シーズン1だけだと判断が難しいサスペンス
ネットフリックス配信ドラマ「1899」を見終えたので、感想を。
内容も、評価も、今の所だけど難しい作品でした。
ネタバレが割と致命傷になる作品なので、まっさらな気持ちで見たい人は読まない方が賢明。
面白い作品かどうか知りたいって人は、現状だけど、人によるとしか言えない。
なんも終わって無いし、なんも分かってない。
「1899」とは?
「ダーク」のクリエイター陣が作った、難解なドラマシリーズ作品である。
ジャンルで言えば、SFサスペンスかな?
ダークがヤバい程好きって人には、刺さるし期待も出来ると思う。
こんな物語
階級差別が当たり前の時代、大西洋を航行する巨大な客船「ケルベロス号」が、4ヵ月前に行方不明となっていた同型の客船「プロメテウス号」から座標信号を受けとり、救助に向かう。
主人公のモーラは、兄の手紙を受け取り、そんなケルベロス号に乗っていた。
ケルベロス号が座標に到着すると、プロメテウス号は、たった一人の少年を除き、無人となっていた。
唯一の生存者と思しき少年を保護した時を同じく、プロメテウス号から密かにケルベロス号に移って来たと思しき男の影が船内に。
少年(と謎の男)がケルベロス号に乗ったタイミングで次々と不可解な人死にが出始め、船内は混沌とし始める。
少年と謎の男の正体は?
船で何が起きているのか?
モーラを中心としつつも、複数視点での群像劇
本作は、モーラが主人公だが、他に
- 移民しようとしている貧民の家族
- 家族を亡くした酒飲み船長と船員
- ボイラーの船員達
- 訳あり上流階級夫婦
- 訳あり神父
- 日本人のふりをする中国人の娼婦母娘と訳を知ってそうな夫人
- プロメテウス号の謎の少年と謎の男
- 冒頭で登場した主人公の父親
等々のグループが登場し、物語が進むにつれて追加したり欠けたりしながら、グループの構成が入れ替わりながら、徐々にまとまり、物語の秘密に迫っていく事になる。
最初、キャラが見分けづらかったり、覚えられなかったり多少あったが、見てく内に何となく覚えられるレベル。
ただ、物語としての盛り上がりのエンジンが本格的にかかってくるのは、割と中盤ぐらいから。
以下、ネタバレ注意
映画・ドラマ・アニメ等を見慣れた人なら、使われる文法的に初っ端で「ああ~、こういう話だろうな」と言うのが分かるもの。
本作は、1899年っぽいタイトルで、舞台も1899年っぽい。
だが、その前提が怪しい事が早々に分かってくる。
冒頭、精神病院で父親をどうにかしないといけなくて、兄を探す主人公が父親に敗北。
そのまま、悪夢を見ていた様に船内で目覚めるシーンから始まる。
この時点で、本作の主舞台が現実か妄想かが怪しく感じる。
そして実際、本作の舞台は、誰かが何かを目的に作った仮初の世界である事が、徐々に分かってくる。
どんでん返し
本作は、実は正しい日付は2099年10月19日で、舞台は星間移民船のコールドスリープ装置だかの中に作られた仮想現実世界での出来事。
プロジェクト・プロメテウスのサバイバルミッションでした、と言うオチなのだが、どこまでがプロジェクトの通りなのかが分からないのが、シーズン2で明かされるのだろうか。
とにかく、コンピュータと人の記憶によって構築された仮想現実上のシミュレーションであり、客船の上の繰り返される8日間を登場人物の乗客1423人と乗組員550人の全員が、延々とループしている事がクライマックスで判明する。
せいぜい、近未来が舞台で仮想空間の「完全なる首長竜の日」方式か、実は全部主人公の妄想で「ルールオブローズ」方式あたりを予想して見ていたので、構造的には前者に近いのだが、本当の舞台が宇宙と言うぶっ飛び方にはビックリであった。
なぜシミュレーション世界が、嘘の記憶を植え付ける手間がかかる200年前で無いとならなかったのだろうか?
