【創作論】物語を描く際に気を付けたい「想定する前提知識」についての考察【専門用語や固有名詞について】

どういう態度で、作品を提供するかの話

物語の劇中に登場するあらゆる要素は、見る人の前提知識に寄りかかり、見る人の中で意味が通じて伝わる事になる。

その際、いわゆる常識は、常識とされる文化圏では説明不要の当たり前の事として描かれ、作品固有の情報、固有名詞や登場人物、独自の設定等は、見る人が理解出来る様に描かれる必要がある。

こう言った説明必要性は、想定する見る人の前提知識を鑑みて、説明するか当たり前の物として説明しないかが選ばれる。

言われれば分かる事だが、これをぶっ千切る作品と言うのが、時々現れる。

いわゆる、表現上の約束事を破る行為は、狙いがあってやる場合もあるが、無自覚に破ってしまう場合もあり、これは、結構気を付けた方が良い事だったりする。

「パルスのファルシのルシがパージでコクーン」は、どんな態度なのか

ファイナルファンタジー13で本編を知らない人にさえ有名となった、「パルスのファルシのルシがパージでコクーン」と言う構文。

劇中の創作された専門用語が説明無しでバンバン登場して、プレイヤーを置いてけぼりする様を揶揄した物だ。

この用語は、簡単に例えて説明するなら、

  • パルス=宇宙、外世界、地獄
  • ファルシ=神
  • ルシ=巫女、奴隷
  • コクーン=星、内世界、楽園
  • パージ=切り離す

と言った感じで、例えてニュアンスを説明するなら「宇宙の神様が選んだ巫女が星に送られ」ぐらいの意味である。

これから分かる事は、専門用語を使う場合は、例え正確でなくても専門用語を知らない人の知っている物で例える事で事前知識を備えさせてから、説明しなければ意味不明になると言う事だ。

これは、コンピュータに全く詳しくない人に、パソコンのメモリが何かを伝える際に、作業机を例えに使ったり、IPアドレスが何かを伝える為に、住所を例えに使ったり、そう言った事と同じである。

では、そんな誰も知る人がいない事を前提に設計される、作品オリジナル用語が登場する作品で、あえて前提知識を伝えず描くと言う姿勢には、どんな意味があるのか?

それは通常、主人公も専門用語の意味が分からず、主人公を通して、共感を持って世界観を徐々に理解して欲しい時に、取られるアプローチだ。

そう言う理由が無い状態で、突然専門用語だらけの難しそうな会話や説明をされても、ポカンとしか見ている人は、ならない。

そして、この主人公に共感しながら主人公を通して共に見ている人が世界について学ぶ手法は、出来るだけ見ている人が分からない時間を短くしなければ、危険だ。

登場する専門用語が一つであれば、多少時間が経っても問題にならない。

最悪なのは、大量の専門用語がバシバシ登場するパターン。

もっと最悪なのは、専門用語同士で関連し意味が発生する文言が登場するパターンと言える。

そう言った専門用語の登場の仕方は、作品を見る人に対して大きく配慮が欠けた姿勢と言える。

「雰囲気で伝わるかな」なんて見る人に対して甘ったれた態度は、通用しない。

説明が必要な個所で説明を放棄すれば、誰も付いてこれない。

誰も分からないであろう用語を出す為の基本手法

「お前は、ヌメパを習得する必要がある」

と劇中で登場したとする。

今適当に打った文字列なので、意味は無い。

だが、物語として、これを魔法や技と言った専門用語として使っていく場合は、どうすれば良いだろうか?

ルールは、

  • 出来るだけ覚えるの一度の言葉数は少なく
  • 出来るだけ音と意味の一致を素早く

これを心掛けるだけで、分かりやすさは格段に上がる。

その上で、様々な描き方が出来る。

劇中の登場人物が説明

手っ取り早いのが、専門用語を登場人物が説明する事で、分からない人に噛み砕いてくれる様に描く事だ。

「お前は、ヌメパを習得する必要がある」

「ヌメパ?」

「なんだ、ヌメパも知らないのか。これがヌメパだ」

「火の玉が浮いてる!?」

と、自然な形で説明すれば、以降は専門用語を説明しなくても、この作品の中ではヌメパ=魔法的な理解を読者はしてくれる。

主人公が正解に近い推測をする

一人称の物語なら、主人公に自分で説明させるのも手である。

「お前は、ヌメパを習得する必要がある」

(話の流れを見るに、ヌメパってのがこの世界の魔法みたいだ)

