どうやって長い作品を作るのか?
短編や読み切り、本一冊や映画一本と言った長さの作品を作った後は、長編や連載作品にも興味が湧く人も多いだろう。
商業誌では読み切り作品を長編化するなんて事も珍しくない。
中には、いきなり大作を作りたいと言う人もいるかもしれない。
今回は、長編や連載作品の作り方について解説していく。
2023年5月25日追記:色々な物語に見る話の「長さ」についての再考察【調整と謝罪など】も、良ければ併せて参照ください。
短編と長編の違い
まず、短編と長編の違いに触れていく。
当然だが、作品の長さや分量が全然違うだろう。
これは、あらゆるメディアの媒体で同じ事だ。
では、短編と長編が長さで違う事で、構造的には、何が違ってくるだろうか。
いわゆるパラダイムの違いだ。
物語の長短によるパラダイムの差
短編の場合は、起承転結で言えば「起・承・転・結」で物語を作る事が出来る。
短編だと他に
- 「起・承・転」
- 「起・承」
- 「起」
でも、それぞれ物語を作る事が出来てしまう。
短編の作り方に関しては、「きっかけ」で感動する物語の作り方が役に立つと思う。
一方で、長編の場合は、起承転結で言えば「起・承・転・結」で物語を作る事は出来るが、
- 「起・承・転」
- 「起・承」
- 「起」
で作ろうとすると、面白く作るのは不可能になり、
- 「起・承・転・結・起・承・転・結・起・承・転・結」
- 「起・承・転・結・承・転・結・承・転・結」
- 「起・承・転・承・転・承・転・結」
- 「起・承・承・承・転・結」
等の構成でパラダイムを組む事が必須となる。
シナリオ講座等で「起・承・転・結」を学ばされるのは、DNAの核の中にある染色体「A(アデニン)、T(チミン)、G(グアニン)、C(シトシン)」の組み合わせで全てのDNAが構成されているから、まずATGCを教えられるとか、相転移によって生まれたとされる素粒子間に働く相互作用に「強い力、弱い力、電磁気力、重力」の四つの力があるので、それを最初に教える様な状態に近いと言える。
つまり「起・承・転・結」を不変のワンセットだと考えている場合は、物語創作では大幅な縛りがかかる事になるわけでもある。
とにかく、短編と長編の違いは、パラダイムがワンセットか、ワンセット以上か、と言うのが大まかな目安となる。
ちなみに、あくまでも目安なので、短編の中で細かな展開を連続させればパラダイムをワンセット以上使う事も出来なくは無いが、それをやると物語の詳細な描写が犠牲となる。
パラダイムについては、物語の構造「脚本パラダイム11種類を比較してみた」を見れば、様々な種類の物語のパラダイムがある事を理解出来る筈だ。
長編をどう作り始めるか?
長編作品を作る場合、無計画的に作るのであれば作品の方向性を決め、作品を頭から作りながら、まるで走る道を走りながら作る様に、行き当たりばったりで作っていく事も出来る。
その際、求められるのは何か?
センスだけでやるなら、相当レベルの高いセンスが無いと、道なき道を迷走する事になりかねない。
出来れば、いや絶対的に欲しい物は、経験値や少し先を見越した計画性だ。
つまり、無計画に作るとしても、良く先に絶対に開通が不能な崖やマグマ煮えたぎる噴火口が無いかを走りながら計算する必要があり、それを楽にやるなら一度は似た道を通った経験値があればあるだけ助かる。
個人の未知は、主観で見ると想像以上に周りが見えておらず、普通なら失敗しない様な事が容易に起きる。
では、その経験を得るにはどうすれば良いかだが、経験者に教えて貰ったり併走して貰うか、まずは計画的に物事を進めて失敗の確率を下げ、経験を積むのが効率が良い。
では、長編をどうやって計画し、設計するのが良いだろうか?
まず、長編作の企画やコンセプトをしっかり立てるのが、賢明だろう。
長編と言う事は、少なからず長く付き合う事になる作品になるので、それだけの価値がある方が良いし、それだけのモチベーションが続く方が絶対に良い。
もし思いつきで始めようとか、気に入ったモチーフやコンセプトを使う事だけが決まっているなら、始める前に企画についての考察とかの記事を見ると、冷静になれるかもしれない。
その上で、理論的にも、自分的にも良い企画やコンセプトであるなら、計画を立てよう。
長編の計画を立てよう
計画を立てる上で、考えるべき事は色々ある。
まず、どういう形で発表する予定だろうか?
本なら、一冊や複数冊でまとめてドンドンドンと一気に出版するのか、それとも商業誌等で定期的に連載するのか。
連載と言う形なら、一回の掲載ページ数や文字数は、どの程度だろうか。
同じ雑誌、掲載サイト、ジャンル等の先輩達は、どの様な形態で連載をして受け入れられているだろうか。
週刊少年ジャンプでは、初回や2話目までは一気に読者の心を掴む為に面白い所までやる為、29~58ページ程度の尺を使い、通常連載時は基本19ページで物語が1話ずつ進行していく。
- 連載漫画1話目比較「ドラゴンボール」「ハンター×ハンター」「ワンパンマン」
- 連載漫画1話目分析「ワンピース」
- 連載漫画1話目比較「鋼の錬金術師」「D.Gray-man」
- 連載漫画1話目比較「るろうに剣心」「シャーマンキング」「テニスの王子様」
- 連載漫画1話目比較「NARUTO」「BLEACH」「青の祓魔師」「ブラッククローバー」「サムライ8 八丸伝」
- 連載漫画1話目比較「武装錬金」「僕のヒーローアカデミア」「鬼滅の刃」「呪術廻戦」
- 連載漫画1話目比較「ヒカルの碁」「DEATH NOTE」
また、物語の形式は長編の連載でも上記した様に複数あり、
- 1エピソード1話完結「起・承・転・結/起・承・転・結/起・承・転・結」
- 1エピソード複数話完結「起・承・転・承・転・承・転・結」
- 1エピソードが長期連続「起・承・転・結・承・転・結・承・転・結~」
等のパラダイム構成を、規定の尺の中でいかに上手に使うか、パラダイム構成がやりたい事やジャンルとミスマッチを起こしていないか、と言った事に気を付けながら選ぶ事になる。
良く分からない場合は、色々な物語に見る話の「長さ」「区切り」「パラダイム」についてが理解の助けに役立つかも。
ここで決めたエピソードの区切り方は、特別なエピソードを描く場合以外は、基本的に変更する事は無い。
例えば、ワンピースが突然ドラえもんの様に1話完結形式になる事は無いし、その逆にドラえもんが壮大なエピソードを連続して大きな一区切りに向けて描かれる事も無いだろう。
では、こう言ったパラダイム構成の選択は、何を基準に決めれば良いかと言う話だが、一番間違いが無いのは、劇中で扱う問題と、問題解決者である主人公達の能力のバランスだ。
壮大だったり大きな問題をエピソードの中心に持ってきたり、大問題を解決する為の中問題を取り扱う場合は、相応の尺が物語に必要になる。
反対に、小さな問題や、能力が高いキャラクターが問題解決に乗り出せば、短編で十分解決まで描き切れる。
終わりに
まあ、まだまだ序の口で、本当に基本しか触れて無いけど。
でも、長編に無計画に挑む人って多いし、こういう基本も大事だよね。
この記事が長編や連載作を作る、創作者の参考に少しでもなれば幸いです。
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