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ジェームズ・マッギルの物語
名作犯罪ドラマ「ブレイキングバッド」のスピンオフ作品である「ベターコールソウル」を、ついに最終回まで視聴完了。
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以下、今回の感想をば。
ベターコールソウルは、こんな話
ベターコールソウルは、問題を抱えた弁護士ジミーマッギルが、本編であるブレイキングバッドで登場する悪徳弁護士ソウルグッドマンになるまでの物語。
基本的に、犯罪者相手の激ヤバトラブルを乗り越えつつ、ライバル弁護士を罠にはめていき、予期せぬ破滅に導いてドツボにハマっていく。
シーズンが進むにつれて様々なキャラクターが登場し、全員がそれぞれの敵を罠にかけようと裏をかき合うのだが、それぞれの計画の準備や実行までのパートが面白い作品。
シーズン6後半は、こんな感じ
S6前半ラストでは、ラロが来訪してしまい、タイミングの悪いハワードが殺され、ジミーとキムにとって最悪の終わり方をした。
後半では、ラロの計画に巻き込まれた二人が酷い目に遭う物の、ガスの反撃とマイクの隠蔽工作によって、なんとか日常を取り戻すが、決定的な決別が訪れる。
そして、なんと言っても、スピンオフ元である「ブレイキングバッド」との合流を果たし、各話冒頭で時々描かれていたシナモンロール屋で身を隠す現在編が、ようやく始まる。
なので、回想や現在として、ブレイキングバッドのキャラクターが、ちょいちょい登場する。
ファンは、それだけで嬉しい。
ここに来るまで、実に長かったが感動も大きかった。
ウォルター・ホワイトとジェシー・ピンクマンの再登場
クライマックスに向けて話自体も展開していくが、見所と言ったら、やっぱりこの二人。
本編の裏側や、描かれて来なかった隙間、事件後にみんながどうなったか等が簡単に語られたり描かれるのだが、ほんの少しの回想とは言え先生やジェシーが登場するだけでテンションが上がる。
このコンビが、やっぱり大好きなんだよね、みんなさ。
ソウルのその後と、事件の終わり
白黒調の画面で進む現代と、カラーで描かれる過去で進む、ブレイキングバッド後の世界。
ソウルは逃亡生活をしているのに、小金を稼ごうと再び犯罪に手を染めるが、身を亡ぼす切欠は思わぬ所からやってくる。
相変わらず、劇中で計画を立てて犯罪を行っていく描写は面白く、隠れている逃亡犯なのにいらん事をするソウルの姿には、ドキドキが止まらない。
最終的に、劇中終始利用する対象として見てきた老人が切欠で再び追われる身になるのも、皮肉が利いている。
コメディ要素も、しっかり完備
ビル・オークリー弁護士が巻き込まれて酷い目に遭う姿は、シリアスになり過ぎないバランスを取るのに一役買っていて、不憫過ぎて面白かった。
絶対関わっちゃいけないって分かってるのに口車に乗せられるのも良いし、ソウルの自己弁護の切り口の上手さも流石で、戦う相手に「面倒臭い上に厄介そう」と思わせるのが上手すぎる。
エモい演出
逮捕され、無期懲役プラス懲役190年を求刑されそうになるが、いつもの調子で検察と交渉し7年にまで刑期を短縮させる司法取引を引き出す手腕は、口先だけで成功してきたソウルらしい。
そんなソウルが描かれる合間に回想で、マイク、ウォルター、チャック(兄)の3人との回想の中で、タイムマシンを引き合いに出した「変えたい過去」について語られる。
マイクは、悔やむ自らの過去の罪を語る。
ウォルターは、悔やむ過去の過ちを語る。
そしてチャックは、別の道を選んだとしても恥ではないと説く。
こうして、ソウルにとっての重要な人物を通して、ソウルと語る人の人間性を鏡に、ソウルを描くのだが、ここの流れがとても良い。
中でも、ウォルターの「めんどくさい」神経質なキャラクターは、ウザ微笑ましくて、ファンはニンマリ出来る。
