見る側のストレスが少ない作品への考察

読んで・見て・聞いていて、疲れにくくする為に

物語は、作る方は勿論だが、受け取る側も体力を使う物。

どんなメディアであっても、読者・視聴者はコストを払い、その中には作品接種時に奪われる体力や精神力も含まれる。

体力や精神力を削るのは、作品の情報量や、情報の性質、情報に対して受動的か能動的か等によって変わってくる。

例えば、活字のみの本媒体だと、人は文字や文章から情報を自ら能動的に読み解き、想像力を膨らまし、情報の性質を受け取る。

だが、絵が動き音が出る映像媒体だと、人は視覚と聴覚から受動的に情報をキャッチ出来て、情報量も多く想像力で補完するコストが低く済む。

人は、漠然と作品接種コストを予想して作品を選んでいて、その中でも「ストレス」のコストは、作品を見る人を選んだり、作品の接種を時に躊躇させる。

ストレスには様々な種類があり、人によっては特定のストレスは絶対NGなんて事もある。

この記事では、そんな見る側のストレスに触れつつ、各種ストレスが少ない作品を作る方法について語る。

「でも、面白い物語には強い葛藤が必要なんですよね?」と言う疑問

面白いエンターテインメント性の高い物語では、主人公は苦難に身を置き、強い葛藤を抱えつつ、強い動機を持ち、どうにか問題を解決しようと奔走する事が求められる。

それ自体は、間違いない。

その際、適度なストレスは物語を面白くするスパイスとなる。

では、欲しいストレスと不要なストレスは、どうやって見分ければ良いだろうか?

作者や作品による所が大きいので、各自で自己判断すれば良い事ではある。

だが、同時に、ストレスレベルを、作品のテイストを考えずに高めに設定したり、低めに設定したりと言う人は、非常に多く、自己判断が出来ていない人は少なからずいる。

適正な作品毎のストレス

まず、作品のジャンルやテイストを見よう。

そこで、基本的に適正なストレス値が決まってくる。

軽いコメディなのか、重いサスペンススリラーなのか、硬派な社会派ドラマなのか、暖かい人情話なのか。

その時点で、作品を見る人が「ストレス高すぎ」とか「ストレス低すぎ」と言うラインの判断が出来る人が殆どの筈だ。

他にも見分け方がある。

まず、ストレスを与える出来事による登場人物、主に主人公の反応と行動の変化を見る事だ。

反応が小さすぎる場合は、ストレスが小さすぎるし、反応が大きすぎる場合は、ストレスが大きすぎる。

それから、問題を解決する為の行動がストレス以前と軌道も方向も変わらなければ出来事として弱く、変わり過ぎる場合は出来事として強すぎる。

適正ラインは、作品のシーンや演出によっても変わって来るが、しっかり反応し、軌道や方向の修正を迫られるが行動のゴール自体に変化が無ければ、ある程度良い塩梅と言えるだろう。

ストレスの原因

人がストレスを感じる主な原因は、簡単に言えば「危険」である。

危険信号を鳴らす事が出来るあらゆる要素を、人はストレスに感じ、ストレスの解消=安全、を求める様に出来ている。

それが生き残るのに有利だからだ。

痛み、不快感、恐怖、そして死や破滅、そう言った危険が、身体や精神に作用する事に繋がる事の全てがストレスだ。

人は適度なストレスを求める

娯楽の何割かは、安全にストレスを感じる事で快感を得ている。

お化け屋敷、ジェットコースター、バンジージャンプ、スカイダイビング、等々を想像して欲しい。

スリルや、浮遊感と言った本来であれば危険信号を、安全に程良く感じる事で、人は楽しめる様に出来ている。

本来は良く無いストレスを、心地良い刺激として消費出来るのは、人の基本機能だ。

問題となるのは、感じたいストレスと感じたくないストレスの取違いや吐き違いだ。

耐えられるストレス、耐えがたいストレス

安全が確保された状態でのストレスは、どんなに危険そうでもストレス値が上がり過ぎない。

テレビゲームで操作キャラクターが死んでも大丈夫みたいな物だ。

ペナルティがあっても、そこに大きすぎる虚無感やどうしようもない無駄や理不尽が無ければ、耐えられる。

セーブポイントが無い長いステージのラストで死んで最初からやり直しのストレスと、経験値や一部アイテムは回収出来てプレイの意味が残ってのやり直しのストレスでは、大きく違う。

