問題を解決する為の基本は、出来るまで問題に向き合う事
「おおきなかぶ」と言う話をご存知だろうか?
ロシア民話の一つで、絵本にもなっていて有名な話だ。
「おおきなかぶ」には明確は物語のパラダイムがあり、ミッドポイントまでを使って、劇中の問題を解決している。
これは、あまりにもシンプルだが、三幕構成の二幕前半を端的に表しているので、二幕前半を描くのが苦手な人のヒントとして解説したり、内容をもしも膨らませるならと言う試みを記す。
おおきなかぶ
おじいさんが一粒のかぶの種を植えた。
すると大きな大きなかぶができた。
おじいさんはかぶをつかんで引っぱったが、抜けない。
そこでおじいさんはおばあさんを呼んだ。
おばあさんがおじいさんをつかみ、おじいさんがかぶをつかんで引っぱったが、かぶを抜くことはできない。
そこでおばあさんが孫娘を呼び、孫娘がおばあさんを、おばあさんがおじいさんを、おじいさんがかぶをつかんで引っぱったが、かぶは抜けない。
そこで孫娘がいぬを呼んだ。
いぬが孫娘を、孫娘がおばあさんを、おばあさんがおじいさんを、おじいさんがかぶをつかんでひっぱったが、かぶは抜けない。
そこでいぬがねこを呼んだ。
ねこがいぬを、いぬが孫娘を、孫娘がおばあさんを、おばあさんがおじいさんを、おじいさんがかぶをつかんで引っぱった。
それでもかぶはぬけない。
そこでねこがねずみを呼んだ。
ねずみがねこを、ねこがいぬを、いぬが孫娘を、孫娘がおばあさんを、おばあさんがおじいさんを、おじいさんがかぶをつかんで引っぱった。
するとかぶがぬけた。
学べる事
内容はWikipediaから引用した物だが、大抵の作品で、大筋この様な話だ。
大きなカブが抜けず、それを抜こうとすると言うだけの話である。
これは、
切欠
おじいさんが一粒のかぶの種を植えた。
すると大きな大きなかぶができた。
悩み
おじいさんはかぶをつかんで引っぱったが、抜けない。
決意
そこでおじいさんはおばあさんを呼んだ。
試練1
おばあさんがおじいさんをつかみ、おじいさんがかぶをつかんで引っぱったが、かぶを抜くことはできない。
試練2
そこでおばあさんが孫娘を呼んだ。
孫娘がおばあさんを、おばあさんがおじいさんを、おじいさんがかぶをつかんで引っぱったが、かぶは抜けない。
試練3
そこで孫娘がいぬを呼んだ。
いぬが孫娘を、孫娘がおばあさんを、おばあさんがおじいさんを、おじいさんがかぶをつかんでひっぱったが、かぶは抜けない。
試練4
そこでいぬがねこを呼んだ。
ねこがいぬを、いぬが孫娘を、孫娘がおばあさんを、おばあさんがおじいさんを、おじいさんがかぶをつかんで引っぱった。
それでもかぶはぬけない。
試練5
そこでねこがねずみを呼んだ。
ねずみがねこを、ねこがいぬを、いぬが孫娘を、孫娘がおばあさんを、おばあさんがおじいさんを、おじいさんがかぶをつかんで引っぱった。
ミッドポイント
するとかぶがぬけた。
と、言う構成に分けられる。
見ての通り、これは典型的な三幕構成の二幕前半までの物語で、絵本の場合はカブを引っ張るシーンで「うんしょっ! どっこいしょっ!」とか演出を入れ、抜けるか抜けないかのドキドキを演出したりする。
物語としての見所は、ドンドン引っ張る人数が増えていく事と、抜けるか抜けないかと言うワクワク感が面白さがメインだ。
これは、多くの二幕前半を描く上でも共通している物と言える。
多くの物語が、一人だと解決出来ない問題に対して、協力してくれる仲間を増やしていき、前よりも仲間が増えた分だけ解決が近付き、やがて解決に至ると言う話と考えると、二幕前半に必要な物がおおきなかぶから学べるだろう。
二幕前半を描くには、問題と解決方法が分かっていないとならない。
そして、最終的な解決に至るまでに、段階を踏んだり挫折を味わいながら、解決にジリジリと近づいていく過程の面白さも、おおきなかぶを見れば理解出来る。
問題の解決方法は、普通じゃない方が面白く、だから、犬、猫、鼠を動員すると言う意外な仲間の選出が行われ、それが面白さに繋がっている。
シンプルな話ながら、おおきなかぶは、必要最小限で面白く作られていると言えるわけだ。
内容を変え膨らます考察
おおきなかぶは、カブを収穫したいと言う事しか設定になく、仲間達も無条件で快く協力してくれる。
もしも面白可笑しく内容を膨らませるとすれば、おじいさんとおばあさん、それと孫娘には、強烈な動機があった方が良いだろう。
カブ料理を大勢に振る舞わないとならない、カブを売った金が早急に必要、何でも良いが、切羽詰まった理由があった方が面白くなる。
更に、仲間達が一々面倒くさいが、面倒くさいだけの役立ち方をすると話として面白くなる。
呼べば来るでなく、見返りを求めたり、助けてもらう代わりに助けなければならなかったりだ。
物語的に鼠の群を操る事がカブを抜くのに最終的に必要で、鼠と取引するには猫を仲間にする必要があり、猫を仲間にする為には犬を仲間にする必要があり、と言う裏設定を持たせつつ、別の理由で犬をカブを抜くのに協力させる為に仲間にしなくてはならず、おじいさんとおばあさんと孫娘の3人が犬を仲間にする為に試行錯誤する話があると、ラストが見えない状態で物語に必要な仲間を少しずつ集める小話を作れる。
ただし、この様な形で絵本サイズの話から物語を膨らませる場合は、三幕構成の二幕前半で話を終わらせずに、二幕後半や三幕まで話を広げてしまった方が意外な展開に出来るし、構成的にも良いだろう。
絵本の構成と対象年齢
甥っ子の絵本を読まされる事があるのだが、3歳以下を対象にした絵本の基本構成は、驚くほど限られた情報で構成された、二幕前半までの物語が多い印象がある。
二幕前半までの構造で面白くする為に、いかに試練のシーンで、ブロックが組みあがって一つの意外な物が形になって行ったり、被せたネタでテンションを上げて行ったり、一般的な全年齢対象の物語とは少し違う文法で、幼い子供でも理解が出来る様に面白さを演出されていて、分析しながら見る分には結構面白い。
対象年齢が少し上がると、二幕前半までの構成よりも、二幕後半や三幕までを使った構成の物語が少しずつ増え、物語の複雑さが増え、試練のシーンに描かれる変化の推移や表現のインフレを楽しむ先にある、感情の起伏やメッセージ性を、読み手が楽しめる様になっていくのだろう推測が出来るのも面白い。