創作論

【創作論】毎日の出来事なのに、なぜこんなに印象に残るのか。日常を「非日常」として描く10の演出テクニック

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創作では、派手な事件ばかりがドラマになるわけではありませんし、描きたい物がそう言う物ばかりでもない筈です。

  • 朝起きる。
  • 学校へ行く。
  • 仕事へ向かう。
  • 食事をする。
  • 買い物をする。
  • 帰宅する。

これらは、誰もが毎日、当たり前に繰り返している日常です。

しかし、優れた作品は、こうした何でもない日常でも、登場人物によって「特別な出来事」のように描くことが出来ます。

出来事は日常でも、登場人物にとっては非日常にすれば、そうなるからです。

非日常とは、「珍しい出来事」のことではなく、その人物にとって、慣れていない出来事を意味します。

つまり、世の大半の人にとって毎日やっている行為であっても、描く登場人物にとっては、

  • 初めて経験する
  • 心理的な負荷が大きい
  • 失敗できない
  • 感情が大きく揺れる
  • 十分な経験がない

等であれば、それは演出的には非日常になります。

今回は、日常を非日常として見せる演出テンプレートを紹介します。

異物が社会に紛れ込んだり、ギャグ的にダメ人間を描く時などに、大活躍のテクニックになります。


① 「初めて」にする

もっとも簡単な方法が、これです。

  • 学校へ行く。
  • 会社へ行く。
  • 料理をする。

全部、初日なら非日常になります。

  • 制服を着るだけでも緊張します。
  • 教室の扉を開けるだけでも勇気が要ります。

出来事は同じでも、経験値が変われば演出は一変します。


② 絶対に失敗できない理由を作る

普段の料理でも、「今日は恋人の両親に出す料理」となれば空気は変わります。

普段の挨拶も、「これが人生最後の面会」なら意味が変わります。

行動は同じでも、失敗のコストを上げるだけで非日常になります。

また、当事者が「失敗したくない、恥ずかしい」と極端に恐れるだけでも、それは非日常的となるのです。


③ 時間制限を設ける

朝食を食べる。

これだけなら普通です。

しかし、あと三分で電車が来るなら?

違ってきますよね。

歯磨き一つでも戦いになります。

人は時間に追われるだけで、日常動作がタイムリミットのあるイベントになります。


④ 情報不足にする

  • 初めて訪れる会社。
  • 知らない学校。
  • 知らない街。

何が正解か分からない。

どこへ行けばいいか分からない。

だから緊張します。

普段なら何でもない行動でも、知識不足が非日常感を作ります。


⑤ 他人の視線を強調する

一人で昼食を食べる。

普通なら何でもありません。

しかし、周囲全員がこちらを見ている。

そんな気がするだけでも、その人にとっては非日常的です。

  • ただの昼食時間。
  • 発表会の日。
  • 入学式。
  • 転校初日。

視線が集まるだけで、集まっている気がするだけで、日常行動は特別な行動になります。


⑥ 小さな失敗を重大事件として扱う

コーヒーをこぼした。

本来なら拭けば終わりです。

しかし、

  • 真っ白な礼服。
  • 重要書類。
  • 好きな人の服。

など状況を変えるだけで、「こぼす」という小さな失敗ごときも、大きな影響を与え、日常が大事件になります。


⑦ 五感を細かく描く

緊張している人は、五感がマニュアルモードに寄っていくので、必要以上に周囲を細かく認識します。

  • 靴音。
  • 時計の秒針。
  • 制服の擦れる音。
  • 汗。
  • 匂い。
  • 喉の渇き。

普段なら無視する情報が、大量に意識へ流れ込みます。

五感を増やすだけで、緊張を共有できます。


⑧ 思考を細分化する

慣れている人は、「ドアを開ける」だけで終わりかもしれない場面も、緊張している人は、

  • ノックするか。
  • 右手か左手か。
  • 今入るべきか。
  • 笑うべきか。
  • 最初は何と言うか。

など、一つの行動を何段階にも分解して考えます。

思考量が増えるほど、非日常になります。


⑨ いつもと違う一点を作る

  • 毎日通る通学路。
  • 毎日乗る電車。
  • 毎日使う玄関。

しかし今日は、

  • 誰かが待っている。
  • 花束が置いてある。
  • 警察が立っている。

一つだけ違和感を置くだけで、日常が特別な空気になります。

それに意味を持たせれば、物語が動く仕掛けになります。


⑩ 本人だけが重大だと思っている

世界から見れば小さなことでも、本人には人生最大の出来事だったら、それは非日常的です。

  • 告白。
  • 面接。
  • 受験。
  • 退職届。
  • 初出勤。
  • 卒業式。

他人は普通に生活しています。

しかし主人公だけは、まるで世界が止まったり、孤立したり、崖っぷちなように感じています。

この温度差が、強い非日常感を作ります。


共通するもの

ここまでのテンプレートには共通点があります。

それは、人物から「余裕」を奪うことです。

慣れている人は、出来事以外にも意識を向けられます。

しかし慣れていない人は、目の前の一つの出来事で頭がいっぱいになります。

だから、

  • 視野が狭くなり、
  • 思考が増え、
  • 失敗を恐れ、
  • 音や匂いまで意識し始めます。

読者は、その状態を通して「これは特別な出来事なのだ」と感じ取ります。

それが読者にとって日常的で、取るに足らない事だとしてもです。


日常を非日常にするのは、事件ではなく人物

大きな事件を起こさなくても、物語は始められます。

  • 入学式。
  • 初出勤。
  • 引っ越し。
  • 初デート。
  • 親への報告。
  • 友人との別れ。

どれも現実では珍しくありません。

それでも当事者にとっては、一生に何度も経験することではなく、その瞬間は強く記憶に刻まれます。

だから、読者もその緊張や期待に共感できます。

日常を非日常として描くとは、無理に日常を大げさにすることではありません。

その人物にとって、その日常がどれほど特別な意味を持っているのかを描くことです。

事件の大きさではなく、人物の経験、感情、立場、そして余裕の有無が、日常をドラマへと変えていきます。

だからこそ、優れた作品では、朝の挨拶一つ、教室へ入る一歩、玄関のドアノブに手をかける瞬間ですら、読者の記憶に残る名場面になり得るのです。

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