これは、いつにも増して自分語りになる。
独り言だ。
私は常々、住む世界の人種問題で神経を擦り減らしている。
いわゆる白人・黒人・黄色人種でも、特定の界隈でも無く、もっと別の切り口の人種だ。
酷く主観的で個人的な人種分けなので、これは、取るに足らない問題かもしれない。
ある意味、平和な世界観に生きているとも言えるだろう。
ある友人に感じた一方的な心象
私には、学生時代にまあまあ仲の良い友人がいた。
彼は幼少期より漫画家を目指していて、絵も上手く、当時は「こんな人が将来漫画家になるのだろう」と私は漠然と感じた。
漫画を、絵を描ける事が一番のアイデンティティと言った感じで、クラス内で不良に目を付けられ虐められる側だが、腐らずに踏みとどまって、漫画家への夢を追う様な人だった。
彼とは別の進学先に行き、お互いが全く別の道を生きた後、彼と久々に偶然の再会をした。
彼は進学後に垢抜け、態度が嫌に太々しくなり、自信に満ち溢れた半面、無礼な印象を周囲に与える人間になっていた。
何があったのかは、詳細は知らない。
ただ、私は再会した第一印象で「嫌だな」と感じた。
虐められる側から、虐められない側になった事は喜ばしいと感じたが、その反面、私が彼に感じていた魅力は粗方消え去り、残ったのは外面や体裁ばかり気にして感じるギラギラした、無駄に快活な好青年を演じている何かであった。
世間的には、この変化は、きっととても喜ばしい事なのだろうとも、私は感じた。
彼は、彼自身の選択で、努力によって、社会への適合を試み、現代社会で価値のある人になろうとしたのは間違いないだろう。
その選択は、間違い無く正しいと私は肯定したい。
だが、彼は以前の彼とは人種が違い、私とは既に住む世界が大きく変わっていた。
幼少期に比べれば、私も別の人種で、別の世界で暮らしている。
それにしたって、重なる部分があると思っていた世界が、ほんの数年で全く重ならなくなるほどに隔たりが出来るなんて、と感じたものだ。
一度、彼が現代社会で一般的に価値のある人を演じ始めてから描いた漫画を読ませて貰った事がある。
絵は多少昔より上手くなっていた。
だが、彼がはぐれ者から、社会的に普遍的な価値ある人材を目指した様に、彼の作品からも似た何かを感じてしまい、正しく評価する事に悩まされた。
端的に言えば、当初は夢を追っていた主人公が、先輩に出会い感化され、社会に適合して面白く無くなっていく様な話だった。
それも、表面的で、読んでいて薄ら寒さを感じる内容であった。
彼がそれを本気で作りたいのでは無く、漫画賞に応募する為に仕方なく人気がありそうなモチーフと少しの下調べで描いたのだろうと分かった。
自分の作品やキャラが好きで描かずにいられなかった彼は、そこにおらず、世間体からやっている事が透けて見えるのだ。
私は、彼の事が昔の様に好きでは無くなってしまった。
後に、彼は結婚し、子供も出来、普通に就職し、きっと世間的に見れば幸せな人生を選んでいる。
だが、彼から送られてくるSNSの通知を見ると、社会的に価値がある人を演じ続ける為にか、本気でそうなってしまったのか、身内に対して成功マウンティングし続ける姿には、羨ましいよりも、全体的に薄ら不愉快が勝ってしまい、複雑な気持ちにさせられる。
そのまま自然と疎遠になってしまったが、私は、彼が漫画家にならない事は、彼の変化を見た瞬間に何となく察していた。
少なくとも、当時、彼が漫画家になるかどうかを賭ける事があるのであれば、私は間違い無くならない方に賭けただろう。
世間からどう見られるかを気にして別人の様になってしまった彼に、本当の所で何があったのかは分からない。
そうならざるを得なかった何かが彼を変えた。
だが、世間から価値ある人であると、凄い人であると、そう思われたい、意地の悪い表現をすれば承認欲求モンスターとなり、自分を失って世間のブームだけを必死に追う様になった時点で、彼の好きが見えなくなった。
