出来は、まあまあ
スチームパンク小説を原作とした、ネットフリックス配信アニメ「リヴァイアサン」を見たので、感想を。
全12話で小説全3巻分を駆け抜けた感じか?
出来は、本当にまあまあって感じ。
リヴァイアサンとは?
原作は、スコット・ウエスターフェルド著作「リヴァイアサン―クジラと蒸気機関―」「ベヒモス―クラーケンと潜水艦―」「ゴリアテ―ロリスと電磁兵器―」の3部作で構成されているスチームパンク小説である。



時代は第一次世界大戦が始まる頃。
ディーゼル駆動のクランカーと呼ばれるメカの発達によって歩行ロボットが実用一般化し、同時期にダーウィン主義者達による遺伝子組み換え生物の兵器化が進んだ、現実とは少し異なる世界を舞台に、それぞれ思惑を持った勢力や登場人物達が、時に実際の歴史の流れや出来事とリンクしながら戦争と向き合っていく事になる。
主人公はオーストリア=ハンガリー帝国のホーエンベルク公爵アレクサンダル(アレクサンダル・フォン・ホーエンベルク)こと通称アレクと、平民の少女だが飛空士になりたくて男装して軍隊に紛れ込んだディラン(デリン)・シャープの二人を中心に展開していく。
身分も立場も違う二人が戦乱の中で次々と苦難にぶつかりながら、最初は緊張状態だった関係が徐々に親友の様になり、(少なくともアニメ版では)恋心を抱く様になるまでを描いていく。
なのだが、物語の主題は友情や恋愛よりも、主人公達の人間的な成長や戦争における各勢力の駆け引きに重きを置かれている。
アニメの出来は良いが、地味
本作は、とにかく地味だ。
スチームパンク物としては、かなり惹かれる設定や描写こそあるが、スチームパンク世界での第一次世界大戦を絶妙なリアリティレベルで描いている事で、主人公達は常に無力で振り回されるばかりで、巨大ロボットも渋く、巨大生物兵器も渋く、絵面も動きもずっと地味。
男装している少女デリンも、着替え等で時々女の子を出す事こそあるが、アレクが性別に気付くまでが結構後半で、ラストの結ばれる二人の描写も「ちょっと強引でない?」と言う感じに、メインキャラなのにファイナルファンタジーを感じる部分があるぐらいヒロイン売りをしていない。
ある意味でリアリティがあるのだが、派手さや快感に繋がる描写が本当に少なく、終始地味な印象を受けた。
大きな流れ、各人の思惑のぶつかり合いが最後まで
本作は、倒すべき敵や黒幕は不在で、スチームパンク世界での第一次世界大戦の流れに翻弄される話が基本は延々と続く事になる。
一応、クライマックスでツングースカの大爆発を引き起こしたのが実はニコラ・テスラの発明品「ゴリアテ」で、ニコラ・テスラがゴリアテを使って核の傘的な戦争抑止を行おうとするが、ドイツがゴリアテとニコラ・テスラを確保しようとした事でベルリンが第二のツングースカとなるのを止めつつドイツ軍の巨大要塞も共に止める的な盛り上がりがあるが、このシーンが盛り上がりそうでそこまで盛り上がらない。
主人公達の協力でイギリスのリヴァイアサン号がゴリアテを止め、ドイツの巨大要塞をアメリカ海軍が止め、と言うオチで「アメリカが普通に止めちゃったよ……」と、物語のカタルシスの半分が空気が抜けていく風船みたいに萎んでいく。
ニコラ・テスラはベルリンに一発ゴリアテお見舞いすりゃゴリアテの傘の完成だろ的な思考で、少数の被害で以降の戦争被害を劇的に減らせると、トロッコ問題ぐらいのノリでゴリアテ発射を決めるし、主人公達は「なんか嫌だ」とゴリアテを破壊し、結果としてアメリカが戦争に参戦して現実で言う第二次世界大戦的な流れに続きそうな不穏さを残して物語は幕を閉じる。
主人公達の努力は、確かに敵対しているドイツの、ベルリンに住む人々を救い、英雄的ではある。
なのだが、それが本当に正しかったのかは、誰にも分からないのだ。
