創作論

【創作論】「非日常」状況を「日常」的に変える10の演出テンプレート。プロがよく使う日常化ハック

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創作では、戦争、殺人、魔法、災害、恋愛、セックス、怪物など、多くの人にとって普通なら非日常的な出来事を描く機会がたくさんあります。

しかし、作品によってはそれらが妙に生活感を帯びて見えることがあります。

理由は簡単です。

出来事を描いているのではなく、それに「慣れた人間」を描いているからです。

読者は出来事そのものよりも、「その出来事に対する登場人物の反応」から、それが日常なのか非日常なのかを判断しています。

今回は、そんな非日常を日常として見せるための演出テンプレを10個紹介します。


① 雑談を始める

もっとも簡単で効果が高い方法です。

  • 戦闘中。
  • 手術中。
  • 死体処理中。
  • 魔物退治中。

本来なら緊張する状況なのに、

  • 「今日の昼どうする?」
  • 「そういえば昨日さ」

など、全然関係ない話を始めます。

人は慣れている仕事ほど、別のことを考えながらできます。

慣れている事は、オートで身体が動かせる部分が大きく、余裕を別に割り当てられるのです。

つまり雑談は、破綻の無いマルチタスクによって描く、余裕の証拠の一例と言えます。


② 面倒くさがる

初心者は目の前の出来事そのものに圧倒されます。

どうにか処理しようとするだけで必死です。

しかし慣れた人は、違います。

  • 「またこれか」
  • 「今日は当たりが悪いな」
  • 「帰るの遅くなるじゃん」
  • 「面倒なのが来た」

出来事そのものではなく、対処が可能か、対処をどうするかは決まっているので、工程や後始末の方を気にします。


③ 手順が省略される

初心者は一つずつ確認します。

当然、ベテランは違います。

例えば、

  • 修理をしていて相棒に「あれ、とって」で、状況から阿吽の呼吸で欲しい工具が即座に手渡される。
  • 魔法陣なんて、描かないし、詠唱も破棄しちゃう。
  • 武器を自然に持ち替える。

熟練とは、省略できる説明や準備をしないこと、でもあります。


④ 段取りの話しかしない

ベテランは、危険は対処可能なので、効率の方を気にします。

  • 「後ろのビルに二人、右後ろから三人、舐められた物だ」
  • 「先に東側から片付けよう」
  • 「昼までに終わらせたい」
  • 「その順番だと二度手間だな」

伴う危険は変わらないのに、乗り超えられる事に確信があるので、作業効率が優先される事で、日常業務らしさが一気に出ます。


⑤ トラブルへの対策が最初から存在する

慣れている人ほど、失敗やアクシデントを前提に準備しています。

  • 予備の武器。
  • 予備の薬。
  • 避難経路。
  • 非常食。
  • バックアップ。

つまり、失敗そのものが想定内です。

これだけで、修羅場に日常感が生まれます。


⑥ 専門用語や略語を使う

ドラゴンが現れたら?

「ドラゴンが来た!」ではなく、

  • 「二級飛竜か」
  • 「西方に多いやつか」
  • 「成体にしては小さい。巣立ち直後か?」
  • 「発情期は危険だ」

経験者ほど、具体的ですが、だからと言って長い説明をしません。

必要な分類だけで通じます。

その世界の専門家によって蓄積された知識を感じさせ、それが日常と言う演出になります。


⑦ 感情よりノウハウが先に出る

初心者は、「怖っ」と、新しい事を始めるとなります。

危険なら、尚更です。

しかし慣れている人は、余裕の分、知っている人ならとるお約束の反応的な対処行動で示せます。

  • 盾を構える
  • 一目散に距離を取る

経験則が出て、恐怖より処理方法が先に浮かび、被害を最小限に抑えたり、効率的に行動が可能になる様に先回りします。


⑧ 他人への教育になる

日常になっている人は、新人に対して教えられます。

周囲にノウハウ共有をしたりする事で、教育的な場面で無くても周囲に教育が出来ます。

  • 「風下に回るな」
  • 「逆鱗は狙うな」
  • 「血を浴びるな」

そうすると、初心者で出る筈の被害を抑えつつ、効率的に対処が出来て、対処法を知っている事は日常感を出します。


⑨ 道具が生活用品になる

初心者は、道具を用途通りに使います。

武器を武器として、みたいにです。

熟練者は、

  • 椅子代わり。
  • 杖代わり。
  • 荷物運び。
  • 栓抜き。

など、本来以外の用途でも使います。

日用品になった時、そこに生活感が生まれます。

剣に荷物を括りつけて肩に担ぐみたいな感じです。


⑩ 別の問題の方を気にする

非日常では、出来事そのものが最大の問題です。

日常になると、別のことの方が重大になります。

例えばドラゴン討伐なら、

  • 「返り血で服が駄目になる」
  • 「宿に戻る前に洗わないと」
  • 「革鎧が臭くなる」
  • 「討伐証明書を無くした」

問題がドラゴンの脅威ではなく、その周辺で起きる生活の中の出来事になります。

ここまで来ると、ドラゴン退治は完全に日常です。


10個に共通する本質

ここまで紹介したテンプレートは違うように見えて、実は共通しています。

それは、出来事の問題から、意識が離れていることです。

初心者は出来事の問題そのものしか、なかなか見えません。

しかし経験者は、出来事の周囲を見ています。

  • 会話。
  • 段取り。
  • 時間。
  • コスト。
  • 後始末。
  • 新人教育。
  • 生活。

これらに意識を割けるということは、出来事そのものに処理能力の大半を使わなくて済むということです。

だから読者は、「この人にとっては当たり前なんだな」と自然に理解します。


日常を描くとは、事件を軽く描くことではない

ここで勘違いしてはいけないのは、日常的に描くことは、出来事を軽視することではありません。

  • ドラゴンは依然として危険です。
  • 手術は依然として命懸けです。
  • 戦争では人が死にます。

しかし、それらと毎日のように向き合う人は、その危険性を知っているからこそ、恐怖だけでは動きません。

経験、手順、工夫、準備、習慣によって危険を管理しています。

つまり、日常的な演出とは「危険がない世界」を描くことではなく、「危険と共に生活する人々」を描くことです。

だからこそ、その世界には厚みが生まれます。

事件がある世界ではなく、事件を含めて生活が成立している世界。その生活感こそが、読者に「この世界には本当に人が暮らしている」と感じさせる最大の演出なのです。

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