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リコリコは、どうしてここまでヒットしたのか?
リコリス・リコイル。
個人的には、最後まで非常に楽しんで視聴しました。
間違いなく出来は良いし、面白かった。
フキ、クルミ、たきながキャラとしては特にお気に入り。
でもしかし、同時に、ここまでのヒットは一定の納得がいく一方で、話題の大きさとしてはヒットし過ぎに見えない事も無いと、SNSを眺めながら追っていて感じる事も。
そこで今回は、話題作「リコリス・リコイル」を、一歩引いて俯瞰し、客観的に分析してみます。
なんで、ここまでのメガヒットを飛ばしたのか?
外せない要因、SNSが盛り上がる状況に恵まれた
今の時代、盛り上がりを共有するならSNS。
Twitterで毎回の様にトレンド入りしていた本作は、間違いなく話題になっていました。
ですが、最初から、ここまで凄かったかと言うと、ビッグウェーブが起きるまでに時間がありました。
やはり、ターニングポイントは、予想外のインフルエンサーによる猛プッシュでしょう。
小島秀夫監督による猛プッシュ
メタルギアシリーズや、デススト、その他にも名作ゲームを沢山世に送り出している日本を代表するゲームクリエイター、小島監督。
ファンの間では、普段から好きな映画、小説、音楽、ホビー等をSNSで共有する事でもお馴染み。
ただ、放映中のアニメーションの共有は、比較的珍しい。
なのでファン程「あの小島監督がわざわざ推すほどの作品か!」と、興味を持った可能性があります。
更に、小島監督と言う権威性によって、リコリコは推しても失敗しない、恥ずかしくない作品と認識された可能性があり、元からのファンから、推そうか迷っているファン候補まで、非常に推しやすくなり、ファンアートやコスプレ道具等の展開に火が付き、良い波が起きました。
また、様々な媒体での配信環境もプラスに働き、後追いし易かったのも強いです。
更に、リコリス・リコイル制作側との絡み、小説版の帯コメント快諾、金銭での依頼やキャンペーン等ではなく純粋に推している発言、アニメキャラTシャツを着ての写真をSNSにアップ等、アニメ放送期間中の継続した猛プッシュは、明らかに多段ロケットの様な推進力を持った起爆剤となっていました。
公式や中の人達のSNS活用の上手さと、芸達者なファン層
小島監督を抜きにしても、作品に関わったクリエイター達のSNSでの発信は見ていて非常に楽しく、アニメの内容に合わせて公式まで洒落た発信をしていた点では、他の同時期にやっていたアニメと比べても明らかに跳びぬけていました。
また、ファン達のアートや銃やホルスター、鞄の自作等もクオリティが高く、コスプレによる原作再現等も現れ、祭感が継続しました。
(余談、他のアニメだと、邪神ちゃんの公式が面白かったのと、サイバーパンクもSNS展開やゲームへの導線が非常に上手かったですよね)
作品基本ポテンシャルの高さ
作品外の環境がそれだけ盛り上がったのは、やはり作品自体のクオリティが高かった事が要因として挙げられます。
オリジナル作品と言う括りを抜きにしても、今期のアニメの中ではクオリティ面では圧倒的でした。
キャラデザ、作画、音楽、声優、いずれも大きく恵まれ、作画崩壊や棒読み等のノイズが皆無だった事は、作品に大きな貢献をしているのは間違いないです。
また、下記しますが、作品設定の噛み合い方が非常に良く、その上で様々な特殊な面白い要素が出てくるのに、テーマ設定の優先順位付けが明確で、例えるなら「超時空要塞マクロス」の様な綺麗な設定の噛み合いによって、作品として一定以上のまとまりがあります。
制服や鞄などの小物も画面映えが良く、全体的にセンスが良い上に、都市迷彩としての女学生の制服と言う設定も面白かったです。
想定視聴者の好きなモノの入れ方の上手さ
劇中に登場する様々な特殊な要素が、既存の作品内で見られる良い設定が集められているのですが、それらが綺麗に相互作用を持つ様に設定されている事で、一つの世界の、一つの事件を描く上での必須要素にまで絞られ、多様な要素を入れているのに、無駄とか散らかった設定がほぼありません。
まるで、綺麗にパズルが組みあがる様に設定が配置され、その全てが物語に貢献し機能している点では、非常に良く出来た作品だと言えます。
十分以上に計算された設定と言えるでしょう。