テスラの言い分を間違っていると、それが完全オリジナルの架空戦記なら言えるのだが、第一次世界大戦の流れを汲む第二次世界大戦の流れの中では、下手に知っているせいで分からないのだ。
史実の第二次世界大戦の死者は4千万人とか言われている。
テスラの計画では、恐らく200~400万人の罪なき人を見せしめにする事で戦争を終わらせようとしているので、それは明らかに悪なのだが、この作品の流れからすると被害を20~10分の1に抑えられると分かっているわけだ。
この、ガンダムジークアクスにてシャリア・ブルがシャアに対して「お前はいずれ未来に絶望して隕石を地球に落とすからここで死ね!」的な事をやった時に「せやな」と全ガンダムファンが思ったみたいなのを、体感出来るわけだ。
シャアの場合は政治から離れる事でなんとなく許された。
だが、テスラの場合は、なんか逃亡したし、続編あったらこいつ広島と長崎でやる気やろって感じがどうしても感じてしまう。
広島と長崎の代わりにベルリンに犠牲になって欲しいとか、そう言うわけではない。
核(ゴリアテ)の傘を機能させないと世界が平和にならないと言う対立陣営の言い分に対し、主人公達に何らかの冴えた案、答え、せめて言い返しを、ちゃんとして欲しかったと言う感覚があるのだ。
ゴリアテ壊してベルリンは救った、テスラとゴリアテの奪取に来たドイツ軍はアメリカ軍が倒した、戦争は止められないし、テスラは健在でアメリカ参戦って、主人公達のした事はスチームパンクの世界において現実の世界と同じルートに世界を分岐させた様な物なのでは?
そう考えると、主人公達は成長した物の、戦争に対しては無力のままで、物語としてまだ道半ばとしか思えない終わりに不完全燃焼感が残ってしまう。
クロップ、意味あった?
本作の優しさ成分を担当していたクロップ。
アニメだと、驚くぐらい分かりやすい死亡フラグを立てて、なんだか意味の薄い死に様で、見てて悲しい気持ちに。
主人公を成長させる上ではあっても良かった事はわかるが、それにしたってやり方があるでしょうよ。
ヴォルガー伯爵
意地悪な味方の様でいて独自の目的で動いていて主人公と実は行動がズレ続けていたヴォルガ―さん。
甘ったれな主人公アレクにきつくあたって自覚を促す作戦が上手く行かず、最終的にキレちゃうって言う悲しい展開だが、その場その場では最適解を可能な限り選ぼうと動いていて、公爵に仕えている重臣としては筋が通っており、平時は頼れるし見ていて嫌な印象は受けなかった。
生物計算機
面白い設定だけど、哺乳類が卵で生まれたりパクられたり使いづらそうだったりで、設定として劇中に溶け込み切っていないか、アニメ化する際に作者のイメージを映像化出来て無い感があって、もうちょっとどうにか。
架空第一次世界大戦としては〇
本作は地味だし、物語としての仕掛けも大して面白く無い。
なのだが、架空のスチームパンク世界による第一次世界大戦物として見ると、そこは刺さる人には刺さるだろう。
ロボットと生物兵器が実用化した世界での第一次世界大戦で、ダーウィンやテスラと言った史実の偉人が活躍すると言う味は、それだけで価値がある風に思えた。
終わりに
ああ、あとタイトルね。
劇中で拠点として長らく使うリヴァイアサンと言う鯨型生物兵器の軍事飛行船がメインタイトルとなっているが、全体で見るとそこまで象徴的と言うわけではなく「なんでリヴァイアサン?」と言う気持ちになる。
まあ、とにかく地味だが、スチームパンク第一次世界大戦と言うワードに興味がある人は、もしかしたら楽しめるかも、と言う感じ。
スチームパンクジャンルなのだが、実はディーゼル(軽油)とかバイオの技術が突き抜けている設定なので、厳密には純粋なスチームパンクでも無いのかもしれない。