シーズン1は謎だらけエンド
結局、なぜ1899年なのか、なぜ嘘の記憶を植え付けて船上の8日間を繰り返さなければならなかったのか。
主人公の父親と、プロメテウス号の謎の子供と男は、何をしたかったのか。
そして、記憶を失う前の主人公の狙いは、何だったのか。
み~んな、シーズン2に持ち越し。
なので、分かった事は、嘘の記憶を植え付けてのループシミュレーション内で、みんなで酷い目に遭っていたという事ぐらい。
そして、その原因に、主人公と兄と旦那と子供と父親が関わってるっぽいと言う事だけ。
どうやら、主人公の兄が詳しく何か知っているみたいだが、手紙やメッセージだけで、完全に謎の存在。
そもそも、宇宙船は人々を乗せてどこに向かっているのか?
シーズン2はよ。
そんな感じである。
不完全燃焼が嫌な人は、シーズン2まで待つのもありかも。
刺さったキャラ
映画「タイタニック」で、演奏家達とか、潔く仲良く死を選ぶ上流階級の老夫婦とか、そんな感じで心を打ってくれた存在が、移民しようとしている家族の親父である。
もう、完全にモブと侮っていたが、このおじさんは、マジで良い。
おじさんの妻が、娘がレイプされ妊娠して、レイプした奴を撃ち殺した事で、メンタルグズグズ。
それが原因で家族揃って移民せざるを得なくなった家族なのだが、妻が人生辛すぎて信仰に逃げると言う状態で、ノリとしては、映画「ミスト」のソフト目な宗教ババアである。
なのだが、旦那は心を病んだ妻に尽くして、本人は神を信じてないのに話を合わせたり、旦那なりに妻を支えようと一生懸命な姿が描かれる。
そして訪れる、物語も佳境、選択ミスが死に繋がる状況。
長男と次女を失い、相変わらずメンタルボロボロの妻を皆が見捨てて行こうとする場面。
旦那は「妻を置いていけない」と妻と共に死ぬ事を選び、最後まで妻をなだめながら、成す術もなく死んでしまう。
全然大した活躍をしないし地味なキャラなのだが、このおじさんの言動は、おじさんが無神論者なのに妻の為に神を信じるフリをしている事が判明して以降化けて、最後は本当に泣けてしまった。
「タイタニック」で一番心に残っているのが、演奏家や老夫婦と言う人は、この下りを見るためだけに見ても良いかも知れない。
他、見所
何といっても、飛び降り自殺を誘発させる音のシーンは恐ろしい。
コンコン音が鳴っているだけかと思ったら、みんなが正気を失ってデッキに出ていく。
そして、躊躇なく海に飛び込んでいくのだ。
これで怖いと言うか、最悪だと思ったのは、淡々と移動して死ぬ事だ。
それ自体も怖いが、何が嫌って、残された側が、止められたかもしれないのに意味が分からず見守ってたら大事な人が自殺すると言うシステムが質が悪い。
自分の大事な人の自殺を止め損ねた人も、自殺しない様に自分を柱に括りつけたり、自殺しそうな他の人を止めないとならない状況は、当事者だったら一発でメンタルやられそうである。
少年殺そうとしたりボイラー占拠した船員が、防水扉閉じて水死も良いっちゃ良いけど、やらかしも目立って、なんだかなと。
後は、謎のシャフトから通じる、船底に作られた外界シミュレータルームも、初見では良い意味で見てるこちらの脳がこんがらがって良い仕事をしていた。
終わりに
シーズン1だけだと、マジで状況設定が明かされるだけで、何も分からない。
とりあえず、嘘の記憶で、嘘の出来事と言う事で、劇中で起きた悲惨な事が本当には起きて無くて、死んだキャラも生きてそうなのは救いだね(わからないけど)。
記憶は嘘だけど性格は本物なら、妻想いのおじさんは相当良い人って事でしょ。
劇中でも、何度ループしても似た死に方して愚かとか言われてたけど、おじさん側は全部現実だと信じた状態で、おかしくなった妻への愛が何周しても揺るがないって、存在が尊過ぎる。
トータルで見れば、シーズン1単体でも、まあまあ面白いけど、まあ、シーズン2待ちが正直な感想だよね。
状況設定は面白かったけど、主人公は自分の子供や旦那の為に記憶を失ってループしてたのか、それもプロジェクトの設定なのか。
追記
打ち切りらしいです。
とっつきにくい作品だったのが見事に仇となった形に。
全部が謎のまま終了と、最悪の終わり。
でも、移民家族のお父さんは、好き。