いずれにしても、これは耐えられる人が多いストレスと言える。

物語で言えば、ストレスを感じる苦難が主人公に降りかかって、ストレスを解消しない場合に、何を失うか。

同時に、客観的に見て、ストレスの解消を主人公の置かれた状況で出来そうか、時間的に余裕があるか、出来なさそうだけど出来そうな作品のテイストか、等も関わってくる。

なろう系のチート能力で無双する作品なら、どんなに敵が強そうでも、作品のテイストとしてどうとでもなりそうな空気なら、そこまでストレスにならない。

一方で、耐えがたいストレスとは、それ一発で絶望や、明らかな実害を被って、何らかのマイナス値に降り切れる様な、大きなストレスだ。

例えば、ゲームで死んだら実際に死亡は、結構大きなストレスでのプレイを強いられるだろう。

これは「ソードアートオンライン(オンラインゲームに閉じ込められ死んだら実際に死亡のデスゲームをする)」の話では無く、実際にあなたがゲームを、頭に銃を突きつけられて遊んでいる姿を想像して欲しい。

そう言うのが、大半の人にとって耐えがたいストレスだ。

だが、作品の中で、そんな耐えがたいストレスを読者や視聴者に与える事が可能なのだろうか?

実害を与える事は、通常のやり方では、かなり難しい。

簡単にダメージを与える方法は、例えば、明らかな個人攻撃によってストレスを与える方法があるが、このブログを読みに来る様な真面目で良識と常識がある創作者は、そんな手段は取らないだろう。

そうなると、社会的なタブーを侵した表現や、特定の思想や宗教への攻撃等、ストレスを与える意図がそもそも無いと、中々、耐えがたい程のストレスを表現で与える事は難しい。

しかし、一部の人は耐えられないストレスとなると、話は違ってくる。

ホラー表現が苦手な人はホラー表現を入れるだけでストレスになるし、性表現が苦手な人は性表現を見ただけでストレスを感じるだろう。

創作者が気にすべきは、自分の作品を見て欲しい人が、どのストレスレベルを好み、どこまでなら耐えて作品に付き合ってくれるかと言う話だ。

注目すべきストレス要因の切り口

物語は何を表現するにしても、大なり小なりのストレスがかかる。

その中でも注目すべきなのは、主人公のキャラクターと、その行動属性のストレスだ。

物語が、主人公の行動を通して描く物である前提から逃れられない以上、主人公のキャラクターと行動にストレスがかかるデザインが行われている場合、そのストレスを受け止めたり楽しめる人以外に、その作品は楽しめ得ない。

そんなストレスは、多種多様に種類を分ける事が出来る。

ストレス主人公

主人公は、作品として狙いが無い限りは、過度なストレスを見る者に与えるデザインにしない方が無難だ。

見ていて共感も尊敬も出来ず、反感しか感じず、劇中で成長せず、周囲に迷惑を振りまき、害悪や悪意を巻き散らす様な主人公をデザインしても、それを面白さに変換する仕掛けが無ければ物語を追うだけでストレスとなってしまう。

主人公は、共感が出来て、応援出来て、劇中に成長や変化をし、それを見ている側が喜べて、何かしらの正しさを持っていて、悪い事をするにしても納得理由があって、そんなデザインの方が圧倒的にストレスが少ない。

主人公に共感性が無くて空気が読めず周囲に嫌われても仕方が無い様な属性を備えさせる場合、それが物語的な面白さに中盤からでも貢献するとしても、その序盤のストレスに耐えられない人は、面白くなる所まで進める事が難しいと言う認識は、非常に重要だ。

ストレスを完全に無くした棘も毒も至らなさも無い有能で善性的な主人公を作る必要は無いが、過度なストレスを主人公を通して作品に付与すると、作品は人を選ぶ様になっていく。