きっと、彼も彼本来の世間から後ろ指を指されても好きだった物が分からなくなった時点で、創作者としての、少なくとも自己表現者としての彼は、力を大きく削がれてしまった事だけは、確かに思えた。
でも、彼が私には、そちらに行きたいとも思えない世界を選んだとしても、幸せになる事だけは、今は願っている。
そうで無ければ、選択の末に私には勿体無く見えた何かを捨てた甲斐が無いじゃないか、と。
ただ正直に言えば、昔の彼のまま、漫画家となるでも他の方法でも、あの頃の確かに魅力的だった彼のままで、虐めて来た人達に対して勝って欲しかったと言うのが私の本音ではある。
住み心地が悪いと感じた世界から出る為に、彼は人種を途中で変えただけだが、それが私には、どうしても寂しく思えてならないのだ。
例え、彼の選択が正しい物だとしても、ディストピアに適応した様に見えてならない。
悪い人じゃないけど
私は、いわゆる陰キャである。
ド陰キャだ。
陽キャは、大抵の場合苦手だ。
以前、バリバリやり手の陽キャの人と仕事で一緒になり、私は困った。
とても困った。
住む世界が、全く違うのだ。
彼は、恐らく、かなり優秀だった。
また、明らかな陽キャながら、いわゆる陰キャに気をつかえる部分もある、陰キャに比較的優しい陽キャであった。
なのだが、彼の能力や人格に対して不愉快な思いをした事は一度も無いのだが、世界観が全く違う事で、色々な所ですれ違いと言うか、微妙な空気になるのだ。
やたらと飲み会をやりたがり、飲み会の会場がオシャレな店か、知る人ぞ知るなのかその人が単に行きつけなのかオシャレとは逆に粗雑で常連客ばかりの飲み屋か、となり、私は一緒に飲みに行くだけでメンタルがザラザラと削られて行った。
飲みの席で、彼は女の子を呼んで合コンにしようとするが、私からすると、もうちょっと引いている状態だ。
バリバリの陰キャに、そんなカジュアル合コン文化なんて無い。
無難に世間話をしてなんとか乗り切るので、ギリギリだ。
口説いてホテルになんて、ハードル高すぎだし、まあ、端的に言って無理だ。
キャバクラとか、私は本気で絶対に行きたくないのだ。
どう考えても、居心地が悪いだけだ。
仕事とは言えお店の人も困るだろう。
彼経由で会う女の子は、人種が違い過ぎて、共通の話題も無い。
数少ない共通の話題で、陽キャの人に振り回された話でギリ場を持たせる様な状態である。
また、彼は、フットワークが軽く、金遣いも豪快だった。
お揃いの高級時計をチームで買おうと、買わされそうになった事もあった。
私の当時の給料的には、あまりにもお高い時計であったし、そのノリに付き合えない陰キャが多かったのか話は流れた。
なのだが、私は、彼の事は、まあまあ好きだった。
だが、好きだけど、すっごく苦手でもあった。
一緒にいると、住む世界が違う事で、とにかく精神が疲弊していくので、相手のペースに合わせるとこちらがボロボロ。
と言って、こちらは押し付けるほどの世界も無い。
むしろ、オタク趣味に陽キャが気を遣って近寄って来て「それ何?」「艦これ、です」「どういう作品なの?」「戦艦を美少女に擬人化した作品で~(早口)」「そ、そっか」(完)
と言った感じで、どちらも相手の世界に長くは入れない。
両者が相手の世界に長時間入れないのだから、交流は仕事と言う第三の世界以外では、お辛い。
それでも、私は彼の事は超苦手なのだが、別に嫌いではないのだ。
住む世界が全然違うだけで、友達でも無く、ちゃんとした仲間意識もお互い怪しいのだが、恐らく、お互い最低限のリスペクトがあったのだ。
仲間でも友達でも表現としてはシックリ来ない、お互いが異国の敬意を払うべき友人の様な関係は、変な感じだが、少し面白くもある。



