Photoshopと3Dを組み合わせて美麗な背景込みのイラストを描く手引書
Photoshopで描くスチームパンクの世界
六七質 (著)
“曲がりくねった配管”、“複雑に噛み合った歯車”、“そこかしこに漂う蒸気”……SFのサブジャンル中でも熱狂的な支持を集めるスチームパンクの世界。
そんなレトロでクールな世界をPhotoshopで描く方法を、ファンタジーアートを得意とする人気イラストレーター「六七質」が伝授します。
レイヤー構造や塗りの基本、Photoshopの3D機能を用いた制作フロー、遠近感を持たせる方法、時間帯ごとの演出の仕方、背景やオブジェクト、キャラクターや衣装の描き方など、多数の作品メイキングを通して解説!
また、巻末には本書のために描き下ろされたイラストの線画や作品ギャラリーページも掲載。
湖畔に佇む廃墟、趣ある家具がひしめく室内、華やかな装飾をまとうキャラクターたち、スチームパンク風にアレンジされた乗り物など、六七質が織りなす魅力的な世界観を存分に味わうことのできる一冊となっています。
【ご注意】
本書のラフ(下描き)制作やオブジェクト制作の一部で使用している「Photoshopの3D機能」は「Photoshop 2021(v22.5)」をもって段階的に機能廃止予定となっております(詳しくはAdobe社のHPをご参照ください)。一部の下描きはPSDデータ(レイヤー結合状態のもの)をダウンロードデータとして付属していますが、解説および図版と同じように読み進めたい方は、Photoshopの3D機能が搭載されているバージョン(お勧めはPhotoshop 2021(v22.2~22.4))にてご使用ください。
▼著者プロフィール
六七質(むなしち)
町並み、工場、廃屋、巨大建築物などをモチーフにするイラストレーター。「幽落町おばけ駄菓子屋」シリーズ、「幻想古書店」シリーズ、そして江戸川乱歩の小説など、挿絵作品は多数。また、「テイルズオブゼスティリア」「テイルズオブベルセリア」についてはコンセプトデザインで参加。「デジモンワールドRe:Digitize」の背景デザイン、「遙かなる時空の中で 6」の世界観デザイン、「ガラスの花と壊す世界」の世界コンセプトデザイン、「Princess Principal」コンセプトアートなど、アニメやゲームでのデザインも多く手掛けている。分業制の絵本「えんとつ町のプペル」ではメインイラストレーターを務めた。
- 出版社 : ボーンデジタル (BONDJ)
- 発売日 : 2022/9/29
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 266ページ
- ISBN-10 : 4862465242
- ISBN-13 : 978-4862465245
- 寸法 : 18.7 x 13 x 2 cm
目次
序章1 レイヤーと塗りの基本
レイヤーの基本
いろいろな質感の物を描く
序章2 3D機能の基本
円柱/立方体/球を作る
窓を作る
方眼紙を作る
3Dグリッドを作る
歯車を作る
Chapter1 街の景観
街の景観
時間帯を変える
霧や靄を使った遠近感の出し方
Chapter2 生活区域
湖畔の屋敷
居住区の民家
緑を描き込む
Chapter3 屋内・施設
書斎
小部屋
Vanishing Pointを使ったグリッドの作り方
図案の配置
Chapter4 住人
貴婦人
キャラクターの服装
躍動感を出す
Chapter5 乗り物
車
乗り物のデザイン
朝焼けの空を描く
巻末1 塗り絵用線画
巻末2 ギャラリー
スチームパンク世界を描く!
目次は上記の通り。
本書は、Photoshopを使用して、スチームパンクの世界を描く事に特化したハウツー本である。
そもそもスチームパンクとは、現実世界に比べて蒸気機関によって大きく発展した世界を指すジャンルだ。
電気でなく蒸気によって殆どの動力が動く設定は、世界観の中にスチームを通すパイプ、開け閉めするバルブ、排出される蒸気、蒸気を動力に動く構造物として蒸気機関車に見られる部品や歯車、等が多く描かれ、独特な雰囲気を作り出す。
そんな世界を描く際に、どんな風に絵の設計をして、線を描き、色を塗り、光と影を描き、雰囲気を作るか、それを補助する機能として、どんな機能をどんな風に使えば良いのかが、かなり細かく解説されている。
なので、絵のゼロからの描き方とかではなく、絵は描けるがスチームパンクってどう描けば良いのか分からないと言う人にとっては、本書は大いに役立つだろう。
【good】スチームパンクに限らない、Photoshopでのイラストを描く基本がギュッと詰まった一冊

スチームパンクと言う人気がありつつも、ややニッチなジャンルに特化した本だが、基本的にはPhotoshopを上手に使ってのイラストの描き方について記されていて、紹介されているPhotoshopの機能や、著者の技術は、スチームパンク以外を描くのにも十分以上に役立つ物だ。

レイヤーの管理、マスク、質感の出し方、3Dの2Dイラストでの利用の仕方、ブラシの作り方、基本から応用に至るまで実に様々な絵を描く際の技術が詰め込まれているので、デジタルで絵を描くのに慣れてないとか、もっと効率的に描きたいとか、プロはどんな工夫をして積み重ねて画作りしているのか知りたい、等の人達には、本書は期待に応えてくれる筈だ。

【Hmm】事故?
事ある毎に書籍内に書いてあるのが、本書内のPhotoshopの3D機能が提供停止が決まっていると言う悲しい文言。
きっと、本書執筆中にお知らせがあって、筆者も目の前が真っ暗案件だと思われる。
絵の描き方関連の内容自体は非常に良いが、使用ツールとして選んだPhotoshopを提供するAdobeに裏切られた(別に裏切っちゃいない)形での、仕方が無いから注釈での対応が物悲しさを演出している。

blenderやMAYAで自力で頑張れとあるが、その辺のツール差を埋める具体的な説明は無い(基本は近いと思うが、完全に同じツールでは無いし、別ツールのモノをどう持ってくるのが効率的か等の説明も無い)。
なので、絵の描き方指南に関しては文句ないが、ツールの使い方指南の部分で、微妙に足りない部分が出てしまっている。
状況が想像できるだけに擁護したいが、同時に突っ込まないといけない所。
と言って、blenderやMAYA等の3Dソフトとの連携を追加する元気は無かった、のかな?
仕方が無いけど、悲しいなぁ。
本としての評価は?
定価3520円、本体価格3200円。
266ページに渡って詰め込まれたイラストメイキングのテクニックと、それを使う過程の披露は、著者の絵を魅力的に感じる人にとっては、とても貴重であり、一級品の資料となるだろう。
世に出回っている絵の描き方の良い本と比較しても遜色ない良書と言って良い内容に思う。
価格も、本の出来相応だと感じる。
だが、純粋なハウツー本として見る場合、似た様な書籍を既に持っているなら特別新しいハウツー情報が載っていると言う類の物では無い。
本書は、絵を既にある程度描ける人がPhotoshopを使って更に効率的に上手くイラストを描く方法を丁寧に解説する、そのテーマに著者が得意なスチームパンクを選んだ本である。
それを分かった上で、既にある程度絵を描ける人が、Photoshopやblender等のデジタルツールを組み合わせて、設計した絵を効率的に形にしていくのを学ぼうと思うのであれば、本書は大いに役立ってくれる筈だ。
また、単純に著者のファンは、人気イラストレーターのメイキングや、オマケのギャラリー、塗り絵用の線画、等を堪能出来る点で、ファンアイテムとしても良いだろう。
このレビューが本書を購入する検討材料や参考になれば幸いです。
本書発行元リンク:株式会社ボーンデジタル