ストレス行動

ストレスを与える行動デザインは、聞くだけで「疲れそう」「だるそう」とストレス耐性の無い人に思われる。

例えば、殺人鬼やモンスターから逃げたり立ち向かう様なホラーやサスペンス作品は、ストレスレベルが高い。

冤罪で逃亡したり、不利な裁判や刑務所生活をする作品も、ストレスレベルが高いと言えるだろう。

一方で、ストレスレベルが低い行動を選ぶと、ストレス耐性が低い人でも面白そうと思える。

恋愛をテーマに、告白や交際を描いたり、学校や部活をテーマに、日常生活を描いたりだ。

ストレスを与える行動は、第一に危機感が非常に大きい。

行動し続けないと死や破滅が確定した状態で、バッドエンドから主人公が行動によって逃げ続けたり、必死に抗うタイプの行動は、人を選ぶ。

ストレスを与え辛い行動は、何かを失うと言う危機感よりは、ゼロをプラスに変えるにはどうすれば良いかの試行錯誤的な要素が強く、好き嫌いこそあるがストレスで人は選ばない。

人が行動する上で重要な指標が、トラブルとチャンスの割合で、ストレスフルな行動はトラブルが限りなく満ち満ちた状態だ。

チャンスをモノにできるかと言う前向きなチャンスで満ち満ちた行動は、ストレスレスとなる。

トラブル度とチャンス度のストレス%を上手くデザイン出来れば、ジャンル的にホラーでも「ウィリーズワンダーランド(殺人幽霊遊園地に行くが、主人公が強すぎて返り討ちにしていくコメディ)」の様に、ストレスが低いホラーを作ったりも出来る。

ストレス登場人物

人は、楽しむ為に作品と向き合う。

その際、主人公以外の登場人物も、悪いとストレスを上げる原因となってしまう。

作品のテイストに合わない登場人物は、それだけでストレスを跳ね上げる。

優しい世界に攻撃的な登場人物がいるのと、ハードボイルドな世界に攻撃的な登場人物がいる事は、意味が違ってくる。

また、味方にウザったい人物がいて切り捨てられない場合等も、ストレスレベルは上がる。

コメディリリーフのつもりで入れたのに、見ている人に総スカンを喰らうなんて事もあり得る。

大抵のストレスに耐えられる人でも、愛する作品にミスマッチや邪魔と感じるキャラクターには、ストレスを大きく感じてしまう物だ。

「ジャー・ジャー・ビンクス!」とかね。

敵にしても味方にしても、過度なストレスを要する仕掛けは、注意して扱った方が良い。

ストレス事件・出来事

事件は、そもそも物語の中で主人公に対してストレスを与え、行動を促す物だ。

だが、名探偵コナンを想像して欲しい。

殺人事件の発生は、ストレスがあるが、実は、そこまで大きなストレスには、ならない。

所詮は他人事だからだ。

仮に、蘭姉ちゃんや園子が殺人の被害者になった場合、そのストレスレベルは計り知れない。

この様に、事件や出来事には、主人公の人生を一変させるか、否かで一線が引かれている。

ストレスレベルが高すぎる物語の場合、毎回の様に主人公の人生を一変させかねない事件や出来事が起きて、破滅から逃げ続け、問題を椀子蕎麦の様に解決し続けなければならない。

ストレスレベルを低くする為には、人生を一変させるクラスの事は控え、回り道を強いられたりしつつも元の人生に戻れる程度の事を意識して起こす方が良い。

ストレスが少ない物語は、ミステリーに倣え

ミステリー作品は、主人公が成長や変化を強いられなくても、事件自体が他人事でも、面白く出来る構造が出来上がっている。

この構造を他のジャンルに寄せる事で、主人公が強過ぎでも有能過ぎでも解決を強いられる問題「謎」や「不明の解消」を軸に、他人の事件か、主人公がチャンスを掴む物語を描けば、ストレス値は極端に低い状態で、一定以上の面白さを持った物語を作る事が可能だ。

その際、物語は、一見するとバトルだろうがアドベンチャーだろうが、常に「謎を解明すると先に進める」と言う出来事を軸に、面白さを構成する事になる。

謎さえ解明できれば楽に先に進めるが、肝心の謎が簡単に解明出来ない事で、事件の真相がなかなか分からないと言う感じだ。

もちろん、上述した様々な要素には気を付けて設定を作らないと、変な所で不要なストレスを与える事になる事は、ある。

ま、参考までにね。

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