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デル・トロ・ワールドが素晴らしい作品
ネットフリックス配信映画「ギレルモ・デル・トロのピノッキオ」を見たので、ここに感想を残す。
人形を動かして撮影するストップモーションアニメ映画なのだが、15年かけたと言っているだけあって、その出来は凄まじい。
デル・トロ解釈による、ピノッキオの世界
本作は、基本のストーリーラインは、ピノキオまんまである。
なのだが、舞台をムッソリーニ政権下のイタリアにして戦争を絡めたり、あらゆる面でデル・トロ解釈による変更やアレンジが加えられ、全く新しいピノキオに仕上がっている。
あらすじ
時は、ムッソリーニ政権下のイタリア。
木工細工師のゼペットは、息子のカルロと幸せに暮らしていた。
だが、敵国の爆撃機が投下した爆弾が、松ぼっくりに夢中だったカルロのいる教会に直撃し、最愛の息子を失ってしまう。
それから失意のゼペットは、カルロの墓の前で季節が変わり、植えた形見の松ぼっくりが大きくなるまで飲んだくれ泣き叫ぶ日々を送っていた。
ある日、ゼペットはカルロを殺した松ぼっくりが成長した立派な松の木を切り、カルロを生き返らせようと操り人形を作る。
ゼペットを哀れに思った木の精霊がカルロ人形にピノッキオと名付け命を吹き込むと、ピノッキオは幼い子供の様にはしゃぎ回りゼペットを困らせてしまう。
ゼペットはカルロではないピノッキオに失望し家に閉じ込めようとするが、市長は学校に通わせようとする。
登校中に落ち目のサーカス団長のヴォルペ伯爵に目をつけられたピノッキオは攫われるが、サーカスでスターとなる。
ゼペットがピノッキオを連れ戻しに行くが、ヴォルペ伯爵とピノッキオの奪い合いになり、事故でピノッキオが車に轢き殺される。
あの世の門へと運ばれたピノッキオは、木の精霊の姉である死の精霊から、不死身である事を知らされる。
ピノッキオは現世に戻るが、ヴォルペ伯爵に契約を既に結ばれたピノッキオの所有権を取り戻すには、ゼペットは1000万リラを払う必要がある上に、イタリア政府はピノッキオを不死身の兵士として利用しようと目を付けてしまう。
圧倒的ビジュアル
ストップモーションアニメを制作するにあたり、チームは技術開発から行ったと言う。
3Dプリンターの利用や、緻密な人形にシリコンの皮膚をかぶせたり、独特な質感のキャラクター達は、どうやって動かしているのか時に分からなくなるぐらい生き生きと動き回る。
徹底的な写実的でリアリティの高い世界観を描写するにあたり、カメラが実写映画なみに動き回る画は、日常描写からアクションまで終始圧巻だ。
人外デザインが特に素晴らしい
ピノッキオの教育係で、素材の松の木に住んでいるコオロギのクリケット。
ヴォルペ伯爵に依存しているサーカスの猿のスパッツァトゥーラ。
ピノッキオに不死の命を吹き込んだ木の精霊。
あの世の番人をしている木の精霊の姉でグリフォンの様な見た目の死の精霊。
死の精霊の手下である骨のウサギ達。
ゼペットを飲み込んだ巨大な異形のサメ。
そして、無垢な松の木で作られたピノッキオ。
人以外のキャラクターが多く登場するのだが、どのキャラもデザインが良く、個人的には特に精霊の姉妹やあの世のウサギと言った超常的な存在や、サメのデザインが気に入った。
木の精霊初登場時の、目が沢山ある様なデザインが現れる衝撃は、凄く好き。
父と子の象徴達
作品の普遍的なテーマとして、父と子の関係を中心に描いている本作。
登場する父親は子は、
- ゼペットとカルロ
- 市長とキャンドルウィック
- ヴォルペ伯爵とスパッツァトゥーラ
の3組だ。
この3組とピノッキオは関わり、関係に変化をもたらす。
ゼペットはカルロを失った悲しみから、ピノッキオを作り、ピノッキオにカルロの代わりである事を求め苦しめてしまう。
紆余曲折の末、ゼペットはピノッキオの父への愛を知り、失ってやっと、自分の過ちに気付き、あるがままの自分である事をピノッキオに求め、救われる。
