目次
これは教科書では無い
終始一貫した読者に語り掛ける様な文体。
これはハウツーの1から100までを系統立てて掲載する様な、教科書の類の本では無い。
基本から順に説明こそ、されていく。
だが、読み心地、いや、読書体験としては、どちらかと言えば、こうだ。
あなたは、写真に興味がある。
そこで、巨匠の写真ばかりが並べられた写真展に、筆者に誘われ行く事となった。
筆者と共に会場内を順路通りに歩いていくと、筆者が写真の前で立ち止まる。
あなたにとっては、巨匠が撮ったと言う事しか分からない、何となく凄い写真の前だ。
あなた1人だったら、「いつかこんな写真を撮りたいな」と思って、ただ次の写真へと通り過ぎるだろう。
だが、筆者はあなたを手招く。
「この写真を見て、この写真は構図が良いね」
等と語り掛けられ、あなたは「構図?」と思いながら、改めて写真を見る。
「この写真には、こういうリーディングラインが使われている。ほら、ここだ。だから、この写真は迫力があって、動的に見えるんだ。良い写真だね。良い写真はね、みんな構図にこだわるんだ。ほら、こっちも」
みたいな話を聞き、あなたは「言われてみると、そんな気がする。確かに、写真には構図が大事なんだな」と基礎的な事から、徐々にだが、まず写真の見方を学ぶ。
それと共に、どうやって写真を撮れば良いかを考える切欠を、筆者に与えられる事になる。
そんな読み心地が近い。
教科書的では無いと言うニュアンスが伝われば良いが、この記事では、そんな本書を紹介していく。
写真を撮りたくなったら読む本 : 最高の一枚を巨匠に学ぶ
ヘンリー・キャロル (著), 平谷 早苗 (編集), Henry Carroll (その他), 株式会社Bスプラウト (翻訳)
<内容>
超基本を、はじめから、巨匠に学ぶ!
・20以上の言語に翻訳され、世界で爆発的に読まれている写真撮影の入門書です。
・必須知識だけを「コンパクト」に学び、50人の巨匠の傑作から応用方法を読み解きます。知識なしに、写真は撮れます。
少し撮るうちに、技術と理論を知りたくなることがあります。構図の役割とは! ?
良い作品は何が「良い」のか?
カメラではどんな調整が可能なのか?詳細に踏み込むことなく、こうした疑問にダイレクトに答えます!
ロバート・キャパ、アンリ・カルティエ=ブレッソン、マーティン・パー、森山大道、アンセル・アダムスら、誰もが観たことのある50人の巨匠の傑作から、「5つの基本」を学びます。
1)構図
画像の基礎をなす構図法を知り、創造性を発揮する2)露出
a) シャッタースピード, b) 絞り, c) ISO感度の「トリオ」を理解する3)光
さまざまな光-ハードライト、ソフトライト、自然光、人工光など-を理解する4)レンズ
レンズによる違いを理解する5)見る
カメラを使うのは、人間数値計算、難解な図、専門用語はありません。本書で得た知識は、機種を問わず応用できます。
本書は「Read This if You Want to Take Great Photographs(2014年)」(Laurence King Publishing)刊の日本語訳です。
著者について
ヘンリー・キャロルは、ロイヤル・カレッジ・オブ・アートで写真を学びました。作品は国際的な展覧会で展示され、数多くの出版物にも掲載されています。あらゆる年齢層のフォトグラファー志望者を指導した経験をもとに、frui.co.uk(撮影旅行や講座を提供する大手企業の1つ)を創立。明快で専門用語を用いない指導スタイルで写真撮影をわかりやすく説明し、カメラを使って創造性を発揮する手助けをしています。
- 出版社 : ボーンデジタル
- 発売日 : 2021/9/30
- 言語 : 日本語
- 大型本 : 128ページ
- ISBN-10 : 4862464998
- ISBN-13 : 978-4862464996
上手いやり方や技術では無く、考え方と考える為の知識を伝える良書
公式の書籍説明にある通り、”詳細に踏み込むことなく”基礎を、この本は教えてくれる。
勘違いして欲しくないのが、詳細に踏み込まないと言うのが、知識として浅いとか、情報が少ないと言う意味では無い所だ。
この本は、冒頭でも書いた通り、教科書的な本では、そもそも無い。
網羅的なハウツー本でも、おススメの設定を載せているガイドブックでも無い。
筆者と共に巨匠の写真を見て、その写真から写真撮影で必要な考え方を抜き出して提示してもうらうと言うのが、基本的なスタンスだ。
想像して欲しい。
一緒に写真を見ている教師が、あなたが使う準備も出来ていない技術的な蘊蓄を延々と語っていたら、頭がパンクするか、自慢じみた説明に嫌になってしまうかもしれない。
だが、この本では「ほら、この基本的な事を、この写真家も、あの写真家も守っている。これは良い写真を撮る為には守った方が良い事なんだ」と技術の詳細にまでは触れずとも、ダイレクトに教えてくれる。
本の帯にもある、”必要十分な情報を最短で教えてくれる”と言うのは、こう言った本書のスタンスを表したものだ。
確かに他のハウツー本の様な詳細なデータや掘り下げは無いかもしれない。
だが、初心者や我流の人が、本当に順を追って学ぶ時に必要なのが、必要十分な情報か、必要以上の情報か、どちらかを考えれば本書のやり方が間違っていない事は明らかだろう。
そんな本書は、