劇中の不可能を可能にするSF組織
アラン機関。
リコリス・リコイルにおいて、一番重要な組織。
本作のSF設定を一手に引き受けていて、作品のSF設定の根拠となっている。
類似組織としては、
- パンプキンシザーズ:カウプラン
が有名で、カウプランの場合は、一人の早すぎた天才によってSF設定を支えているが、アラン機関の場合は、メンサの様に天才を集める事でSF設定を実現している点で、リアリティの面でも優れた設定となっている。
人工心臓とか、アラン機関が無いと、それだけでメインテーマになりかねない要素です。
非殺傷の特殊弾とか、ワイヤーでの拘束弾とか、防弾バルーンシールドとか、そう言ったちょっと特殊なギミックを気軽に出せるのも、アラン機関の設定のおかげ。
SF設定をまとめる、この世界のドラえもん的な存在です。
国家運営の対犯罪者暗殺組織
DA、リコリス、リリベル。
本作の象徴とも言える存在で、孤児を訓練した国家運営の対犯罪者暗殺組織と言えば、
- ガンスリンガーガール:社会福祉公社
が有名だが、本作では明るい雰囲気を出す為に、洗脳等の要素は無く、殺し屋に育てられた少年少女達は正義や治安維持の為と信じて自ら率先して任務に当たり、より上級の階級を目指している設定になっています。
ガンスリンガーガールの様に汚れ仕事を請け負う悲劇的な少女達ではなく、選ばれし正義の味方である事を前面に押し出した設定は、作品のテイストを明るくする上では上手くいっている風に感じました。
余談だが、SNSでガンスリンガーガールの相田先生がガンスリンガーガールのキャラクターの一人リコをリコリスの恰好で描く事で、非公式ながらコラボしているのもファンとしては見ていて嬉し楽しです。
とても良い。
犯罪予知システム
ラジアータ。
リコリスをバックアップする高性能コンピュータとしてラジアータが登場するが、役割としては、
- イド:インヴェイデッド:ミズハノメ
- サイコパス:シビュラ
- パーソンオブインタレスト:マシン
- マイノリティリポート:プリコグ
等と同じで、予知システムとなっています。
だが、それを主題にする物語の場合は、システムの裏側や真実に迫る構成になってしまい、そうなると作品としてテーマがブレる恐れがあります。
そこで、本作では、あくまでも超高性能コンピュータとして描かれ、その実現の根拠は先述のアラン機関が担う事で、設定の根拠を補っていて、欲しい設定を使いつつ、不要な要素を入れずにスリムさを保ってスマートです。
殺さずの殺し屋キャラ
錦木 千束。
主人公の一人、千束は、元リコリスの何でも屋です。
このキャラ、
- ザ・ファブル:佐藤明
- るろうに剣心:緋村剣心
等の、理由あって一線を退いた殺さずの殺し屋キャラその物で、それを美少女化していると言えます。
そんなの、みんな好きに決まってるだろと言う、ありそうで無かった設定です。
日常に適応出来ない戦闘マシンな忠犬キャラ
井ノ上 たきな。
もう一人の主人公、たきなは、DAを首になった元リコリスです。
キャラ的には、
- ヴァイオレット・エヴァーガーデン:ヴァイオレット・エヴァーガーデン
- フルメタルパニック:相良宗助
あたりに近く、どちらかと言えば、飼い主不在のヴァイオレットちゃん。
たきなは、DAにしか居場所を見出していない戦闘マシンキャラなのだが、一線を退いて、再び古巣に帰る為に仕方が無く、伝説のリコリスである千束とバディを組む事になり、その中で本当に大事な物に気付く。
それが千束だ。
女性バディのエージェント
千束&たきな。
女性のバディによるエージェントものといえば、
- キディ・グレイド
- ダーティペア
- ノワール
あたりが個人的には印象に残っているが、凸凹の美女二人による絆の描写は、とても良いもの。
下手に女性らしくない、嫌味の無い女性同士の友情や百合でしか補給出来ない栄養素が恐らくある。
本作では、二人は足並みが揃わない所から、絆で繋がり、二人にとって互いがかけがえのない存在に変わり、絆が再認識されるまでがしっかり描かれている。
栄養満点なのである。
特に、千束の人工心臓が破壊された後の、千束を助ける為にボロボロになっても奔走するたきなの姿は、危うくも尊い。
弾が当たらない銃撃戦
千束の射線弾道見切りは、
- マドラックス:ヤンマーニ
- リベリオン:ガンカタ
辺りを連想した人もいたのでは無いだろうか?
