ストーリーアドバイス事例紹介:物語の矛盾を無くそうとすると面白く無くなる?

ストーリーアドバイス事例紹介

私の所には、物語に関する様々な相談が来ます。

このコーナーでは、過去に実際にあった事案をベースに、良くある失敗と対処法を紹介していきたいと思います。

あくまでも紹介する事例は、特定の個人を名指すのでは無く、実際の例を挙げても良くある失敗パターンとして紹介いたします。

目次

  • 矛盾
  • なぜ矛盾を無くそうとすると面白く無くなるのか
  • こんな解決
  • まとめ

矛盾

物語を創る上で、「矛盾」と聞くと、どういう想像を浮かべるでしょうか?

「この展開は、矛盾してる」「この行動は矛盾してる」「このセリフは矛盾してる」

物語の世界は創作であり、創作者が人間である以上、どこかしらに矛盾を抱える事は、日常茶飯事です。

普通に考えると、その矛盾は、少しでも少ない方が良い物である事は間違いありません。

ですが、完全に無くすとなると、それはそれで、非常に大変になります。

矛盾を無くそうと「辻褄を合わせる」と、途端に物語の面白さが目減りして感じる時まであります。

そんな時、どうすれば良いのか、幾つかの事例を取り上げて、解決策をお教えいたします。

こんな相談者様方とご相談の内容

今回の相談者様は、グループで紹介します。

一つ目のグループは、創作者グループです。

彼ら彼女らは、大抵が商業で活躍されている小説家、漫画家の方で、相談される内容は、こういった物です。

「担当編集さんに『作品の、ここが矛盾している』と指摘され、言われたとおりに直したら、物語が面白く無くなってしまった」

ある人は「編集さんを不審に思い」また、ある人は「逆らない力関係なので対処法を教えて欲しい」と、そんな相談を受ける事があります。

二つ目のグループは、逆の立場、編集者グループです。

彼ら彼女らは、出版に関わる編集者で、ベテランから新人まで担当している作家を何人も抱えていて、こんな内容の相談でした。

「担当作家さんに『作品のここが矛盾している』と指摘し、作家は言われた通り直した筈なのに、物語が面白く無くなってしまった」と。

ある人は「どうすれば良かったのか」を悔やみ、ある人は「何が悪かったのか」を知りたいと、そんな感じです。

つまり、この問題は、創作に関わる者にとっては、共通の大きな問題と言う訳です。

なぜ矛盾を無くそうとすると、面白く無くなるのか?

そもそも矛盾とは?

矛盾とは、読んで字のごとく、例え話で語られる事もありますよね。

「何でも貫く矛と何でも防ぐ盾、勝つのはどっち?」と言うアレです。

英語ではContradiction、日本語の意味としては「一貫性が無い」と言う言葉で表されます。

時にはparadox、日本語の意味としては「背理」と呼ばれ、フランクに矛盾を表現したりします。

この矛盾の正体とは、何か考えた事はありますか?

矛盾の正体とは、矛盾を解消する事で明らかになります。

矛盾を解消するには、どうすれば良いでしょうか?

それは、足りない情報を足してやる事です。

それだけの事で、矛盾は解消されます。

この事から、矛盾は「情報不足」と考える事が出来ます。

情報が不足しているせいで、一貫性が無かったり、理論的にあり得ない状態になっていると言う事です。

そもそも面白さとは?

まず前提として、物語の面白さは複数の要素で構成されています。

登場人物の行動を通して感じる、

  • リアリティ
  • 予測不能
  • 感情移入

これら物語の面白さを構成する3つのポイントのどれが欠けても、物足りない物語となる訳です。

ここで問題となっている矛盾を直す工程、情報不足を解消する「辻褄合わせ」は、面白さの中で言う「リアリティ」を高める効果が期待できます。

物語に「リアリティ」が付与される事で、ひっかからない自然な読み味になる訳です。

没入感が高まる訳ですね。

なので、矛盾を無くそうと言う動き自体は、自然で正しいと言えます。

正しい筈なのに、何が問題になるの?