と「構図(11作品、10節)、露出(9作品、12節)、光(10作品、10節)、レンズ(9作品、6節)、見る(12作品、11節)」のメイン5章構成で巨匠の写真を通して、様々な知識や技術を説明している。
露出の章だけは、写真の作品では無くカメラのスイッチ類を見ながら「シャッタースピード、フォーカス、ISO感度、露出補正」等について分かりやすく教えている。
なので、基本は2ページに1節1作品のテンポで、51作品の巨匠の写真を見ながら、筆者に写真の基礎を教えて貰う事になる。
読む時は、手元にカメラがあると、より楽しく読めるだろう。
【good】固くない文体
個人的に、これはプラスに感じた。

本書の文体は、非常にフランクで、時にウィットに富んでいる。
画像は冒頭のページだが、特に印象に残ったのは、やはり最後のページに載っている「謝辞」だろう。
「~前略、講師の皆さん、本書に掲載させていただいた偉大なフォトグラファーの方々に感謝します。またMelina Hamiltonには、特別な感謝を捧げます。本書がお気に召さなかった読者の皆様。クレームはどうぞ、彼らに言ってください。」
と言う文で本書は〆られている。
出来の悪い本では、使えないジョークである。
【good】写真撮影の入門書として、シンプルに出来が良い
カメラで撮影してみたい。
あるいは、撮影してみたが思った通りの画で撮る事が出来なかった。
そんな人なら、本書を手に取れば幸せになれる筈だ。

【good】読んでいると、本当に写真を撮りたくなってくる
説明例の為に掲載されている巨匠達50人の写真は、実に様々だ。
その中には、きっと「これは良い写真」と感じる写真があるだろう。
本書は、その写真を撮る為の方法が掲載されている。
言ってしまえば、例を見せてから真似の仕方が書かれているので、真似をしてみたくなる物がきっと出てくるだろう。

【good】トラブルシューティングが、しっかり初心者向け
- 狙った領域にフォーカスが合わないのはなぜか?
- 写真全体がピンボケになるのはなぜか?
- 写真が暗すぎたり明るすぎたりするのはなぜか?
- 絞り優先とシャッター優先の使い分け方は?
- 測光モードってどれを使えば良い?
- 色味がおかしくなるのはなぜか?
- RAWとJPEGどちらで撮影するべきか?
末のトラブルシューティングでは、これらの初心者が困りがちな事に対して答えが提示されている。
失敗するとピンボケになるとか、色がおかしくなる事は経験した事ぐらいあるだろう。
それらが、何が原因でそうなっていて、何を調整すると理想に近づけるのかを考えた事も無いぐらいカメラに詳しくない人なら「なるほど」となる筈だ。
本としての評価は?
黒一色の背景に灰色の文字のみと言う地味な外観だが、これは翻訳したオリジナル版のカバーデザインをなぞった物だろう。
外側だけでなく、中身まで丁寧に翻訳された本書を読めば、世界20か国で爆発的に売れた写真撮影の入門書と言うのが、本当の事だと分かる。
本書は定価2420円、本体価格2200円であるが、元の本の価格と比較せずとも十分適正価格に感じた。
本書外の事になるが、一つ気になるのは、海外では既に刊行されているらしき、銀色と金色のカバーが目を引く続編の存在だ。
続編の翻訳予定があるなら嬉しいが、仮に本書の売れ行き次第ならば、この本にはベストセラーになって欲しい所である。
本書の購入を検討する参考になれば嬉しい限りだ。