これも、特殊な設定なのだが、アラン機関が存在している事で、千束の才能の一言で片づけられ、ラジアータと同じで掘り下げずに特殊設定を出す事に成功していて上手い。
哲学を持った対のライバル
真島さん。
独自の哲学を持ったテロリストの真島さんの存在は、とても重要だ。
- バットマン・ダークナイト:ジョーカー
みたいな、哲学を持って人々を試す、狂気に満ちているが、言っている事に一理あるキャラ。
非道でも許される、美学溢れる名悪役。
そして何よりも、千束の対の存在で、聴覚の才能を持ち、殺さずの千束に対して、殺しで世界のバランスをとって救おうとする真島のキャラクター性。
DAは一見正義の様で正しいが、DAが抱えたジレンマに異を唱える存在として、作品のアンチテーゼとして機能している。
良く出来た日常回
4話のパンツ回、8話の経営改革回と、事件の前に描かれた、いわゆる日常回と呼ばれる喫茶リコリコの絆を強める回が、毎回とても良かった。
お色気や下ネタを適度に入れつつも、あくまでも喫茶リコリコの絆を深めるイベントに焦点を当て、壊れて欲しくない幸せを描いてからの事件発生の流れは、お手本の様と言って良い流れ。
ネタがそっちだが、下品になり過ぎない塩梅なのも見やすいし、人にも薦めやすい。
千束を好きな人ばかりの世界
真島はライバルとして千束を気に入り、吉松は才能ある娘として千束を愛した。
そんな迷惑な愛ばかりでなく、絆を結んだたきなは、千束の為ならDAも捨てるし吉松から心臓を奪う事にさえ躊躇が無い、愛が重い存在に育ち、ずっと近くで千束を見守っていたミカは、愛する吉松に引導を渡してでも千束の延命を選んだ。
クルミとミズキも千束を助けようと奔走したし、ツンデレなフキも千束の事を気にかけている。
DAの楠木指令もミカと千束の事を気にかけ、喫茶リコリコの常連たちや千束に依頼してきた地元の人達も千束の事を気に入っている。
とにかく、千束を良く知る者は千束の事を敵も味方も気に入っている様に描かれているが、千束のキャラや行動に、皆に愛される根拠が描写されているので、千束にとって都合が良い世界ではなく、千束が勝ち取った環境である事が受け入れられ、見ている視聴者も千束の事が好きになり応援出来るし、千束の事を大好きなたきなを始めとした喫茶リコリコのメンバーの奔走を応援して見られる様になっているわけです。
要は、お調子者のリコリスであるサクラや、ウォールナットをライバル視するがお笑い要員となっているロボ太以外の、ほぼ全員が千束を好きな状態なんですよ。
なので、千束の達観したり、少しすかした様なキャラクターが好きになれない人は、リコリス・リコイル自体が、そこまで面白く感じないかもしれない。
千束を好きな人に共感する事が、作品を見る上で前提みたいな部分があるから。
でも、千束とたきなの絆の形成を見守れば、千束の性格的な欠点などは十分受け入れられたうえで、登場人物みんなが好きになる様に作品全体がデザインされているのも感じた。
主人公を追い詰める展開
リコリス・リコイルの盛り上がりポイントは、千束と真島との対決と同じぐらいのボリュームで、心臓を破壊された千束を救えるかどうかと言う喫茶リコリコによる作戦がある。
主人公に死が迫り、ハンデを抱えた状態でライバルと戦わされたり、吉松が自身に人工心臓を移植して千束に殺しをするか死ぬかを選ばせたり、千束に対して千束の事を好きな真島と吉松からの歪んだ愛に容赦が無い。
どちらも、千束を殺す気は実は無いのだが、千束が死ぬより嫌な事を強いる点で、非常に良い主人公への嫌がらせとして機能しています。
