目次
因果関係を見誤ると、人は簡単に騙される
「アイスクリームの売上が増えると、溺死者数が増える」
こう聞くと、一瞬だけ「アイスは危険なのか?」という錯覚が生まれる。
だが実際には、多くの場合、
「暑くなる」
という第三要因が両方を増やしている。
- 暑い → アイスが売れる
- 暑い → 海や川へ行く人が増える → 溺死増加
つまり、
相関関係 ≠ 因果関係
という話である。
これは統計学だけの話ではない。
SNS、政治、マーケティング、炎上、陰謀論、人間関係、創作論にまで大量に存在する。
今回は、有名な「アイスと溺死」型の誤認を12個まとめる。
1. アイスが売れると溺死者が増える
観測
- 夏にアイス売上増加
- 夏に溺死者増加
実際の因果
共通原因は「気温上昇」。
- 気温↑ → 冷たい物需要↑
- 気温↑ → 水辺利用↑
アイスが人を溺れさせている訳ではない。
これは「第三変数問題」の代表例。
2. 消防士が多いほど火災被害が大きい
観測
大火災ほど消防士が大量投入される。
そのため統計だけ見ると、
- 消防士数↑
- 被害額↑
という相関が出る。
実際の因果
逆。
- 火災規模↑ → 消防士投入↑
- 火災規模↑ → 被害額↑
消防士が被害を増やしている訳ではない。
これは「逆因果」と「共通原因」が混ざる典型。
3. 病院に行く人ほど死亡率が高い
観測
病院利用者は健康な人より死亡率が高い。
実際の因果
当然ながら、
- 重病人ほど病院へ行く
からである。
病院が人を弱らせている訳ではない。
ただしここで厄介なのは、
「院内感染」や「医療事故」など、本当に一部因果も混ざる事。
つまり現実では、
- 完全な無関係
ではなく - 複数因果が混在
している事も多い。
4. 警察が増えると犯罪が増える
観測
犯罪多発地域ほど警察配置が多い。
実際の因果
普通は、
- 犯罪多発 → 警察増員
である。
しかし政治的議論では、これが逆転して語られる事がある。
さらに厄介なのは、
- 警察増加で「検挙件数」が増える
ため、統計上さらに犯罪増加っぽく見える場合もある。
余談、地域の警察組織が腐敗していると自警、自衛、探偵業、等が伸びるなんて話があったり。
警察の質でも変わってくる事はあるかもしれない。
5. 靴のサイズが大きいほど学力が高い
観測
小学生を調べると、靴サイズが大きい子ほど学力が高い傾向が出る事がある。
実際の因果
共通要因は「年齢」。
- 年齢↑ → 足が大きい
- 年齢↑ → 学習量増加
靴サイズが知能を上げている訳ではない。
これは「隠れ変数」の分かりやすい例。
6. オーガニック食品を食べる人は長生き
観測
オーガニック志向層は平均寿命が高い傾向。
実際の因果
ここでは生活全体が絡む。
- 所得が高い
- 健康意識が高い
- 喫煙率低い
- 運動習慣あり
- 定期検診を受ける
など大量の要因が混ざる。
つまり、
「オーガニックだから長寿」
とは単純化できない。
7. ゲームをする子は成績が悪い
観測
ゲーム時間と成績に負の相関が出る事がある。
実際の因果
可能性として、
- 元々勉強嫌い
- 家庭環境
- 睡眠不足
- 自己管理能力
- ストレス逃避
など複数が絡む。
しかも研究によっては、
- 少量ゲームは認知能力改善
- 社交性向上
- 英語接触増加
など逆方向結果もある。
つまり、
「ゲーム=悪」
と単純因果化する事は出来ない。
8. SNS利用者ほど不幸
観測
SNS長時間利用者は抑うつ傾向が高いという研究がある。
実際の因果
可能性は複数。
- SNSが不安を増やす
- 不安な人ほどSNSへ逃避
- 孤独な人ほど使用増加
- 若年層ほど利用多い
- 睡眠破壊
つまり単方向ではない。
しかもアルゴリズムや利用方法で結果が変わる。
9. コーヒーを飲む人は死亡率が高い
観測
昔の研究ではそう見えた時期がある。
実際の因果
当時、コーヒー愛飲層には、
- 喫煙者
- 夜勤労働者
- ストレス職
が多かった。
つまりコーヒー自体ではなく、周辺属性が混ざっていた。
後の調整研究では、むしろ適量コーヒーは健康寄与の可能性も示された。
10. 「景気対策した後に景気が悪化した」
観測
政府介入後に経済悪化。
すると、
「対策が経済を壊した」
と言われる事がある。
実際の因果
多くの場合、
- 景気悪化し始めたから対策した
である。
つまり、
- 不況 → 対策
- 不況 → 失業増
を見ている。
しかも経済は時間差が大きく、
効果測定が非常に難しい。
このため経済議論は「相関誤認」の巨大戦場になりやすい。
11. 酒を少量飲むと、飲まないより長生きする
飲酒と死亡率の関係は、非常に面白い。
なぜ少量飲む人の方が、全く飲まない人より死亡率が低いのか?
それは、飲まない人の中には、既に身体を壊して飲めない人も含まれている為だ。
実際は、酒は身体に基本的に悪く、飲まなくて良いなら飲まない方が健康に良い事が分かっている。
12. 戦闘機の生還機体ダメージ箇所の分布
戦闘機が帰還した際、どこにダメージを受けているかの統計データが取られた。
どこにダメージを受けやすいか、の視覚化であったが、実際に分かったのは、どこにダメージを受けても生還可能かであった。
つまり、データに無い箇所にダメージを受けた機体は、生還出来ずに墜落したからデータを取れなかったわけだ。
なぜ人は因果を誤認するのか
理由は単純で、人間の脳は「物語化装置」だから。
人は、
- Aの後にBが起きる
↓ - Aが原因だ
と認識しやすい。
これは進化的には合理性もあった。
草むらが揺れた後に仲間が死んだなら、
- 「草むら=危険」
と誤認した方が生存率が高くなる可能性がある。
つまり人類は、
「因果を過剰検出する脳」
を持っている。
特に危険な領域
相関誤認は特に以下で大量発生する。
- 健康法
- 投資
- 教育論
- 子育て
- 政治
- 陰謀論
- SNS炎上
- マーケティング
- 成功哲学
「成功者は朝4時起き」みたいな話も典型だろう。
実際には、
- 成功者の一部が朝型
なだけかもしれない。
高い財布を買えば、財布に相応しい稼ぎを持てるなんて事は、ある筈が無い。
とは言え、こう言った話を人が好むのも事実だ。
風水とか占星術、タロット等も、この積み重ねが関わっている部分が少なからずあるだろう。
厄年、中年の危機、そう言った物を調べてみると、実際に遭遇した人は少なく、遭遇した人が「厄年だ」とか「これが中年の危機か」と結び付けているだけに過ぎない事は多い。
最後に
「関係がある」ことと、「原因である」ことは違う。
しかし人間は、この二つを猛烈に混同する。
そして厄介なのは、
世の中の多くは完全な無関係でもない事、部分的に関係がある場合だ。
- 少し因果あり
- 少し相関あり
- 少し偶然
- 少し第三要因
これらが混ざる。
だから本当に難しい。
複雑な事に対し、単純で分かりやすい説明ほど危険なのは、間違い無い。
これは、統計だけでなく、世の中のほぼすべてに通じる。
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