先入観を捨てて挑みたい良コミカライズな”逆詐欺”作品
「追放されたチート付与魔術師は気ままなセカンドライフを謳歌する。 ~俺は武器だけじゃなく、あらゆるものに『強化ポイント』を付与できるし、俺の意思でいつでも効果を解除できるけど、残った人たち大丈夫?~」と言う作品の漫画版を、ご存じだろうか?
タイトルが長いので、以下「追放チート付与魔術師」あるいは「本作」と呼ばせて貰うが、いわゆる小説家になろうで連載されていた小説作品の漫画化作品である。
本屋に行っても漫画アプリを見ても通販サイトを見ても、なろうコミカライズ作品は膨大な数があり、その内の何割かは内容や要素が似ていて見わけも付きづらい。
小説家になろう作品自体、一部を除いて素人作品や低品質作品だと考えている人も世間には多くいるだろう。
だが、本作は、少なくとも漫画版に関しては、そう言った先入観を今すぐゴミ箱に捨てるべき、いや、とりあえず一旦置いておくべき、パッと見で分からない超良作となっている。
そこで、今回は本作の魅力について語り、布教したい。
原作者が有能
小説版の作者である六志麻あさ先生は、 原型をほとんど留めていない本作に対して一貫して友好的で、自虐を交えた宣伝をしていたりする。
姿勢として誰の目からも非常に好感が持てる余裕ある紳士な対応で、原作提供者として高い評価をファンからは得ている。
漫画家の暴走でなく原作者公認と考えると、作品の外側のクリーンさによってノイズが発生せず、自然な状態で純粋に作品を楽しめる。
そんな原作者だからこそ、漫画版作者は腕前を披露出来ている。
当然、漫画版作者である業務用餅先生も、有能である。
読み比べの為に、原作にも手を出してみよう。
ギャグがヤバイ
行間の使い方
小説の漫画化作品の本作だが、なんと言っても面白いのは、典型的なろう小説である原作に対して、なろうメタなアレンジを随所に施し、9割ギャグ1割ちょっと良い話に仕上げている事だ。
そして、劇中に登場するギャグも感動も、そのほぼほぼ全てが漫画オリジナルであり、原作の要素も所々出てくるが基本のストーリーラインや登場要素だけ、それもストーリーラインは線では無く、行先のゴールとして点を据えただけでライン自体も結構違うと言う、一見して大工事を行っている。
小説版で淡々と進んだりガバガバだった設定に対して、コメディやシリアスにする方向で一々意味を持たせ、原作にあるギャグ化に都合が悪い設定は平然と改変し、漫画家による9割9分の改変で作品が構成されている勢いがある。
感動シーンとか面白かったシーンの大半が原作に無いのは、本当に衝撃。
なろうメタ
本作でまず目につくのは、なろう作品に対する、良い意味で小バカにした追加設定がギャグになっている所だ。
初っ端でギルドで道具にバフを付与して生計を立てていた主人公が「追放」される所から始まる。
ジャンルのあるあるでは、実は有能な主人公を無能と勘違いした雇い主が、クビにする事で物語が始まり、後にグループや組織内で重要な役割を担っていた事に気付き、主人公の有能さを認めざるを得ない状況に追い込まれる。
その点は本作でもほぼ同じなのだが、本作の場合は、ギルド長が友人に「世間だと追放ブームらしいよ」と言われ、酔った勢いで「じゃあ、いっちょ追放してみるか」と、主人公を追放する事になる。
世間の追放ブームは、明らかに小説家になろう界隈の世間であり、本作の登場人物達がそう言ったメタフィクション的な挙動をする事を初手で暗示させているわけだ。
タイトル回収では謎の感動すら覚える。
一番狂っているのは主人公
一見すると茶色い服を着た没個性なチート頼りの主人公に見えるが、本作の主人公レイン・ガーランドは個性の塊だ。
善良で好きな人の為になりたいと願う主人公の資質こそ持ち合わせているが、
- おバカ
- デリカシーに欠ける
- 情緒不安定
と、かなりウザいキャラクターにセッティングし直されている。
この実は主人公が狂っている設定によって「追放もやむなし」が成り立ち、それが漫画版の面白さに貢献しているのも面白い。
善良かつ、所有チートスキルが有能であり、一応考える事は考えやる時はやる事で、ウザさが可愛い欠点ぐらいになっている。
笑い方だけで笑える。
理由を見つけては脱ぐ主人公
本作の主人公は、やたらと全裸になる。
理由を見つけては全裸になるが、何でもないシーンや真面目なシーンで脱ぎ始めるので、その度にシュールなギャグとなる。
これが最初はちょっと面白いぐらいなのだが、いわゆる天丼(同じボケを繰り返し、お約束化するテクニック)状態にして、読者としては、いつの間にか主人公の脱ぎ待ちみたいな精神状態に無意識化でさせられる。
