目次
映画を構成する基本の要素毎に分けられた「制作術」集
この本は、右も左も分からない映像制作初心者が読んで、頭から「最初に何をして、こう言う事に気を付けて、次は……」みたいに真似るだけで長編映画が作れる様になる類のハウツー本では無い。
一つの特殊な切り口を深堀して解説する様な、先進的な技術書と言うわけでもない。
この本は、126本の様々な映画を分析し、例として、制作術単位で実際にどのように使われているかを解説するタイプの、どちらかと言えば優秀な事例集だ。
この本は、映画制作の大きな助けになるが、いくつか条件がある。
映画はこう作られていく 名作映画に学ぶ 心を揺さぶる映像制作術
ティム・グリアソン (著), 平谷 早苗 (編集), Tim Grierson (その他), 株式会社Bスプラウト (翻訳)
<内容>
心に残る映画、心を揺さぶる映画、画期的な映像を支えるアイデアやテクニックとは? 映画史に残る、126本以上の作品を新たな視点で分析!
「ムーンライト」: 孤独な少年の疎外感を演出した撮影テクニックは?
「ダンケルク」: それぞれの戦いを紡ぎあげるために使われた編集テクニックは?
「ゼロ・ダーク・サーティ」: 緊迫のドラマをリアルに伝えるライティング戦略は?「市民ケーン」のディープフォーカス、「レザボア・ドッグス」のスローモーションといった映画史に残るテクニックも幅広く取り上げています。本書を読んだ後は、映像表現の可能性を広くとらえられるようになります。
映画制作を5つの主要な工程に分割
-演技(アクティング)
-監督(ディレクティング)
-照明&カメラ(ライティング&カメラ)
-編集(エディティング)
-脚本(ライティング)見事な定番手法の実践例、ひねりを利かせた例外的なアイデア、画期的な取り組みなどを具体的な作品の画像で解説し、映画・映像のスタイルを掘り下げます。
映画・映像を作りたい学生、映像作家志望者の必読書です。
また、カメラの向こう側で何がどう行われているかを知りたい映画ファンには、読み物として楽しめる1冊です。
- 出版社 : ボーンデジタル
- 発売日 : 2021/6/27
- 言語 : 日本語
- 大型本 : 192ページ
- ISBN-10 : 486246498X
- ISBN-13 : 978-4862464989
- サイズ:B5変形版(229 × 202 mm)
<著者プロフィール>
ティム・グリアソンは、Screen International誌の米国上級映画評論家であり、Pasteの主任映画評論家です。Rolling Stone誌、Popular Mechanics誌、Vulture、MELにも頻繁に寄稿しています。「FilmCraft: Screenwriting」「Martin Scorsese in Ten Scenes」など、著作は6冊にのぼります。
当たり前の手法が名作の中で、どう使われているか?


- 演技(アクティング)
- 監督(ディレクティング)
- 照明&カメラ(ライティング&カメラ)
- 編集(エディティング)
- 脚本(ライティング)
映像制作の個別手法を上記5つの章、42の節、それらを更に分けた小節、126本の映画を適材適所使って解説しているのが本書の基本構成となっている。
本書の中で説明される映像制作術は、先にも書いたが目新しい物では無い。
章や節に対して個別になら、更に詳しく書かれた専門書がいくつも出ているだろうし、ネットで調べれば情報は幾らでも見つかるだろう。
では、本書の価値は低いのかと言うと、決して、そうでは無い。
「当たり前の手法」と聞くと、面白みが無いと感じるかもしれないが、それは当然だ。
当たり前の手法とは、道具に過ぎない。
例えば、工作をする際、必要な道具としてカッターナイフの機能を丁寧に説明されても、使い方は知っているし、特筆して面白く無い筈だ。
マインクラフトでブロックの効果や組み合わせて使うテクニックを説明されても、それだけでの面白さは、たかが知れているだろう。
この本の価値は「誰もが知る様な名作が、当たり前の手法を、いかに効果的に使って作られているか」を、実在の名作を例に解説していると言う所にある。
【good】1名作1テクニック=126テクニック
126作品の名作映画を使って1作1テクニックの解説に充てているので、1作1ページ程度でも全体で、かなりのボリュームがある。