それでもって、3人を通して描かれるソウルの持つ人生観や人間性が、笑っちゃうぐらい救いが無いと言うか、しょうもない。
マイクは語る過ちからブレイキングバッドのターニングポイントを自覚し、罪深い道に足を踏み入れたと感じていた。
一線を越えなければ、孫を可愛がるお爺ちゃんとして10年後を見られた筈だと。
ウォルターは、他人の邪魔さえなければ、自分が正しい判断が出来れば、仕方が無くブレイキングバッドする必要が無かったと悔やんだ。
一線を超える原因を他人が作ったと傲慢に考える先生らしい。
ソウルは、二人に比べると小悪党なのだが、根っからの悪人で「あの時の犯罪は、過去に戻れたら怪我をせずに、もっと上手く出来た」と思ってしまう。
みんながブレイキングバッドに転げ落ちていくターニングポイントを悔やむ中で、ソウル(とキム)だけは、根っこの部分で悪として描かれる。
その中でソウルは、悪の自分を自己欺瞞で隠したまま成功を求めた。
対比として、キムは悪の自分を隠し善人になる事を求めた。
そしてクライマックス、キムは悪の自分を認めて善人になろうと行動し、ソウルは悪の自分を認めて、ようやく本当の自分、嘘まみれのソウルで無く、根っからの悪人のジミーになる事が出来た。
7年で済んだかもしれない刑期は、真実の自白によって86年に延びたが、悪人相手に上手くやって来たジミーの刑務所暮らしは、なかなかに馴染んでいる。
ラスト、キムがジミーに面会に来るが、キムは昔の様にルールを破り、ジミーの前でだけ本当の自分でいられる事が描かれる。
かつては弁護士事務所の駐車場で吸っていた二人タバコが、刑務所の面会室に場所を移し、嘘で塗り固めていた二人はお互い本当の自分になり、罪を清算中の二人で1本のタバコを回し吸いし、物語は幕を閉じる。
アクション的な見せ場はラロ戦までだったが、S6後半の現代編は、過去キャラ再登場や罪の総清算と、どちらかと言えばシットリ、ジワジワとしたカタルシスがあり、とっても良かった。
結果的に、ハイゼンベルグ(ウォルター)をソウルとして支えたから事件の被害が大きくなったと自ら認めた事で、小悪党から大悪党に格上げされるわけだが、あの展開は軽くゾクゾクっとする物があって気持ち良い。
罪を認めちゃダメなシーンで「ヤツはワシが育てた」的な、他の場面ではマウントになりかねない自分を大きく見せる様な台詞を言い、それが事実で、それによって本当の自分になるジミーの覚悟が決まった姿は、一種の格好良さがある。
終わりに
これにて、本当にブレイキングバッドシリーズが一区切りしてしまった。
ブレイキングバッドのその後、エルカミーノの後の話が描かれる点で、本作がシリーズの完結編に相応しいだろう。
ブレイキングバッドのスピンオフと言う事で、番外編程度に侮って見始めた所があるが、トータルで見るとブレイキングバッドに至るまでと、ブレイキングバッドのその後を描いている、ブレイキングバッドをより楽しむ為には欠かせない傑作ドラマであり、単体として見ても相当面白かった。
元気な頃のヘクターおじさんとか、マイクがソウルと共に道を踏み外すまでとか、ブレイキングバッドファンには必ず見て欲しい要素満載だ。
キャラ的には、マイクとナチョが超好きだが、ラロとかトゥコとかヘクターおじさんとかカルテル側も敵として魅力的だ。
途中のシーズンで順次放映で最新話待ちの時は多少内容がダレて感じた事もあったが、全話配信している今なら、軌道に乗れば止め時を失うぐらい面白く一気に見れるし、無駄な話は全然無いと分かる。
最高でした。
ネットフリックス入ってるなら、放映順の
- ブレイキングバッド→エルカミーノ→ベターコールソウル
か、時系列順の
- ベターコールソウルのS6の9話まで→ブレイキングバッド→エルカミーノ→ベターコールソウルS6の10話以降
と言う順番で見よう。



