目次
一歩深く
物語が「整っている」のに「面白くならない」場合、その多くは技術不足ではなく、問いの不足に原因があります。
分かっている創作者は、創作している作品を見る際、無意識のうちに一連の質問を投げかけ、その答えの強度で物語の価値を測っています。
本記事では、実際に行っている思考を分解し、創作者が一人で使えるセルフ質問・思考プロセス・模範解答のセットとして整理する模索を行います。
プロット作成・中盤の失速・ラストの弱さ、等に悩む段階で、そのままチェックリストとして使える構成です。
1. 主人公は「何を失う物語」か?
セルフ質問
- この物語で、主人公は最終的に何を失うのか?
- それは主人公にとって、始まりの時点でどれほど大切なものか?
- それを失わずに済むルートは、本当に存在しないか?
思考プロセス
面白い物語の多くは「獲得の物語」ではなく、喪失を受け入れる物語です。
少なくとも、その要素があった方が物語は面白くなります。
最初から要らないものを失っても意味がありません。
なのでまず、「それを失ったら人生観が変わるか?」という一点で判断します。
重要なのは、
- 物理的な喪失(地位・金・仲間)
- 心理的な喪失(信念・期待・甘え)
- 関係性の喪失(信頼・依存・役割)
のいずれか、もしくは複合であるかどうかです。
悪い回答例
主人公は仲間を失い、成長する。
主人公は平穏を失う。
なぜ悪いか
- なぜ失うのかが書かれていない
- 主人公の選択が原因になっていない
- 「成長」という結果が抽象的で、物語の具体的変化が見えない
- 平穏は状況であって、価値観・信念・選択では無いし一時的に乱れ戻る。
模範解答例
主人公は、他者に理解されなくても「正しいはずだ」と信じていた価値観を失う。
その代わり、他者と共に不完全な選択をする覚悟を得る。
この解答が機能する理由は、価値観の喪失がそのまま物語全体のテーマと結びつく余地があるからです。
そして喪失に不可逆性があり、失う事で以前の状態には簡単には戻れない事、つまり決定的な変化を伴う事に加え、それを踏まえた新しい価値観を手に入れる様に設計されている事も重要です。
不可逆性が無い、弱い喪失だと、喪失を受け入れる事でその穴を埋める様に手に入る物の余地が無くなったり狭くなります。
それは物語が必要とする喪失としては弱すぎます。
人格の根幹にある自己定義を壊すぐらいが良いでしょう。
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