解説では、象徴的か、該当するシーンを必ず1カット以上使用しての説明があるので、視覚的手法では、ある程度参考になる筈だ。
膨大な情報が制作術のカテゴリー毎に分けられて書かれているので、辞書的に必要な制作術を探して、制作する上でのヒントとする事が出来る。
また、どの様な手法の制作術やテクニックが一般的に存在するのかを、基本的な所なら広範囲で解説されているので、初心者でも一通り目を通せば、映画制作の基本を把握するのに役立つ筈だ。
【good】深い考察を踏まえて、名作を別の視点でもう一度楽しめる
名作を通して、普遍的な制作術がどの様に効果的に使われているかを説明されていると言う事は、構造的・表現的に名作を分解して見ると言う事であり、その視点の切り口が読者に無かった場合、名作を見直した時、作品の別の顔が見えてくる。
制作者が狙って入れた細部に光る職人技やこだわりに注目して見るのは、映画好きな人であればあるほど楽しい筈だ。
【Hmm】掲載順
掲載されている制作法は、行程順ではなく制作カテゴリー毎に分けられているので、映画の作り方をある程度分かっていないと、この本単体では映画を作るのには説明として足りないと言える。
例えば、
- 演技(アクティング)
- 監督(ディレクティング)
- 照明&カメラ(ライティング&カメラ)
- 編集(エディティング)
- 脚本(ライティング)
と言う章の見出しだけを見ても、それぞれ専門的なパートを専業で行うなら関係無いが、いくつかのパートを兼業する場合は、制作順として章を考えると、明らかに前後する部分がある。
1章のアクティングでは、
- メソッド演技
- 即興(アドリブ)
- リハーサル
- モノローグ
- モチベーション
- アマチュア
が順に解説されているが、そこに順序の法則性は薄い。
そういう点を見ても、この本は単体で完結するタイプの本では無いのが分かる。
別の映画撮影のハウツー本や、映画学校の授業の補助、そう言った場面でこそ本領を発揮するだろう。
本としての評価は?
個人的には、十分良い本だと思います。
本棚の映画資料本コーナーにあると嬉しい一冊です。
ただし、定価3300円を適正と感じるか、高いと感じるかは、かなり人を選ぶと思います。
名作映画の分析を通して、映画への理解を深め、初見とは違う見え方をする名作を楽しむ為のツールとして買うのであれば、お値段以上の価値があるでしょう。
ですが、掲載されている映画を見た事が無く、好きでも無い場合、この評価は、当てはまる映画の本数に左右されて上下するでしょう。
それでも制作術集としての価値は不変ですが、名作に学ぶと言う旨味は、この本の肝です。
なので、例に使われている名作映画や、その監督に、好きな・興味がある物・者がどの程度あるかを事前に調べてから買うかどうかを考えるのが良いでしょう。
収録作品一覧
1章:演技(アクティング)
1:波止場/エリア・カザン(1954)
2:キング・オブ・コメディ/マーティン・スコセッシ(1982)
3:リンカーン/スティーヴン・スピルバーグ(2012)
4:スパイナル・タップ/ロブ・ライナー(1984)
5:無ケーカクの命中男 ノックトアップ/ジャド・アパトー(2007)
6:ガールズ・トリップ/マルコム・D・リー(2017)
7:秘密と嘘/マイク・リー(1996)
8:ヘンリー五世/ケネス・ブラナー(1989)
9:エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に/リチャード・リンクレイター(2016)
10:JFK/オリヴァー・ストーン(1991)
11:摩天楼を夢みて/ジェームズ・フォーリー(1992)
12:アニマル・ハウス/ジョン・ランディス(1978)
13:グッド・タイム/ベニー・サフディ&ジョシュ・サフディ(2017)
14:ロスト・イン・トランスレーション/ソフィア・コッポラ(2003)
15:プレシャス/リー・ダニエルズ(2009)
16:エレファント/ガス・ヴァン・サント(2003)
17:フィッシュ・タンク/アンドレア・アーノルド(2009)
18:クローズ・アップ/アッバス・キアロスタミ(1990)
2章:監督(ディレクティング)
19:ドゥ・ザ・ライト・シング/スパイク・リー(1989)
20:危険なメソッド/デヴィッド・クローネンバーグ(2011)
