ストーリーアドバイス事例紹介:ご都合主義の罠

ストーリーアドバイス事例紹介

私の所には、物語に関する様々な相談が来ます。

このコーナーでは、過去に実際にあった事案をベースに、良くある失敗と対処法を紹介していきたいと思います。

あくまでも紹介する事例は、特定の個人を名指すのでは無く、実際の例を挙げても良くある失敗パターンとして紹介いたします。

事件が起きているのに「ご都合主義?」

物語を創る上で、ご都合主義と聞くと、どういう想像を浮かべるでしょうか?

主人公がピンチに陥った時、前振りも伏線も無く、都合良くピンチを乗り越えたりすると、ご都合主義に見えたりするものですね。

主人公にとって都合の良い状況が根拠無く描かれる事で、ご都合主義を人は感じる訳です。

ですが、主人公にとって都合が悪くてもご都合主義を感じる状況が物語にはあります。

今回も、実際にあった相談をベースに説明します。

こんな相談者様

その相談者様、商業デビューし単行本も出されている漫画家さんでした。

新連載用の連載作品の制作で悩み、相談に来られました。

こんな御相談

相談者様からの要望は、全体的に欠点や足らない部分を指摘して欲しいと言う様な相談でした。

50ページ程度の1話目の内容は、現代日本を舞台にした必殺仕事人モノでした。

こんな分析

犯罪者に弱みを握られた被害者を友人に持つ主人公が、仕事人に依頼する事で仕事人と関わり、結果的に友人を助けられると言った物語でした。

全体的に物語はまとまっていたのですが、どこか不自然な部分がありました。

主人公にとって都合の良い事は起きないのですが、物語がどういう訳かご都合主義に感じられるのです。

相談者様の作品は、

  1. 主人公の友人が、弱みを利用されて悪者に犯罪を強要される。
  2. 友人を助ける力の無い主人公に、主人公から依頼を受けた仕事人達が接触して来る。
  3. 主人公の頑張りと仕事人達の助けによって悪者を成敗する。
  4. 主人公は友人を助ける事が出来て、大団円。

大まかに言えば、この様な物語でした。

「必殺仕事人」「水戸黄門」「遠山の金さん」等と近い物語構造です。

相談者様の作品は、仕事人達それぞれに特技や魅力もあるのですが、なぜかご都合主義に感じられる問題を抱えていました。

この構造の物語の場合、仕事人達が強い事も、予定調和的に犯罪者が倒される流れも、ご都合主義にはなりにくいものです。

相談者様は、そう言った構造のツボは抑えていたのですが、別の部分に物語の歪みがありました。

この構造の物語では、物語の冒頭で仕事人達を紹介する為の話が置かれる事が、ままあります。

物語の導入部としては、鉄板のセオリーです。

作品の方向性を示す為の、一話目の主人公を通した仕事人達の活躍を目にする最初の事件と言う奴です。

今回も、まさにそれで、アプローチとしては間違い無く正解でした。

その中で、主人公とその友人は、仕事人の活躍の為の舞台装置としての側面がありました。

その、一話目の主人公の扱いに、特に大きな問題がありました。

水戸黄門で言えば、劇中の被害者は、水戸黄門が「活躍する為の事件」を提供する為の被害者と見る事が出来ます。

ですが、被害者が困っているから水戸黄門と仲間達は事件に介入して来るのであって、水戸黄門を活躍させる為に被害を受けている訳ではありません。

でも、物語として描きたいのは、仕事人達の活躍です。

ここで、仕事人達を活躍させる為に都合の良い物語を描こうとして、語り部であり、狂言回しであり、事件の被害者である主人公達に都合の良い動きをさせ過ぎると、仕事人に都合の良い状況をつくる為の都合の良い被害者になってしまう事があります。

物語を見ると、主人公は葛藤し、酷い目に遭い、頑張った末に友人を助けるに至っているのですが、所々に「その行動は必要あったのか?」と言う、仕事人を活躍させる為に取ったとしか思えない不可解な行動があったり、仕事人側も特技を活かす為に、わざと難しい手段を選んだりといった不自然な点が見つかりました。

それによって、仕事人達の活躍によって主人公達被害者が救済されると言う勧善懲悪の物語の中に「わざと酷い目に遭っている?」「不必要に複雑にしている?」と言った、不自然さが生まれ、全体的にリアルな物語の筈なのに、リアリティが無くなっていました。

こんな解決

この事例で問題解決に必要な事は、主人公や仕事人の行動を劇中の状況や設定に合わせて最適化する事でした。

シンプルに出来る所はシンプルにし、どうしても必要な描きたい特殊な行動があれば、前置きや伏線を予め張ったり、設定に修正を加え、整合性を整えていきました。

すると、登場人物達にとって都合が悪い事が劇中に起きても、それは自然な物語の流れに組み込まれ、ご都合主義とは感じなくなりました。

登場人物達の行動を、物語の見せ場を作る為のご都合主義から解放させる事で、登場人物それぞれの魅力も、リアリティが足された分、映える様にもなり、作品全体の魅力もその分アップしました。

まとめ

ご都合主義、それ自体は悪い物ではありません。

使い方によっては、物語を面白くするのに利用する事も出来ます。

そう言う意味では、ご都合主義にも良し悪しがあると言えます。

悪いご都合主義の代表としては「デウスエクスマキナ」と呼ばれる様な、パワープレイがあります。

物語の創作者にとって、物語の進行上の詰まりを解消する為の、一見、主人公達にとって都合の良いご都合主義は、結果的に物語の魅力を、リアリティと言う面白さの要素を削ぐ事で殺してしまう、不都合な存在です。

創作中の物語を見て、これはちょっとご都合主義かなと思ったら、リアリティの面で目をつむれるかどうか考え、判断してみると良いかもしれません。

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