この「辻褄合わせ」と言う工程は、創作者の想定していない追加作業とならざるを得ない側面があります。

初めから想定できるなら、矛盾が起きない様に気をつければ良いだけですからね。

想定しきれないからこそ、厄介な訳です。

発生してしまった追加作業では、矛盾という情報不足を解消しないといけません。

その際、設定の追加や改変等が行われる事になります。

矛盾を無くす為の設定やシーン、時にはエピソードを加える訳です。

情報を追加する場合は、物語の「長さ」が影響を受ける事になります。

矛盾を解消する情報を自然に差し込む事で、対処する訳です。

もう一つの矛盾解消方法で、矛盾を起こしている情報の方を改変する場合は、「改変する設定が係わる箇所全て」が影響を受ける事になり、大幅な改修が必要になります。

これらの工程で、問題が起きます。

それは多くの場合、情報不足を埋める事に集中してしまう事で、他の面白さの要素を入れ忘れてしまうと言う凡ミスが殆どだったりします。

「リアリティ」は、確かにアップさせたが、「予測不能性」も「感情移入性も」他の物語のパート同様に入れなければならないのに、「直し」に意識が行ってしまい、矛盾の解消「だけ」をしてしまう事で、疎かになってしまう。

こうして「矛盾を無くそうとすると物語が面白く無くなる」問題が起きる訳です。

この「視野が狭くなる」状態に創作者と編集者の双方が陥ると、共に「矛盾はなくなったのに、何かおかしいな?」と首を傾げる事になり、多くはタイムリミットによって「矛盾は無くなったが、不満が残る」状態で物語が世に出てしまいます。

そして、こう思うのです。

「面白く無くなるぐらいなら、矛盾したままの方が、まだ良かった」と。

この状態になる事を肌でわかっている創作者や編集者になると、小さな矛盾なら無視した方が良いぐらいの判断が出来るのは、こういった経験則から来るものです。

予測不能性と感情移入性の勢いで、気付かれない様にしてしまおう!

と言う事ですね。

また「辻褄合わせ」には、それ自体に創作法との相性や難易度が存在します。

バタフライエフェクトの恐怖

矛盾を直そうと考え、いざ「辻褄合わせ」を始めると、思わぬ大改修が始まる時があります。

タイムスリップを題材にした物語を見た事があれば分かり易いですが、触る設定次第では、リアリティを付与しようと直し始めると、ほぼ全直しなんて事もありえます(いや本当に)。

特に怖いのは、主人公の動機に関わる設定です。

動機が弱いと設定を追加したら、想定した物語から大きくそれて空中分解しかけるなんて事もあります(空中分解も)。

確かに、そんなリスキィな大改修をする位なら、矛盾を放置したい人の気持ちも分かります。

せっかく家を建て、完成間近で、検査をしたら電気の配線が一ヶ所切れていた。

直すには、壁紙や壁を剥がし、と面倒が付きまとう。

それなら、使えないコンセントには、いっそ目をつむる方が良いのでは無いか?

最もな意見です。

当たり前となってしまいますが、こういった望まぬ追加工事をする事になりそうな場合、根の深い設定なら、創作時にプロットや設計図に該当する物を予め作っている創作者の方が有利にバタフライエフェクトを乗り越えられます。

要素の整理が出来ていない場合、影響範囲が把握しにくく、設定を一ヶ所変更したら連鎖的に、ドミノ倒しのように設定を変えなければならなくなる事があり、そうなると収拾がつきません。

また、設計図があっても、セントラルクエスチョンに大きな影響を与える矛盾や「そもそも」に関わる問題であった場合は、設定の改変は大工事に発展するので危険です。

ご都合主義の恐怖

情報の改変は、バタフライエフェクトで大変そうだ。

ならばと情報の追加を試みようとすると、そこにも罠が。

情報を、あまりにも後出ししてしまうと「伏線の張り忘れ」である事がバレてしまう問題。

ご都合主義の追加設定問題があります。

連載作品などの場合、もう、本当にどうしようもない事もありますが、プライドの高い創作者は、当然嫌な気持ちになりますし、読者も複雑な気持ちになります。

この様に、矛盾は非常に厄介ですが、その解消も非常に厄介なのです。

進むも地獄、戻るも地獄。

では、創作者、編集者、そして読者は、どうすれば、せになれるのでしょうか?

こんな解決

創作の状況によって、解決策は色々とあります。

その中で、代表的な物をいくつか紹介します。

1:意味だけを変えて矛盾を消せないか?

追加や改変を行おうとするから、改修が必要になる訳です。

まずは「言葉」で無く、「意味」を変えて対応できないか試してみましょう。

どういう事かと言うと、矛盾を正当化できる様に、既に出て来ている要素に意味をつけてしまうのです。

本当は、伏線でも何でも無かった前振りに見えるアイテムやシーン、登場人物をあたかも最初からその為に仕込んでいたかの様に「意味を与えてしまう」という手法です。

場合によりけりですが、この手法が上手くいけば「やられた! それは予想出来なかった!」となりやすいです。

後出しで設定を足したなんて言わなければ誰にも分かりません。

直す工程は減り、創作者は楽になり、矛盾が消えて編集者もスッキリし、読者もハッピーとなります。

ただし、意味を付与する設定に使える要素が事前に出ていないと、出来ない手法です。

連載作品や長編作品で使えば、仮に矛盾を指摘されても対応出来るどころか、作品のクオリティを高める事にさえ繋げられます。

2:どんでん返しに利用できないか?

