既存作品分析

【考察】なぜ「葬送のフリーレン」は静かなのに面白いのか

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スクリプトドクター視点で構造を診断


導入

この作品はしばしば「雰囲気良い」「なんか余韻がある」作品として語られます。

これ、脚本設計の観点から見ると、本作の魅力は情緒だけではなく、それを生み出す構造にこそ妙があります。

本記事では、物語構造・キャラクターの機能・脚本設計、等の観点から、この作品がどの様に成立しているのかを考察していきます。

記事はnoteの方にもあるので、どうぞ。

https://note.com/monogatarukoubou/n/n4c0881648290?sub_rt=share_pb

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第1章:表面上の物語目的

物語の表層を見ると、本作は典型的な旅物語です。

・魔王討伐後の世界を巡る旅
・仲間との足跡を辿る行動
・新しい出会いと小さな事件

ここだけ見れば、
戦後日談型のファンタジーと分類できます。

つまり外形上は

「旅を体験する物語」

に見えます。

しかし実際の駆動力は、実は、ここにメインがありません。


第2章:真の物語目的

本作の構造的な目的は、未来への達成や現在の選択ではなく、過去の理解にこそあります。

通常の物語では、

・敵を倒す
・夢を叶える
・世界を変える

といった、現在や未来を志向し、達成が軸になります。

一方この作品では、

・仲間の感情を理解する
・時間の意味を再認識する
・過去の選択を再解釈する

といった、理解そのものがゴールになっています。

つまり本作は旅を通して目的に向かい進む物語ではなく、旅を通して過去を理解する物語となっているわけです。

ここが最大の設計上の特徴です。


第3章:感情が動く構造

本作が静かなのに感情を動かせる理由は、現在の行動が過去を更新する構造にあります。

具体的には次の因果が常に働いています。

・現在の出来事が過去の記憶を呼び起こす
・過去の記憶が現在の選択を変える
・選択が過去の意味を再定義する

つまり、過去が物語の燃料になっているのです。

通常、一般的な物語では、

出来事 → 変化 → 結果

みたいな、直線的因果ですが、

本作では

現在(出来事) → 過去(回想)→ 変化(再理解) → 結果

という循環因果になっています。

この、一手間ある循環があるため、一見すると戦闘が無くても、事件が小さくても、感情の変化が発生し続けます。

そして、この感情変化が普遍的なので、多くの人に刺さるわけです。


第4章:なぜ退屈にならないのか

静かな作品が退屈になる原因は、

・目的が曖昧
・変化が小さい
・緊張が弱い

等、あります。

しかし本作はこの弱点を、先に触れた独自構造で回避しています。

まず、物語の変化を外部ではなく、内部に置いていると言えます。

外的事件が小さくても、

・理解が進む
・認識が変わる
・意味が更新される

この内的変化が連続して起きるため、読者の感情は更新され続けます。

つまり本作は、事件ではなく解釈が進む物語なわけです。

もう会えない大事な人を、旅先で出来事を介して再会していく事の疑似体験は、上記した退屈の原因を十分潰し得ます。


結論:この作品の正体

本作は世間一般で、しばしば「雰囲気作品」と呼ばれますが、雰囲気だけの作品ではありません。

この作品は、ただの旅物語でも回想譚でもなく、旅と回想を通して故人への理解をテーマにしています。

静かなのに面白い理由は、感情が現在の出来事で自然に生まれるからではなく、感情が生まれる因果を構造的に配置しているからと言えます。

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