主人公が死を匂わせる窮地に立つ作品は、面白い条件を満たしていると言って良いので、主人公を追い詰めるのは非常に良いです。
人死に等の負の情報コントロール
本作は、一見すると優し目の世界で物語が進行するが、それは千束の手が届く範囲だけです。
吉松の計画と真島のテロでは、何人もテロリストやリコリスが劇中で亡くなっている。
人死にが避けられるのは、千束が戦闘に介入している時だけ。
それ以外の場面では人が簡単に死ぬ世界だ。
非常に殺伐とした、非情な世界。
でも、千束とたきなが殺さずでいる事と、死ぬ人の大半が犯罪者かリコリスである事、真島が哲学や計画第一で殺しが手段に過ぎない事、そして何より被害者の家族等を描かない事で、作品に漂う空気感は、悪戯に暗くならず、場面によっては明るくさえある。
真島さんとか、やってる事は普通にテロリストだが、バランスこそ正義と言う哲学に従う悪のカリスマが板についていて、キャラとして魅力的な悪に仕上がっている。
プロットの、優先順位の明確さ
リコリス・リコイルが、これだけ様々な要素を入れながらも、テーマが曖昧にならずに済んでいるのは、描く物の優先順位がどこまでも明確で、テーマがハッキリしているからと言えます。
本作は、物語の構造として見ると、
- 千束を正しい道に導きたい吉松の陰謀、吉松とミカの子育て戦争
- リコリコの絆。千束とたきなの日常とバディ、それとクルミ、ミズキ、ミカによるチーム
- 真島のテロ計画
- 千束と真島の因縁、クルミとロボ太の因縁、たきなとDAの因縁
と言う優先順位で、おおよそ構成されてます。
作品の見た目としては、千束とたきなのバディものがメインに見えるが、作品を貫く一本の芯は、実は、吉松とミカと言う千束の里親による、親の言いなりになるか、子供の自主性を尊重するかと言う、普遍的な夫婦喧嘩が本質にある。
どちらも本気で義理の娘の事を想っての親としての接し方だったが、吉松は千束の心臓にタイムリミットを付け、自分を殺させる事まで目論んで親が望む子供である事を強要しようと迫った。
それが娘の為と、世界の為と本気で信じているから。
その結果、ミカが吉松に引導を渡し、千束の命を助け、意思を尊重する為に、自ら手を汚す。
これは、ある意味で、別れた毒親による虐待を、育ての親が子供の為に、泣きながら止めた形になる。
なぜ、そんな吉松の陰謀が最も最優先なのかと言えば、物語の最初から最後まで全編に渡って関わっているのが、吉松だからだ。
たきな左遷の原因となった銃の取引、そこに関わる真島、吉松の狙う事態にする為にクルミが雇われ止められたラジアータ、たきなが世話になる喫茶リコリコと、ミカと千束。
全てが吉松が糸を引く思惑に繋がっている。
サイレント・ジンも、真島の襲撃も、吉松が悪い。
劇中で起きた悪い事の大半は、吉松による物だ。
だが、吉松にとって想定外がある。
それが、優先順位2番目の、吉松の陰謀を阻止するチーム、喫茶リコリコの存在だ。
千束と絆を築いて強くなるたきな、最強のハッカーであるクルミの潜伏、引退したふりをして現役のミカ、縁の下の力持ちミズキと、喫茶リコリコは、喫茶店に見えて選りすぐりが集まったミニDAの様な存在なのだ。
基本は、この吉松の陰謀と、喫茶リコリコの対決が個別の事件の様に描かれるが、吉松の陰謀は裏に隠されているので、表向きには喫茶リコリコが最優先事項に見える様に出来ている。
その上で、吉松の計画の一環として、真島のテロが描かれる。
真島のテロも、吉松の陰謀の一貫に過ぎない物の、それが分からない様に途中まで描かれる事で、真島が一見すると倒すべきボスキャラに見える。