と独白させれば、見ている人に対して主人公から説明が出来る。

シーンを通して徐々に音と意味の一致をさせる

「お前は、ヌメパを習得する必要がある」

 そう言うと、突然そいつは火の玉をオレに向かって容赦なく打ち出してきた。

「なにしやがる! それに、ヌメパってなんだよ!?」

「避けてないでお前もヌメパで返してこい!」

等と描けば、説明をキャラクターの言動や状況を通して説明セリフを避けて描ける。

一般用語の専門用語化の注意点

「パルスのファルシのルシがパージでコクーン」の、逆パターンとでも言おうか。

パージは、少し近いが、ちょっと違う。

例えば、近未来を舞台にした刑事物で「犯人はロボット」と言う単語が劇中で登場したら、大半の人が普通に一般的なロボットを想像するだろう。

これを説明せずに「犯人はロボット(特別な洗脳を受けて操られている人)」として登場させる様な場合、混乱が生まれるのは、想像に難くない筈だ。

この、一般用語をオリジナルの専門用語や、業界の隠語的に使う場合、勘違いが生まれる余地がある場合は、それを解消しなければ混乱のもとになる。

また、オリジナル世界のオリジナル専門用語として出す場合は、その世界ではロボット=劇中使用の専門用語で問題が起きないが、一般世界をベースにした作品世界での専門用語とする場合、元の意味と専門用語の意味で干渉しない様にしなければ、更に別の混乱が起きる。

例えば、パートやヘルパーと言った言葉の意味が傭兵の世界があった場合「本来のパートやヘルパーは? バイトと介護職とか?」なんて言った問題が起きるなんて事も、時に起こり得る。

FF13の世界では、貨物を切り離したりする時に「パージ!」とは叫ばないのだろうと言う話だ。

他に、一般用語の専門用語化は、元の用語の持つイメージが、専門用語に付いてまわると言う事がある。

良いイメージなら良いが、悪いとか微妙なイメージが付いている言葉の場合、専門用語として適切ではない事もあり得る。

外国語や神話を作品の専門用語に

完全オリジナルな専門用語を格好良く作るのは、結構難しい。

大抵の場合は、耳馴染みや歴史的な重みもある分、外国語等を専門用語として使い分ける方が栄える。

魔法の力の事を、エーテル、マナ、オド、マジカ、とか、作品によって色々な呼び方をするが、完全オリジナルの造語の作品は圧倒的に少なく、大抵は何かしらの元ネタがある。

語源が地名や人名由来の罠

ノリや勢いで使ってしまうのは、一つ手だが、語源が地名や人名の言葉だけは、気を付けて使うか避けた方が異世界を舞台とするなら良いだろう。

様々な単位や発明とかも、人名由来の物が結構あるので、注意が必要だ。

ボルト、ワット、マッハ、レントゲン、等々だ。

オリジナルSF世界でガトリング砲とか、ディーゼルエンジンとか、ガトリングさんやディーゼルさんが作ったと言う話なので、地球由来の説明が出来ないと作品に変なノイズが乗る事になる。

不要な専門用語は、無い方が親切

専門用語は、独特とか、特殊な設定の物に限って付けるのが良い。

専門用語を使わずに劇中の言葉で綺麗に説明出来る専門用語は、見る人に覚える負担を増やすだけになるので、無い方がスマートだ。

例えば、魔法は魔法で良くて、下手にヌメパみたいな聞き馴染みの無い用語を使うのだとしたら、相応の理由が用意されていないと、ただただウザったい。

一方で、魔法の由来となる神の名前がヌメヌメだからとか意味があると、納得感が備わる。

ただし、そうやって設定を持たせる場合は、小手先の設定にせず、物語の根幹に関わってくる設定の一つとした方が、物語の完成度は上がる。

なんて事の無い専門用語が、実は伏線の一つだったと出来る方が、作品の面白さに貢献させやすいからだ。

終わりに

色々な専門用語のオラオララッシュは、見る人を突き放す事になるので、基本的には避けよう。

言葉の音と意味、そしてイメージまで考えて、出来るだけ分かりやすく作ろう、提示して覚えて貰おうと言う話でした。

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