創作論

【創作論】個々の人生を見れば「終始普通」なんて事はなく、創作の原動力は人生の上振れ・下振れ・脳を焼かれた経験にあると言う話

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世の中にはよく「普通の人生」という言葉があふれています。

しかし、創作に携わる者、あるいはこれから物語を紡ごうとする者にとって、断言できる真実が一つあります。

それは、「終始普通の人生など、この世に一人として存在しない」ということです。

普通とは、異常値を排除し、均し、大多数に当てはまる事だけを抜き出した部分に過ぎません。

そして、一見すると平穏で、どこにでもあるように思える誰かの日常も、細部を覗き込めば、そこにはその人だけの固有の葛藤、狂気、そして奇跡が隠されています。

個々に見れば、日常を生きていて、なお、普通の人生など、皆無に近く、それぞれが個性的な人生と言えるわけです。

そして、魅力的な物語を作るために必要な素材は、強力な燃料は、どこかの本に書かれたロジックや、有名クリエイターやアーティストの有難いハウツーやお言葉ではなく、あなた自身の人生という歪(いびつ)な経験の中にこそ眠るのです。

今回は、自身の人生から「創作のコアとなるテーマ」を掘り起こすための、3つの切り口を紹介します。

テーマを探す3つの切り口

自分の生きてきた道を振り返り、物語の駆動源(テーマ)を見つけるには、感情や環境が大きく揺れ動いた「極端なポイント」に着目するのが効果的です。

これが無いと、なんとなくとか、面白そうだから、みたいな弱い動機で、ふわっと作る事になったりします。

そうなると、人によっては、動機、底力、興味、様々な物が欠けてしまう事があります。

テーマとは、各々の人生と密接な方が、相性が良いのです。

1. 人生の下振れ(谷の時代)

人間の本性が最も剥き出しになり、世界の真実や人間の本質に気づかされるのは、人生が文字通り「下振れ」している瞬間です。

その真っ只中にいる時は、本当に辛いものですが、言葉を選ばず創作と言う観点で見ると、客観的に言えば「美味しい」ポイントが盛りだくさんの人生経験とも言えます。

  • 着目すべき点:
    • 他者からの裏切り、大切な人との別れ、あるいは経済的・精神的な困窮。生きるのが、毎日が辛かった時間、期間。
    • 「あの時、自分はどうやって呼吸していたか」「周囲の人間はどんな目をしていたか」「ここが地獄か」「消えてしまいたい」「社会が、誰かが、憎い」。
  • 創作への活かし方:
    • 下振れの経験は、物語における「主人公の絶望や危機」を圧倒的なリアリティで描写する原動力になります。あなたが感じた、黒く濁った泥のような感情、そこから這い上がった(あるいは諦めた、逃げた、今も浸かっている)時の生々しい体験、経験、選択、感情的発露、等は、読者の胸を刺す強力なフックとなります。

2. 人生の上振れ(山の時代)

すべてが上手くいき、自分が世界の中心にいるかのように錯覚した、あるいは純粋な幸福に満たされていた「上振れ」の瞬間です。

人生には、山あり谷ありです。

谷が誰にでもあれば、それなりの山がある人も大勢います。

その山の客観的な大きさは重要ではなく、主観的に大きく感じたのであれば、それをテーマとして伝えられれば、それは強力な武器となります。

  • 着目すべき点:
    • 努力や貢献が報われた瞬間、狂喜乱舞した成功体験、誰かに肯定された記憶。
    • 「あの時の無敵感、全能感の正体は何だったのか」「どうして報われたか」。
  • 創作への活かし方:
    • 上振れの経験は、物語の動き出し、または正のカタルシス、あるいは「かつて栄華を極めた者が没落する」というドラマの落差を生むための強固な土台などになります。天国を知っているからこそ、描ける地獄もあるのです。

3. 脳を焼かれた経験(不可逆な変化)

出会う前と後で、自分の価値観や人生の方向性が180度変わってしまったような、強烈な体験です。

これこそが、あなたの創作の「固有のテーマ」に直結します。

これは、上振れや下振れとは別の、人生を変えたり、良い意味でも悪い意味でも棘として残る特異点として、出会えて気付ければ幸運でしょう。

この多くが、いわゆる「癖」とか「推し」や「愛」が向く先との出会いです。

  • 着目すべき点:
    • ある作品(小説、映画、アニメ、ゲーム)に出会った衝撃。
    • 誰かが放った、自分の世界の前提をひっくり返すような一言。
    • 理不尽な現実を突きつけられ、それまでの常識が崩壊した瞬間。
  • 創作への活かし方:
    • 脳を焼かれた経験は、物語における「日常から切欠への転換」や、キャラクターが人生を賭けて突き進む「衝動・狂気」のモデルや源泉になり得ます。あなたが何に脳を焼かれたのかを突き詰めることは、「なぜ自分はこの物語を書かなければならないのか」という創作の核(テーマ)そのものにもなります。

自分の人生が「普通」というバイアスを捨てるということ

自身の人生を振り返る際、「自分の経験なんて、誰にでもある普通のことだ」と勝手に要約し、縮小してはいけません。

矮小化しても、謙虚になっても、テーマ探しでは良い事なんてありません。

例えば、「受験に失敗した」という出来事自体はありふれたものに見えるかもしれません。しかし、

  • その時、部屋の窓から見えた景色の色のくすんだ光景の記憶
  • 親からかけられた、一見優しそうでいて芯の冷え切った一言
  • 机の引き出しの奥に隠した、使わなかった参考書の匂い
  • 全力でやり抜いた受験勉強の残骸と、それでも届かなかった志望校の不合格通知書

これらは、個々に見れば間違いなく、あなただけの固有のディテールです。

このディテールを素直に、誤魔化さずに、徹底的に網羅し、観察すること。

その痛み、歪み、あるいは快感、開放感の中にこそ、他者の心を揺さぶる「物語のテーマ」に繋がる要素が眠っています。

あなたの人生の上振れ、下振れ、そして脳を焼かれた瞬間。

それらを記憶のテーブルの上に並べてみてください。

そこには、あなたにしか語ることのできない、唯一無二のテーマが必ず息づいています。

それを、抽象化したり、物語のテーマとして昇華したり、解体したり再構築したりする事で、自分にしか描けない、人生と言う血の通った作品を作る助けになります。

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