テーマは絞った方がベター
物語創作において「テーマ」とは、必ずついて回る必須要素だ。
だが、これは人によっては、大問題となる。
テーマを決めて作るタイプの人にとっては、「大海原を進む船に行き先を示す方位磁針」の様な心強い味方となる。
しかし、テーマを創作しながら探すタイプの人にとっては、「手探りで探さねばならない、沼に沈んだ宝石」の様に、見つけるまでが厄介だ。
この「テーマ」と言う物だが、あらかじめ決めるにしても、探しながら作るにしても、「少ない方が良い物」なのだが、その程度ならなんとなく聞いた事ぐらいあるだろうか?
「テーマ」とは、少ない方がよりベターな要素だ。
今回は、なぜ「テーマ」は絞った方が創作が上手く行くのか、その仕組みを具体的に解説したい。
テーマを絞らない悪影響の仕組み
1つのテーマで作品を作ったとしよう。

テーマが気に入れば、その作品は見て貰えるし、テーマの表現が上手く行っていればファンになって貰えるかもしれない。
だが、そのテーマを気に入ってもらえなければ見て貰えないかもしれない。
そう思う人もいるだろう。
では、テーマが2つある場合、どうなるだろうか?

テーマが2つあると、興味を持ってもらえる確立は上がるかもしれない。
例えば、テーマ1が「ロボット」で、テーマ2が「アイドル」だったら、片方だけのテーマよりも広い人に見て貰えそうである。
ロボットが好きな人と、アイドルが好きな人に、と言う感じだ。
しかし、創作するにあたって、その考え方には大きな落とし穴がある。
作品に落とし込むと言う事は、一つの作品に複数のテーマを同居させる事になる。
なので、テーマが複数ある場合、こうなる。

テーマ1とテーマ2が好きな人が両方来ると思ったら大間違いで、一つの作品に落とし込んで、擦り合わせた所で人々は作品を判断する。
すると、図の黄色で塗られたゾーンに合致する人が作品に興味を持ってくれるメインの層となるし、作品を見終わって満足出来るのも黄色に塗られたゾーンに合致する人に限られる様になる。
これが、テーマを絞った方が良い大きな理由である。
絞らなければ、ターゲットとなるファン候補や顧客が絞られる事になる。
勿論、ある程度は客層を絞った方が作品は作りやすくなるが、テーマを考え無しに絞らないと言うのは、創作する上で大きなリスクなのだ。

テーマが増えれば増える程、見て貰える確立は下がり、見てくれた人を満足させる事も難易度が上がる。
テーマ毎の親和性や、創作者の発想力、まとまりを持たせる技量によって、満足させる確率が決まり、狙わないテーマ選びで複数テーマを扱うのは、かなりのギャンブルである。
これは、モチーフテーマとストーリーテーマの両方に言える事だ。
更に、モチーフテーマとストーリーテーマ間でも、この現象は起きる為、表現上の一致は欠かせない。
ここで、テーマがまたがっている作品を紹介しよう。
「AKB0048」である。
この作品は、言ってしまえば「マクロス」×「AKB48」のコラボアニメの様な側面がある。
クリエイターの手腕によって、非常にまとまりのある作品になっているのだが、モチーフテーマにおいて、

この状態に陥っており、パッとしないまま終わってしまった印象があった。
「マクロス」と「AKB48」の擦り合わせとしては最適解かもしれなくても、得られた答えを受け入れられるターゲットのパイがそもそも小さいのだ。
しかし、テーマの悪影響の仕組みを知っても、納得いかない人もいるだろう。
複数のモチーフテーマとストーリーテーマを内包するのに面白い作品が、世の中には存在するからだ。
それにも、ちゃんと理由があるので説明しよう。
テーマを絞って、多様性を出す。
テーマは絞るべき物だ。
だが、純粋なワンテーマでは、新しい物を生み出すのは困難である。
そこで取られるのが、メインテーマ内にサブテーマを作る手法である。
これが、複数テーマを扱うのに、パイが小さくならない冴えたやり方である。

図の様に、メインテーマの中にサブテーマを入れ込む事で、複数のテーマを持ちながらもワンテーマを維持できる。
考え方としては、メインテーマの為にサブテーマが有る状態を作ると言う感じだ。
これを説明しやすい作品がある。
「超時空要塞マクロス」である。
マクロスは、モチーフテーマが非常に多いのが特徴のアニメーションだ。
- 宇宙人の船「マクロス」
- 戦闘機型可変ロボットの「バルキリー」
- 地球侵略を目論む大型宇宙人「ゼントラーディ」
- アイドルと歌「リン・ミンメイ」
- 主人公とヒロインの三角関係
と、パッと見だけで、バラバラなモチーフテーマがいくつもある風に見えるかもしれない。
しかし、マクロスが上手く行っているのは、バラバラのテーマを一つにする冴えたアイディアがあったからだ。
冴えたメインテーマがあり、その下にサブテーマを配置していたから、テーマにまとまりが生まれたのだ。
マクロスは宇宙人が地球人を試す為に送ったブービートラップで、バルキリーは宇宙人と戦う為に必要な兵器であり、アイドルの歌は争いを解決する為の鍵となる要素として働く。
つまり、初代マクロスにおいて、中心となるモチーフテーマは
- 「宇宙人とのファーストコンタクト」
であり、そこを中心に物語を統括するテーマとして、他のサブテーマは綺麗に纏められている構造になっているのだ。
そして、ストーリーは宇宙人との争いを中心に進み、その解決を目指す事になる。
更に、モチーフテーマとストーリーテーマは綺麗に融合していて、作品として、非常にまとまりのあるデザインが行われているのである。
メインとサブを決めれば、優先順位が決まる。
モチーフでもストーリーでも、テーマのメインとサブさえ決めてしまえば、メインに従う形で様々なサブテーマを内包できる。
これは、作品の方向性を決める指針にもなり、重要な考え方の一つだ。
仮に、ストーリーテーマで「英雄譚」を描きたいと考え、同時に「恋愛」要素を入れたい場合、どちらをメインテーマにするかによって作品のカラーはガラリと変わる。
英雄譚の中に彩りとして恋愛劇が入るのか、恋愛劇の彩として英雄譚的なエピソードが入るのか、メインの定義によって作品の向かう目的地や目標地点は全然違ってくると言う事だ。
終わりに
テーマは絞った方が良いと言う話でした。
最初に決めるにしても、作りながら探すにしても、メインテーマを決める事が創作では重要です。
昨年大ヒットした「ゾンビランドサガ」は「ゾンビ」×「アイドル」と言うモチーフテーマでしたが、メインテーマは「アイドル」と明確でした。
「ラブライブ」シリーズは、「部活」×「アイドル」で、メインは「部活」です。
テーマを絞れば、描くべきものが見え、物語は力強くなります。
この記事が、テーマを絞ったり、メインテーマを選ぶ大切さの気付きになれば嬉しい限りです。