目次
望まれて生まれてきた”かなり凄い本”
凄い本が出てしまった。
帯にある美術解剖学者の加藤公太氏による推薦文
「アーティストに必携の書 これ以上の詳細な頭頚部の本はこの先しばらく出ないと思います 史上初にして最先端!」
の煽り文句に偽り無し。
頭頚部(頭から肩ぐらいまで)を、この上なく分かりやすく徹底解剖、徹底比較、徹底解説した、アーティストのレベルを上に引き上げる手掛かりとなるのが、この本だ。
スカルプターのための美術解剖学 3 頭頸部編 – Form of the Head and Neck日本語版
アルディス・ザリンス (著), 加藤 諒 (編集)
「スカルプターのための美術解剖学 3 頭頸部編」は、あらゆるビジュアルアーティスト必携の一冊です!
うすうすお気付きの方もいるかもしれませんが、皮膚の下の筋肉は、人の顔のフォルムとはほとんど関係ありません。顔の筋肉は、最終的な見た目を決める要素の1つにすぎないのです。本書では、頭頚部のフォルムを図を使って紹介しながら、見た目とアナトミー(解剖学)の関係について掘り下げます。
アートの真の自由を謳歌するには、若い白人男性の無表情を描けるだけでは足りません。ミケランジェロのダビデ像は確かに傑作ですが、それを参考にできないケースが多々あるからです。さらに、成功へのカギは、フォルムを再現することではなく、フォルムとその構成を理解することにあります。それができれば、創造的自由は驚くほど広がります。
顔には、たいてい何らかの動きがあります。感情でも変化しますし、年齢、民族、性別、体型、ちょっとした身体構造など、多くの要素が顔の見た目に影響します。
「スカルプターのための美術解剖学 3 頭頸部編」では、これらのカテゴリーに分けて、頭頚部の複雑な部位を分析します。口、目、耳などの各部位を概形に簡略化してから、細かいリアルな形状に少しずつ再構築していきます。私たちの書籍に欠かせないのは、3Dモデル、写真、カラーコーディングなどの視覚的な画像情報ですが、本書も例外ではありません。文字の使用を最低限に抑えているため、直観的に読み進められる、とても理解しやすい本になっています。
著者について
アルディス・ザリンス(Uldis Zarins)は、ラトビア芸術アカデミーで解剖学を教えています。また、昔ながらの彫刻家として25年以上活動し、受賞歴もあります。アルディスは、長年にわたり、アーティストを目指す生徒向けの総合的な視覚解剖学の本を探してきました。しかし、これといった本が見つからなかったことから、信頼性の高いファレンス付きの本を自ら執筆することを決意しました。この作業が予想以上に大掛かりなものとなり、とうとうシリーズ3冊目に突入しました。彼の著書には「スカルプターのための美術解剖学」と「スカルプターのための美術解剖学 2 表情編」(共にボーンデジタル刊)もあります。
- 出版社 : ボーンデジタル
- 発売日 : 2023/3/30
- 単行本 : 224ページ
- ISBN-10 : 4862465498
- ISBN-13 : 978-4862465498
- 寸法 : 28 x 21.6 x 2 cm
書籍目次
- 頭部……8
- 目……26
- 口……50
- 耳……62
- 鼻……68
- 顔の脂肪……78
- 老化……82
- 頭部の比率……90
- 首……98
- フォトグラメトリースキャンと頭頚部のフォルムの分析……176
- 索引……220
多くの支持を集め、早くも第三弾
FacebookのAnatomy for Sculptorsと言うグループが出来て、僅か1年で5万人のコミュニティへと成長した。
当時は「ゴットフリート・パメスの美術解剖学」こそあったが、今ほど多種多様な美術解剖学の良書は無かった時代。
文字ばかりだったり分かりにくいハズレ本に辛惨を味合わされた創作者は数知れず、誰もが誰にでも分かる美術解剖学の手引書を求めていた。
それこそ、失読症でも、ビジュアルによって何とかなるレベルの物を。
2013年、アルディス・ザリンスはキックスターターでクラウドファンディングのキャンペーンを仲間達の後押しから始め、コミュニティの後押しにより「スカルプターのための美術解剖学」の第一弾が発売に漕ぎつけた。
1000点を超える図版と、その分かりやすさから好評を博した第一弾は成功を収め、第二弾では表情にフォーカスして美術解剖学的に人の表情を同じように解説して見せ、再び好評を博した。
そして今回は、その第三弾となり、テーマは頭頚部となる。
頭頚部編
頭頚部編と聞いて、購買意欲がそそられる人が、どの程度いるだろうか?