上の手法のパワーアップ版です。

矛盾したまま物語を進め、ここぞと言う所で追加の情報を出します。

誰もが矛盾していると言う違和感を感じる筈です。

ですが、その違和感が計算の上だったら?

種明かしによって、違和感が一気に解消され、過去に出て来た要素の意味が塗り変わっていく演出は、読者を興奮させる事が十分に可能です。

3:矛盾は直した、よし、次は「変」にしよう

情報不足を解消する作業は、どうしても物語を平坦にしがちです。

その工程自体が、整合性を高めると言う、道を舗装する作業に近いからです。

なので、穴の開いた道が舗装されたら、今度はそこを面白くする必要があります。

ジャンプ台をつけるでも、何でも構いません。

変にする事で、物語はちゃんともう一度面白くなります。

物語のコンセプトに沿って、変(普通や平坦じゃない状態)にするのです。

これをするだけで、物語創作者の多くは救われます。

要は、直しにだけ意識を向けない様に自覚して、物語としての面白さを追求する姿勢を忘れないようにする、正攻法ですね。

4:無視できる矛盾かどうか、判断する

直さないと言う場合も想定しましょう。

限られた時間の中で、その矛盾解消以上に意味のある、皆が幸せになる創作活動に費やしたい時間があるのなら、なおさらです。

矛盾を無視できるかの判断は、色々な視点が必要になります。

時間が無いと言う理由で無視する事もあり得ます。

原稿などの成果物を落とすぐらいなら、未完成でもあった方がマシと言う場面は実際にあり得ます。

ですが、時間に余裕がある時に、直すべきか否かを考える基準は、どこに持ってくればいいでしょう?

難易度は大きな問題ですね。

簡単に直せるなら、直すべきです。

また、明らかな情報の間違いも出来れば正したい所です。

単純に、読者が混乱するからです。

本筋に深く関わらない設定の場合も、無視の候補です。

その情報が合っていようが間違っていようが問題の無い情報なら、そもそも入れない方が良い場合もあります。

太陽と影の位置が矛盾しても、それが本筋に関わったり、それこそトリックの解明に必須の情報でもない限り、多くの人は気にしない以前に気付きもしないでしょう。

心配だし、客観性も欲しいなら、第三者に読ませてツッコまれないか試すのも手ですが、読ませる相手は選びましょう。

5?:深い位置を直すには?

ここまであげた手法が使えない?

本当に?

明らかに直した方が良い?

時には、まあ正攻法も、必要だよね。

じゃあ、確認するよ。

原稿は完成間近? 時間ギリギリ? 矛盾は「そもそも」にかかってる?

全部該当?

残念。

それは、しょうがない。

同じ失敗をしない様に、次回気をつけるしかない。

え、時間だけは、ある?

それなら、どうにかなるかも。

物語の設計図は、何かある?

それは良かった、それだけで時間短縮になるかもしれない。

無いと、必要なら作った方が良い時もあるからね。

問題の矛盾は、どこにかかって来てる?

登場人物? 世界観? 行動?

壁(敵や問題)? 壁越えの為の過程?

情報の追加で間に合いそう?

自然に追加できそうな場所はある?

改変するなら、影響範囲は?

とまあ、やるしかない時もあるにはあるのですが、どうにかなる物もあれば、時間の問題で諦めざるを得ない時もあります。

ケースバイケースですね。

まとめ

矛盾を無くそうとすると、それだけだと面白さが削がれるが、ちゃんとやればリアリティはアップするし、もっと面白くなる可能性があると言う話でした。

大事なのは、一種の情報コントロール力ですね。

矛盾は無いに越した事は無いですが、完全に無くす事は難しい事も意識した方が良い物です。

また、読者にとって気持ちの良いフィクションと言う嘘の中に潜ませてしまえば、その物を改めて考えられなければ矛盾は見えづらくなります。

例えば、タイムパラドックスの説明や意味づけをちゃんとすれば、そう言う世界なんだと読者はフィクションを受け入れ、その中にある矛盾には寛容になります。

ただし、動機や目的、目標にかかってくる部分の矛盾や、明らかに整合性が取れていない矛盾には、厳しくなります。

この記事が、物語創作のヒントになればと思います。

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よかったら、よろしくです。

※アイキャッチはヒューマンピクトグラム2.0様より使わせて頂いています。

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