そんな真島&ロボ太と、DA&喫茶リコリコの対決を彩る要素として、千束と真島の因縁、クルミとロボ太の因縁、そして、たきなとDAの因縁が、それらの優先順位の下に配置されている。
優先順位の明確さの良い所は、そう言った彩りの要素が、メインになる事を防いでくれる事があります。
これは、優先順位を付けないで作話すると分かる事ですが、面白そうなテーマやモチーフを見ると、膨らましたくなる衝動に駆られる事がクリエイターには、結構ある。
それは、その部分だけを見ると、話が膨らんで面白そうに感じる。
でも実際は、視聴者がメインのストーリーラインだと思っていた物語が止まり、全然違う物語が展開する様な事になりかねない。
よって、優先順位の管理が出来ている本作は、その点で非常に作品として見やすく、完成度を高く保っていると言えるわけです。
物語と言う面で言うと、これだけの特殊な要素を綺麗にまとめ上げ、設定の相互作用とデザインの上手さで焼き直しにならない新しい作品にアップデートする事に成功した事が、作品の出来と言う面で言えば、成功の重要な要因に思えます。
また、複数の事件が実は一つの計画だったと言う、事件が繋がる仕掛けと、その中心人物が千束で無ければならない理由がしっかり設定されている点も、良かったです。
あえて分かりにくさを上げるとすれば、黒幕である吉松の、才能への狂信的な思想でしょう。
どんな形であれ愛情を感じている千束に対して、自分を殺させてまで殺しをさせたいと言う動機は、正直言って常人には理解が及ばない部分があります。
これは、吉松の才能への考え方もですが、千束の生来の戦闘センスを人殺しの才能と決めつけた点が違和感の要因と言えます。
千束は弾を除け、敵を制圧出来るが、それがイコールで殺しの才能と言うのは、飛躍があるからです。
千束に殺しをさせなければならない理由が別にあれば、よりスッキリしたシナリオになった筈ですが、そこは続編に期待したい所。
吉松の計画が、実は千束じゃないと殺せない、殺させないといけないヤバイ奴に対するカウンターだった、的な感じ、とかね。
作品に強いメッセージがある
本作では、DAが支える日本の偽りの平和を前提に「事実を隠し、誰かが犠牲になって守る、幸せな日常は正しいのか?」的な分かりやすい問いが、視聴者に投げかけられます。
それに対して、アンチテーゼとしてノーを叩きつけるのが真島さんです。
「事実を隠した幸せは嘘っぱち」だと。
しかし、真島さんは敗走してしまいます。
一方で、クルミとDAによる情報操作によって、偽りの平和によって人々の幸せな日常が守られ、事実を隠してでも、誰かが犠牲になってでも、幸せな日常を守る事は正しいと言うのが、作品の一見したメッセージとなっています。
ミカが吉松を密かに殺し、千束に吉松の事実の手紙を隠した上で心臓を移植し、嘘の綺麗な吉松を演出したのも、ミカが犠牲になり事実を隠してでも幸せな日常を守る事が正しいと、やはり作品はメッセージを発していると言えます。
そう言う意味では、DAを辞めたミカも思想的にはDAと変わっていません。
ですが、これは作品のメインの問いとメッセージでは、ありません。
黒幕が吉松なので、作品を通した真のメインの問いは、「才能を持っているなら世界の為に活かすべきか?」的な物です。
吉松は、それを「活かすべき」と願って、信じています。
吉松へのアンチテーゼは、ミカの「才能をどう使うか選ぶのは持ち主の自由」と言う考えです。
一方で、千束です。