21:Let the Sunshine In(レット・ザ・サンシャイン・イン)/クレール・ドゥニ(2017)
22:ムーンライト/バリー・ジェンキンズ(2016)
23:マルタの鷹/ジョン・ヒューストン(1941)
24:地獄の黙示録/フランシス・フォード・コッポラ(1979)
25:つぐない/ジョー・ライト(2007)
26:トゥモロー・ワールド/アルフォンソ・キュアロン(2006)
27:ニーチェの馬/タル・ベーラ&フラニツキー・アーグネシュ(2011)
28:仮面/ペルソナ/イングマール・ベルイマン(1966)
29:裁かるるジャンヌ/カール・テオドール・ドライエル(1928)
30:ビール・ストリートの恋人たち/バリー・ジェンキンス(2018)
31:街の灯/チャーリー・チャップリン(1931)
32:プレイタイム/ジャック・タチ(1967)
33:未知との遭遇/スティーヴン・スピルバーグ(1977)
34:MEEK’S CUTOFF(ミークス・カットオフ)/ケリー・ライヒャルト(2010)
35:アメリカン・ハニー/アンドレア・アーノルド(2016)
36:チャイナタウン/ロマン・ポランスキー(1974)
37:エルフ~サンタの国からやってきた~/ジョン・ファヴロー(2003)
38:散歩する惑星/ロイ・アンダーソン(2000)
39:キング・コング/メリアン・C・クーパー&アーネスト・B・シュードサック(1933)
40:第三の男/キャロル・リード(1949)
41:スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師/ティム・バートン(2007)
42:天使の涙/ウォン・カーウァイ(1995)
43:風と共に去りぬ/ヴィクター・フレミング(1939)
44:ゴールド・ディガース36年/バスビー・バークレイ(1935)
45:イントレランス/D・W・グリフィス(1916)
46:トスカーナの贋作/アッバス・キアロスタミ(2010)
47:恋するベーカリー/ナンシー・マイヤーズ(2009)
48:SHAME−シェイム−/スティーヴ・マックィーン(2011)
49:フェリスはある朝突然に/ジョン・ヒューズ(1986)
50:アメリ/ジャン=ピエール・ジュネ(2001)
51:デッドプール/ティム・ミラー(2016)
52:L’avventura(情事)/ミケランジェロ・アントニオーニ(1960)
53:Roma/ローマ/アルフォンソ・キュアソン(2018)
54:パンチドランク ラブ/ポール・トーマス・アンダーソン(2002)
3章:照明&カメラ(ライティング&カメラ)
55:市民ケーン/グレッグ・トーランド(1941)
56:回転/ジャック・クレイトン(1961)
57:ゲームの規則/ジャン・ルノワール(1939)
58:ゴッドファーザー/フランシス・フォード・コッポラ(1972)
59:黒い罠/オーソン・ウェルズ(1958)
60:狩人の夜/チャールズ・ロートン(1955)
61:マッドバウンド 哀しき友情/ディー・リース(2017)
62:Daughters of the Dust(自由への旅立ち)/ジュリー・ダッシュ(1991)
63:少年は残酷な弓を射る/リン・ラムジー(2011)
64:ジェシー・ジェームズの暗殺/アンドリュー・ドミニク(2007)
65:ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー/ロン・ハワード(2018)
66:ゼロ・ダーク・サーティ/キャスリン・ビグロー(2012)
67:トゥ・ザ・ワンダー/テレンス・マリック(2012)
68:ビフォア・サンセット/リチャード・リンクレイター(2004)
69:戦火の馬/スティーヴン・スピルバーグ(2011)
70:レザボア・ドッグス/クエンティン・タランティーノ(1992)
71:ボニーとクライド 俺たちに明日はない/アーサー・ペン(1967)
72:マトリックス/ウォシャウスキー姉妹(1999)
73:ラスト・ショー/ピーター・ボグダノヴィッチ(1971)
74:ロブスター/ヨルゴス・ランティモス(2015)
75:パラノーマル・アクティビティ3/ヘンリー・ジュースト&アリエル・シュルマン(2011)
76:シャイニング/スタンリー・キューブリック(1980)
