比べる物を揃えよう
前にTwitterで「握り寿司のネタだけを食べてシャリを残す」的な発言をした人がいて、そこから論争が起きた事があった。
その際、わりとみんな、それが許されるかマナー違反かで分かれていた。
私の感覚から言えば、マナー違反に思える。
寿司を頼まず、刺身で食べればシャリの食品ロスが減らせるというのが理由だ。
その際、刺身で頼む事が難しい事なら、寿司で頼まざるを得ない事もあるかも知れないが、そんなことは無い。
シャリ少な目とか、刺身として注文とか、いくらでもやり方がある。
ハードルも高くないのに、それをせず金を払っているから良いだろ論法でシャリを残すのは、心象としては良くない。
で、そんな議論の中で、寿司をラーメンに例えて反論している人とかがいて、それが面白かった。
「ラーメンのスープを残すのと、寿司のシャリを残すのは同じ事。だから問題が無い」
なるほど。
例え話が下手か、と。
比較する物の要素毎に属性を揃える必要性
寿司とラーメンを比較対象とする、例え話までは良い。
問題は、シャリとスープの比較だ。
いやいやいや、と。
ここは、一度分かりやすい様に、要素を分解しよう。
寿司 | ラーメン | |
料理ジャンルとしてのメイン | 酢飯 | 麺 |
薬味 | わさび | 胡椒、七味(テーブル調味料) |
料理の味付け | 醤油、塩 | スープ(醤油、豚骨、塩、等) |
料理ジャンルとしての個性 | ネタ(マグロ、卵焼き、エビ、等) | トッピング(チャーシュー、ゆで卵、等) |
こうして見ると、どうだろう?
横軸は、まあ、揃っていると思う。
こうして見ると、シャリを残す事と、スープを残す事を比較するのは、おかしいと分かる筈だ。
そして、一度気付くと、もうシャリとスープを比較対象にする事は、気持ち悪さを覚えると思う。
これが、比較する物を揃えると言う事だ。
そして、比較する物が揃っていないと、例え話をしても、伝わらないか反論の余地を相手に与えてしまう。
「握り寿司のネタだけを食べてシャリを残す事の何が悪い」
「ラーメンのスープを残すのと、寿司のシャリを残すのは同じ事。だから問題が無いだろう」
「いやいや、ラーメンのスープを残す事は、寿司につける醤油を飲まない事と同じで、シャリを残すのは麺を残す方だろう」
とな。
比較の仕方で、見え方も変わる?
ラーメンは、地域によって麺料理として食べるか、スープ料理として食べるかが変わる、と言う話がある。
つまり、
ラーメン | スープ | |
料理ジャンルとしての個性 | 麺、トッピング | 煮込んだ具材 |
メインの液体 | スープ | スープ |
と言う感じだ。
日本人の感覚だと違和感を感じるかもしれないが、そう感じる人がいるのは事実だ。
どちらにしても、わざわざシャリを残すマナー違反の罪は軽くならないが、比較対象によっては、揃えるべき切り口が変わると言う事だ。
で、何が言いたいかと言うと、物を比較するには、可能な限り相似性を見つける必要があり、相似性が存在する物は、例え話に利用出来ると言う事。
同時に、相似性と言うパターンを捉え損ねると、例え話として機能しないと言う事だ。
では、冒頭のシャリを残すのはラーメンのスープを残すのがOKだからOKであると言う勘違いは、どこからやって来たのだろうか?
都合の良い切り口
恐らく、勝手な想像を含むが、
ラーメン | エビフライ | ステーキ | 寿司 | |
残さないで飲食できるが残しても一般的に良い部分 | スープ | 尻尾 | 脂身 | ? |
食べた方が良い部分 | 麺、トッピング | 身体 | 赤身 | ネタ |
みたいな、「残しても良い部分がある食べ物」を探し、だから寿司でもシャリ残しOKだろうと言う論拠としたのでは無いか、と一つ推測出来る。
だが、例え話を試み、似たパターンで許される物を探すと言う戦法自体は、頭が良いが、比較物が違うと言う点で惜しい結果となったわけだ。
比較対象が、しっかり揃っていないから反論の余地を与えてしまう。
比較対象を揃えるなら、残しても許される料理ジャンルとしてのメイン部分がある食べ物を更に深く探すべきだった。
当然の話をするが、そんな食べ物は食ロスとかSDGsが叫ばれる昨今、なかなか存在しないと思われる。
ピザを頼んでピザ生地を残す、パスタを頼んでパスタを残す、アンパンを買ってアンだけ吸う、かつ丼を頼んでご飯を残す、どう足掻いても一般的な感覚では批判から逃れられない。
まあ、金は払っているし、微妙な酢と米の風味が狂おしいほど好きだが炭水化物は、やんごとない理由から摂取したくないと言う前提での、贅沢な食べ方と捉えれば、もしかしたら。
終わりに
比較対象が正しいかをチェック出来ると、変な比較をして恥をかく事は少なくなると言う話でした。
逆に、正しい比較対象が分かるようになると、例え話が上手に出来る様になります。
この比較対象を揃えると言う話、創作の際、物語のジャンルでも大事な事だったりします。
比較対象が間違った好きな作品から要素を抜き出すと、とんでもないキメラが爆誕する事も多いです。
このミスしてる人ってメッチャクチャに多いから、出来る限り気を付けよう。
物語を作ってて、なんだか話のまとまりが悪いなと感じた時って、この失敗をしている事って結構あるから。
じゃ、またね。