千束は空白の手紙を見て何かを察して一度逃げ、その後もたきなに連れ戻されつつも、ハワイに行って、DAからの仕事を断っています。
つまり、
DAとミカは「事実を隠し、誰かが犠牲になって守る、幸せな日常は正しい」と受け入れ、
真島さんは「事実を隠した幸せは嘘っぱち。バランスこそ重要」と譲らず、
吉松は「才能を持っているなら世界の為に活かすべき」と言い、
ミカは「才能をどう使うか選ぶのは持ち主の自由」と千束を尊重する事にし、
最終的に千束の出した答えは「才能をどう使うかは自分で決めるけど、そんな事より息苦しい所から逃げ出して、たきなや喫茶リコリコのメンバーと楽しくやるぞ!」です。
つまり、息苦しい場所から逃げて、自分が選んだ生き方で、好きな人と楽しく生きようと、作品のメインの問いとサブの問いに答えつつ、両立ではなく、全部をひっくり返しているわけです。
考えてみれば、DAと言う場所にこだわったたきなに、リコリコと言う居場所を与えた千束です。
自分らしく生きれる居場所が無いなら、作っちゃおうと言うのは、千束が元々持っていた性質なわけです。
テーゼ、アンチテーゼの先に、そんなジンテーゼが待ってるとは、それも綺麗な伏線付きでです。
これ、実は、現代の息苦しさがある社会において、メッセージを明確にキャッチできなくても刺さる人には刺さる良いメッセージなのかもと感じました。
ハワイエンド、結構好きです。
前に後ろに続く世界と、区切りがついた物
電波塔事件と言う過去の出来事は、千束と真島さんの因縁とクライマックスのテロで絡むが、あれだけ派手なランドマークな象徴的オブジェとなっているのに深く語られません。
また、DAと言うシステムへの攻撃が目的だったクライマックスのテロ計画も、事件が中途半端に終わり、姿を消して再び暗躍する真島さん、リリベルとの因縁、アラン機関の目的、ハワイに拠点を移した喫茶リコリコと、何もかもが綺麗に終わっていません。
しかし、区切りがついた物もあります。
吉松との因縁は解消され、吉松の計画した千束殺し屋化計画は失敗に終わった事。
その事件を通じて、千束にたきなと言うパートナーが出来た事。
これは、プロットの優先順位で言えば、最優先のストーリーラインは消化し切っていると言えます。
だからこそ、ハワイと言う緩い終わりでも、リコリス・リコイルは、一定のスッキリ感を持って物語は〆られています。
仮に、吉松の件が片付いて無かったら、真島さんとの対決に決着がついたとしても、もう少し中途半端な終わりとなっていたでしょう。
ですが、メイン部分は一区切りし、広がる余地は十分あります。
前にも後にも横にも作品が広がる余地があるわけです。
つまり、続編だって期待できます。
これで終わりでも良いけど、サイコパスみたいに別リコリス主人公で仕切り直して初めて、千束&たきな登場とかやっても盛り上がりそうだし、上記した様に吉松が千束に殺しをさせないといけなかった理由を掘り下げて続きからやっても面白そうですよね。
終わりに
様々なヒット要因を推測したけど、結論としては、基本ポテンシャルが高い状態で、SNSで大きな話題を獲得し、その期待を裏切らないで完走した事が、ここまでのヒットに恵まれた総合的な理由に思えました。
面白くない推理ですが。
元々のポテンシャルが今期の中でも上位だった上で、小島監督からの継続的なプッシュは、明らかに勢いを強めた様に見えました。
もしかすると、他にも要因があるのかもしれないですが、とりあえず物語と言う視点を中心に分析したと言う事で、私の目から見たヒット要因は、この様な感じです。
まあ、次のヒット作を狙う誰かの参考になれば幸いです。



