会話で進む物語
会話劇、あるいは対話劇とは、主に会話によって進行する物語である。
通常の物語と何が違うかと言えば、物語は主人公の行動、つまり会話だけでなく会話を含んだ行動全てによって前に進む。
会話劇は、身体を動かす行動よりも会話に圧倒的な重きを置いて構成される事で、会話主体の物語と見る者に印象付ける事が出来る。
では、会話劇を作るには、どうすれば良いか?
極端な話が、ダイアローグやモノローグと言った台詞を描き、アクションを描かなければ会話劇には、間違い無くなる。
しかし、面白い会話劇とするには、それだけでは足りない場合が多々ある。
では、どうすれば良いか?
登場人物が会話しているだけでは物語は前に進まない
基本的な勘違いをしている人がいないとも限らないので、まず最初にいつものを。
ただ登場人物が会話をしても、物語が前に進まない事は、多々ある。
どんなに魅力的なキャラクターがおしゃべりをしているシーンを描いても、それで魅力的なシーンになったり、物語が紡げるかは、作者のセンスや技量次第となる。
最初に知っておいて欲しい、あるいは、思い出して欲しいのは、そもそも物語とは、主人公が問題を解決する為の一貫した行動を描くものと言う事だ。
つまり、会話劇を描こうとして登場人物が会話をしても、劇中に提示される問題を解決する為に台詞が紡がれていない場合は、物語は1ミリだって前に進まない。
会話劇だとしても、問題を解決する為の行動を主人公が取る必要があると言う事だ。
これは同時に、会話劇に向いているジャンルと向いていないジャンルをある程度分けるものでもある。
会話劇とは、会話を行動の主として、劇中の問題を解決する事が可能な問題にしか、正常に対応できないと言う事だ。
会話による問題解決
会話による問題解決とは、実に様々で、
- 告白劇(恋愛、自白等):言いづらい事を相手に告げる為の準備を整え告白する
- 推理劇(ミステリー等):謎に対して証拠から真実を探し暴く
- 誘導劇(知能犯、詐欺師、復讐、タイムリープ、師匠と弟子、等):相手を言葉巧みに罠にハメたり、導いたり
- 勘違劇(コメディ等):会話の噛み合わなさ、ズレ方の滑稽さを楽しむ
- 説得劇(審判、交渉、議論等):一つの議題に対して違う立場の人が論を戦わせる
- 回想劇(オールジャンル):事件や出来事の顛末を語って聞かせる
等々は基本的な物だ。
これらの様に、会話によって主人公が問題を解決可能な事は、ジャンル的に会話劇に向いている。
会話劇の利点
会話劇は、大仰なアクションもスタントもセットも必要ない事の方が多い。
必要最低限の舞台があれば、ほとんどの重要な行動は会話によって進むからだ。
他には、登場人物が大量の会話をせざるを得ない事で、キャラクターを立てる事も容易となる。
会話劇を面白くするには?
面白い会話劇を作るには、キャラクターの個性は不可欠だ。
オンリーワンの強烈な個性を持ったキャラクターが、自分の目的を達成する為に、キャラクター独自の考えと作戦で会話を組み立てていくからこそ、面白くなる。
キャラクターの個性と同じぐらい大事な事は、会話劇としてのどんでん返しを設定しておく事だ。
会話劇が進み、謎が解けた時に「ふ~ん」では、会話劇は盛り上がらない。
予想外の事実が判明したり、見ている者が騙されたり、勘違いしていた事が正され、驚く事で会話劇は「おおっ!」と見る者を唸らせる。
基本は通常の物語と同じって事だ。
終わりに
今回は、面白い会話劇の作り方について簡単に解説した。
問題解決行動の主を会話で構成した物語と言うだけなのだが、会話縛りによって得られる効果は意外なほどある。
同時に、会話劇では描きにくい物語がある事も認識だけしておくと、無駄に難しい創作に挑まずに済むだろう。
余談:会話劇の反対
会話劇の反対は、会話を除く行動のみで描く物語である。
映画ではサイレント等と呼ばれるが、会話が無かったり会話内容が分からなくても、ジェスチャーやパントマイム、アクションだけで何が起きているか分かる点で、非常に面白い。
会話劇に得られる効果がある様に、サイレントにも効果があり、言葉を使わないと言う事は翻訳せずに世界中の人に届ける事が出来る等、その利点は言葉を排除しただけなのに結構大きい。
当然、面白いサイレントを描く場合は、会話以外の問題解決行動を描く必要があるのは言うまでもない。
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