なので、主人公が脱げば脱ぐほど楽しいと言う状況になっていて、サービスシーンは殆ど無いのに、主人公の裸率だけ異様に高い。
勢いのある台詞
敵味方が飛ばし合う皮肉や罵詈雑言のセンスが非常に面白く、特に主人公に向けられる仲間達からの辛辣な言葉は、ヤバいぐらい笑える。
唐突な地球設定
ギャグ時空として成立している本作では、唐突に異世界に無い物が登場する。
クソダサファッション、ポカリスエット、パチンコ、ウージーサブマシンガン、毒親おかん、日本円、唐突に世界に投げ込まれる異物は主人公の全裸と似た効果を発し、登場するのがちょっと楽しみになってくる。
キャラ立ちが凄い
本作のキャラクターは、サブキャラやモブに至るまで個性的である。
中でも漫画版メインパーティのリリィ(金髪)とマーガレット(ツインテール)の因縁コンビは、原作に無い設定とドラマの掘り下げによって、物凄く良いキャラクターに仕上がっている。
特に、マーガレットは原作とは、もはや別物に改変された、ほぼオリキャラ状態で、ファンには特徴的な漫画版の目からチベットスナギツネちゃん、通称チベスナの愛称で親しまれていて、ファンアートもチラホラ見る。

仲良し描写
事ある毎に挟まれる、主人公パーティの仲良し描写が、凄く良い。
いじられ役の主人公と、いじり役の仲間と言う構図が出来上がっていて、
- 仲間が主人公にちょっと意地悪をする
- 主人公がうろたえる
- 仲間が笑う
- 冗談に気付き主人公も笑うorさらにうろたえる
- 仲間が真面目な事を言う
- 主人公がちょっと失礼な事実を言う
- ちょっと怒る仲間
- うろたえる主人公
- 悪気はないと許す仲間
等と言ったやり取りがちょこちょこ描かれるのだが、仲が良いからこそ出来る「攻撃し合い」が微笑ましい。
主人公を傷つけない様に言葉を濁したりとか、気まずくて凄く良い。
敵とのバトルまで大半がギャグ
命の取り合いだろうと、本作のギャグ時空は揺るがない。
凄惨な過去や非道が描かれるシーン以外は、そんな行動をとったキャラクターでさえギャグ時空に巻き込まれ、面白おかしく料理されてしまう。
その際、絶妙なのが、シリアスなシーンは出来るだけ茶化さず、キャラクター同士の罵り合いや煽り合いでギャグ時空を形成している点だ。
なので、真面目なシーンでは温度差を感じる程に、しっかりした感動シーンが現れるメリハリが利いている。
ギャグ世界の中で唐突に良い話をされると、油断している分感動も大きい。
バージョン違いの存在
追放チート付与魔術師は、連載版と単行本板で一部内容が変わっている。
単行本化に当たって何らかの事情があって削られたギャグもあれば、単行本化でギャグに改変された箇所もある。
つまり、ファンになったら、連載を読んだ後に単行本を買って二度、原作との比較で三度と楽しめる。
どこで、どうやって読める?
連載版を読むなら、
から読めば良いだろう。
マガポケの方が掲載が早いが、ニコニコの方はコメント機能があって別の楽しさがあるのでどちらも使いたい。
マガポケの場合は、登録すればチケットで最新3話以外は、時間がかかるが無料で読み進められるのも読みやすい。
最新の3話も、待つか、無料でポイントを貯めていずれは読む事が出来るし、新しい話は1話80ポイント80円相当なので、どうしても待てないならお金を払ってレンタルしても良い。
無料分を引くと、現在連載分の13話(分割26話)を1280円で一気に読める。
ニコニコ版は記事執筆現在3話しか掲載が無いが、無料公開をしていた時期もあるのでアンテナは張っておきたい。
単行本は、Amazon等で注文するか電子書籍で読むのが手っ取り早い。
手元に残したいなら、買ってしまった方が良く、3巻までで11話まで収録されている。
単行本は3冊まとめると2178円だが、本作を繰り返し接種したい人であれば、安い出費だったと後に感じるだろう。
原作小説は、
から、なろう版が読めるし、単行本版も紙・電子共に発売中だ。
まずは、いずれかの漫画1話のお試しや漫画単行本の1巻から入り、漫画版作者である業務用餅先生の狂気が見えてくるまで、とりあえず読んでみよう。
分かってる状態で見ると1話目から狂気駄々洩れなのも、味わい深い。
人によっては癖になり、何度も読み返してしまうぐらいハマる筈だ。
本当におススメのギャグ漫画なので、先入観を捨てて、騙されたと思って読んでみて欲しい。
マジで凄い面白いから。
追記(2023/10)
コミックDAYSの月マガ基地で期間限定(10月12日まで)4巻(15話)まで無料キャンペーンしてるね。
今が試し読みのチャンス!
半グレ編も最高。