ゼペットにとってカルロは完璧だったが、ピノッキオは代替品では無く、もう一人の息子だと受け入れるまでの変化がここで描かれる。
市長と息子のキャンドルウィックが描かれ、熱心な政党支持者である市長は、強く勇敢な息子である事をキャンドルウィックに求め苦しめる。
市長にとっては、強く勇敢である事が重要で、キャンドルウィックは弱く、ピノッキオは不死で無敵の存在だ。
だから、市長はキャンドルウィックを理想の息子にする為に、ピノッキオに物理的に撃ち勝つ事を求める。
しかし市長は、キャンドルウィックに兵士になる変化を求め続けた結果、キャンドルウィックに訓練弾で撃たれる事で、皮肉にもカルロと同じ様に爆弾で無意味に死亡する。
父と子では無いが、ヴォルペ伯爵と猿のスパッツァトゥーラも、ヴォルペ伯爵は思い通りになる理想の子供として猿のスパッツァトゥーラをこき使う。
スパッツァトゥーラは、どん底から救ってくれた恩人として恩義を感じ扱いに不満を漏らさないが、ピノッキオをサーカスで利用し裏方のスパッツァトゥーラより、スターとして大事に扱って見える事に、スパッツァトゥーラは嫉妬してしまう。
言う事を聞かずに破滅に追い込まれたヴォルペ伯爵はピノッキオを焼き殺そうと画策するが、スパッツァトゥーラはヴォルペ伯爵からピノッキオが自分を庇い救ってくれた恩義に報いる為に、ヴォルペ伯爵と共に崖から落ち、ヴォルペ伯爵だけが死亡する。
ピノッキオは、一連の出来事の中で、3組の親子に関わり正しい方へと導く事にある意味で成功している。
セバスチャン・J・クリケットの導き「与えれば、与えられる」
3組の親子をそれぞれ正しい方へと導いたのは、最初の方でピノッキオを導いた気高きコオロギことクリケットのお陰と言って良い。
与えた分与えられる、与えれば得られる。
ピノッキオは、過去に自身の足を焼いたキャンドルウィックに与え、サーカス団に誘い込む切欠を作ったスパッツァトゥーラに与え、ピノッキオを重荷と言ったゼペットに不死を捨ててまで与え、救ってきた。
だから木の精霊はクリケットの願いを叶える事が出来たし、クリケットはピノッキオにラストチャンスを与える事が出来た。
木のままのピノッキオ
ゼペットがピノッキオをカルロの代替品では無く、そのまま一人の息子として認めたので、オマケで人間にする様な事は無く、人形のまま、あるがまま不死性だけ失うピノッキオ。
これは、リアリティを徹底的に重視する監督らしい描写に思えたし、一貫性があってとても良い解釈だと感じた。
ゼペットは人間である事にこだわっていないので、ピノッキオのままで良いのは、当然と言える。
切なくも暖かいエピローグとエンディング
最後、みんな幸せに暮らしましたと言う、理想的なハッピーエンド。
それも、みんなが幸せな人生を全うして亡くなり、ピノッキオだけが残されると言う終わりには、ここまで見てきたらジーンとせざるを得ない余韻がある。
更に、死後の世界を描く事で、切なさが晴れる仕掛けも素敵だ。
「手掘りの映画、その舞台裏」までセット
本編視聴後は、メイキングやインタビュー映像満載の特典映像も忘れず見よう。
創作者なら刺激を受けるし、そうで無くても興味深く面白い。
終わりに
ピノキオと言う、有名過ぎる作品のミュージカル映画だが、メイキングも含め非常に楽しめた。
ミュージカルパートは少なめなので、ミュージカルが苦手でも、普通に楽しめると思う。
アクションシーンで写実観が急に無くなり、コミカルなタッチになるのは、ノリの変化に戸惑ったが、猿の尻尾スクリューとか、ピノッキオの滝登りとか、悪ノリも楽しい。
ムッソリーニの扱い悪いのも笑える。
ああ、あと、最初、4~6歳精神年齢設定のピノッキオが制御不能キッズムーブでゼペットを困らせまくる描写に、楽しめるのか不安になったが、少し見ていくと非常識なりに良い子へと育っていくので安心して見て欲しい。
余談だけど、何気に英語版音声の声優が豪華ね。
ケイト・ブランシェットとか、ユアン・マクレガーとか。