77:ツリー・オブ・ライフ/テレンス・マリック(2011)
78:バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)/アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ(2014)
79:夫たち、妻たち/ウディ・アレン(1992)
80:サンドラの週末/ジャン・ピエール&リュック・ダルデンヌ(2014)
81:ブレア・ウィッチ・プロジェクト/ダニエル・マイリック&エドゥアルド・サンチェス(1999)
82:潜水服は蝶の夢を見る/ジュリアン・シュナーベル(2007)
83:クローバーフィールド/HAKAISHA/マット・リーヴス(2008)
84:ハードコア/イリヤ・ナイシュラー(2015)
85:大統領の陰謀/アラン・J・パクラ(1976)
86:アンタッチャブル/ブライアン・デ・パルマ(1987)
87:ヘイトフル・エイト/クエンティン・タランティーノ(2015)
88:スコット・ピルグリムVS.邪悪な元カレ軍団/エドガー・ライト(2010)
89:恋は邪魔者/ペイトン・リード(2003)
90:タイムコード/マイク・フィギス(2000)
91:ギャンブラー/ロバート・アルトマン(1971)
92:スター・ウォーズ/フォースの覚醒/J・J・エイブラムス(2015)
93:クイズ・ショウ/ロバート・レッドフォード(1994)
4章:編集(エディティング)
94:ブラック・クランズマン(スパイク・リー)
95:スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望/ジョージ・ルーカス(1977)
96:フィールド・オブ・ドリームス/フィル・アルデン・ロビンソン(1989)
97:アラビアのロレンス/デヴィッド・リーン(1962)
98:2001年宇宙の旅/スタンリー・キューブリック(1968)
99:北北西に進路を取れ/アルフレッド・ヒッチコック(1959)
100:スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還/リチャード・マーカンド(1983)
101:クラウド アトラス/ウォシャウスキー姉妹&トム・ティクヴァ(2012)
102:ダンケルク/クリストファー・ノーラン(2017)
103:勝手にしやがれ/ジャン=リュック・ゴダール(1960)
104:ザ・ロイヤル・テネンバウムズ/ウェス・アンダーソン(2001)
105:メランコリア/ラース・フォン・トリアー(2011)
106:サイコ/アルフレッド・ヒッチコック(1960)
107:007/カジノ・ロワイヤル/マーティン・キャンベル(2006)
108:ワンダーウーマン/パティ・ジェンキンス(2017)
5章:脚本(ライティング)
109:恋人たちの予感/ロブ・ライナー(1989)
110:スパニッシュ・プリズナー/デヴィッド・マメット(1997)
111:戦場にかける橋/デヴィッド・リーン(1957)
112:バリーリンドン/スタンリー・キューブリック(1975)
113:グッドフェローズ/マーティン・スコセッシ(1990)
114:インフォーマント!/スティーブン・ソダーバーグ(2009)
115:めまい/アルフレッド・ヒッチコック(1958)
116:ミリオンダラー・ベイビー/クリント・イーストウッド(2004)
117:プレステージ/クリストファー・ノーラン(2006)
118:自転車泥棒/ヴィットリオ・デ・シーカ(1948)
119:インセプション/クリストファー・ノーラン(2010)
120:ピアノ・レッスン/ジェーン・カンピオン(1993)
121:スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲/アービン・カーシュナー(1980)
122:ロッキー/ジョン・G・アビルドセン(1976)
123:レクイエム・フォー・ドリーム/ダーレン・アロノフスキー(2000)
124:アベンジャーズ/ジョス・ウェドン(2012)
125:ソーシャル・ネットワーク/デヴィッド・フィンチャー(2010)
126:フリーソロ/エリザベス・チャイ・ヴァサルヘリィ&ジミー・チン(2018)