多分「わぁっ、ちょうど頭頚部の事知りたかった!」なんて人の方が稀だろう。
そこで、本書の中身を、もう少し詳しく解説する。
頭頚部編では、目次の通り頭頚部のパーツ毎に対する解説と、頭頚部の統合的な解説がされているのだが、その各テーマ毎の掘り下げ方が、本当に凄い。
例えば、目の掘り下げだ。

目の部位や正しい形状への理解等が見本のページを見ると見て取れる。
だが、こんなのは、極一部でしかない。
くぼみ目・奥二重・二重・一重の差や、眉の男女差、垂れ目から釣り目までの目尻の傾きの差、アジア系とヨーロッパ系の瞼のしわの差、等々と言った風に、パーツの形状で更に深掘りし、比較しつつ、その差が構造としてどうやって作られているかや、形状のパターン等にまで触れられている。
目だけで24ページも使われているのだ。
それが、頭部や目だけでなく、頭頚部の全てに対して主要なパーツ単位で多彩な画像付きで解説されている事で、本書が頭頚部だけで1冊と言う分割的なまとめ方しか出来なかった事も分かってくる。

圧倒的情報量と分かりやすさ
本書は、とにかく多彩な図版で解説をしていて、同時に「文字を可能な限り少なくしよう、見やすくしよう」と言う姿勢も見て取れる。
それによって、視覚的な情報量と選りすぐられた文字情報による解説は、非常に情報量が多いのだが、同時に分かりやすさも備わっている。
文章のブロックを見るのも嫌と言う人にとっては、ありがたい姿勢の本と言えるだろう。
また、各パーツをシンプルな形状で最初に理解させ、徐々にディティールアップさせて理解を深める様にパーツによっては書かれているので、シンプルに形を取る事が苦手とか、考え方が分かっていない人には、その点でも役立つ筈だ。
比較出来そうなのに、配置や向きを変えるの?
本書の数少ない気になる部分は、次のページにも同じ向きで別バージョンの資料がある様なシーンでも、配置を統一しない所だ。
首の傾きとフォトスキャングラメトリーのページを見ると分かるが、配置ルールを統一可能な場面でコロコロ変わり、規則性が分かり辛くなるページがある。
どう考えても、前頁と同じ規則配置が可能なら統一した方が使い勝手が良いので、ここだけは見ていて「どうしたの?」と言う気持ちになった。
どんな人が、幸せになれる?
本書は、頭頚部を絵で立体で、何かしらの形で形作る全ての人の役に立つ。
その中でも、フォトリアルに興味がある人や、年齢・人種・性別毎の描き分けや作り分けに本気で取り組むつもりの人からすると、有益かつ有用な情報の宝庫と言える。
逆に、既に使っている画一で記号的な創作をしている人からすると、頭頚部への理解は深まるかもしれないが、創作に取り込める情報は、多少減るかもしれない。
それでも、例えば、脂肪の付き方やシワの出来方をロジカルに理解するなんて事は、記号的な創作に使える記号への解像度を上げ、大きなレベルアップの助けになるのは間違いない。
本としての評価は?
本体価格7,000円、定価7,700円と、大型書籍の専門書って感じのお値段だ。
正直、こう言う本を買い慣れて無いと値段にビビるかもしれないが、内容の有用さと大量の図版とオールカラーによるリッチな作りを考えれば値段相応の本と言える。
各自で立ち読みしたりして、内容が気に入れば学びが大いに捗るだろうし、自分の作品に上手く取り入れれば、かなり幸せになれるだろう。
創作初心者向けの本では無いので、その点は注意が必要だが、必要としている人は確実にいる良い本なので、興味が湧いたら本書の中を覗いてみて欲しい。
このレビューが、本書の購入する際の参考になれば嬉しい限りである。
本書発行元リンク:株式会社ボーンデジタル
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