、フレーム内転換点」等をそれぞれ扱い、違う切り口で絵作りを説明している。
【good】ページ所狭しと情報が詰まっているが、読みやすさに工夫がある

とにかくページ所狭しと文章と絵で埋め尽くされている本書は、見る人によっては「読みづらい」と感じるかもしれない。
だが、見方が分かると文字数の圧も怖くない。
文字数や絵とのバランスにもよるが、基本的に文章は1ページの左右に別れ、文章のブロックの大半は300文字程度、せいぜい2tweetぐらいの分量だ。
更に、文章ブロックにはセットになる絵が近くに配置されていて、絵について説明した物となるのが基本構成である。

つまり、文字が詰まっている様でいて、実は一つずつ順を追って少しずつ説明してくれているだけなので、活字が苦手な人でも見方さえ分かっていれば、SNSを利用出来るなら楽々読めるだろうと言う事だ。
【good】絵のエネルギーの掴み方本の構図版
別の著者の本となるが、エネルギーの掴み方本として有名な、
等の書籍では、絵を描く時に躍動感が向上する技術書としてモチーフのエネルギーの掴み方を説明していた。
本書では、それを構図で説明していて、構図の中にあるエネルギーの流れの掴み方が分かる様になる知識が掲載されている。


みたいな基本の先にある、より重要で、より実用的で、絵が上手い人が無意識に使っている技術を言語化しての解説は、出来ていない人からすると目から鱗がポロポロこぼれる気付きがある物もあるだろう。
本としての評価は?
本体価格2,700円+消費税で、定価2,970円と、値段は前作よりおよそ200円増しだが、まだまだ十分価格相応に感じた。
書かれている構図についての専門知識を自分の技術に落とし込むまでに、多くの人は時間がかかるだろうが、それが一部でも身に付いた時の効果は計り知れない。
今まで曖昧だった構図と言う物への理解が深まる事による恩恵を考えると、構図を扱う人には目を通して欲しい1冊だ。
このレビューが、本書の購入を検討する参考にでもなれば幸いです。