「力持つ者達のゲーム」とは?
ここでは「力持つ者達によって行われるゲーム」をテーマにした物語を解説します。
日本では特に人気のある物語構造なので、該当する物語が多く、サンプルに困らず、その影響で更に新しい物語が作られる良い循環があるカテゴリーの一つです。
「特殊能力バトル物」と言えば、なんとなくイメージしやすいと思います。
この形式の物語は、構造カテゴリーで別の言い方をするならば 「成長の旅の中で、特別な力に翻弄される物語」「相棒と出会い、特別な力に翻弄される物語」 となります。
目次
- 解説
- 必須要素
- 該当作品
解説
「力持つ者達のゲーム」って、どんな物語?
まず「力持つ者達のゲーム」とは、どの様な物語を指すのか?
それが分からないと、物語の全体を想像しにくいですよね。
なので、この記事では「主人公が特別な力を手に入れた事で、力持つ者達の行っている特別な力を使ったゲームに巻き込まれ、その中で成長していく物語」として解説していきます。
平凡な日常から始まる物語
このタイプの物語の主人公は、物語開始時は、非常に平凡です。
一見して分かる特殊な技能などは持たず、どちらかと言うと冴えない人物である事の方が多いです。
冴えない事で、無力感を感じていたりする事もありますが、多くの場合は分不相応に正義感や責任感が強かったり、お人好しでトラブルに首を突っ込む傾向があります。
ゲーム「Fateステイナイト」では、主人公は、新米の魔術師でこそありますが、普通の高校生として過ごしていて、性格の特徴としては、過度の正義感の強さとお人好しが目立つキャラクターです。
アニメ「ウィクロス」では、主人公は、やはり平凡な学生です。ゲームが得意な事以外は目立った特技は無く、家庭に問題を抱えていて、優柔不断な面はありますが、お人好しで正義感のあるキャラクターです。
偶然、特別な力を手に入れる
ある日、主人公には転機が訪れます。
偶然(時には運命によって)、主人公は非日常とも言える別の世界に足を踏み入れる事になり、そこで力を手に入れます。
それと同時に、同じ力を持った特別な存在だけで行われているゲームがある事を知ります。
ゲーム「Fateステイナイト」では、主人公はサーヴァントと呼ばれる英雄を召喚して戦い合わせる聖杯戦争を偶然目撃してしまい、運命の導きによって自身もサーヴァントを召喚し、聖杯戦争に参加する事になってしまいます。
漫画「ローゼンメイデン」では、ローゼンメイデンと呼ばれる少女人形を戦い合わせるゲームに巻き込まれ、主人公は一体のローゼンメイデンのマスターとなってしまいます。
ここでポイントなのは、
- 主人公が手に入れる特別な力は、主人公の住んでいる世界を基準にすると、ファンタジーかSFに相当する、魔法的か科学的な物である事
- 主人公は手に入れる事で力を手に入れるが、代わりに使命や、ゲームの強制参加と言うデメリットが発生する事
- 使命やゲームには、参加その物のデメリット以外に、勝てば手に入る「らしい」メリットの提示もされる事
- 使命やゲームには、最初にルール説明されたのとは別の、主人公が知らされていない本来の意味や、別の計画が存在する事
これらを満たした、手に入れる力も、そのデメリットも、あまりにも大きなゲームに主人公は強制、あるいは、半強制的に参加させられます。
物語の中心ともなる特別な力の形ですが、
- 相棒タイプ:力の象徴その物に意思があり、この要素を満たせばカテゴリ「相棒」物になる。相棒との愛情や友情が物語の重要な要素となる。(魔法少女物のマスコットは含まれない)
- アイテムタイプ:携帯したり、装着したり、時には内蔵されたりする。力の象徴に意思はない。
- 変異タイプ:変身したり、特殊能力が身についてしまったりする。身体その物が変化するパターン。
等が基本で存在し、これらの組み合わせで表現されます。
そのどれもが、力自体にもメリットと同時に、制限やデメリットを持っています。
ゲーム「Fateステイナイト」では、魔力を大量に消費したり、制御が利かなかったり、サーヴァントは万能ではありません。ちなみにサーヴァントは、相棒タイプです。
ちなみに、アニメ「ウィクロス」のルリグはカードと言うアイテムと相棒を合わせたタイプ。漫画「ローゼンメイデン」は、人形と言うアイテムと相棒を合わせたタイプです。
ゲームを生き残る為に
この形式の物語の主人公は、まずはゲームを消化していくしかありません。
まず間違い無く、日常との二重生活の開始です。
怪しまれない様に日常生活は消化しつつ、裏ではゲームの方も消化しないといけません。
状況に翻弄され、とにかく生き残る事、被害を抑える事、ゲームに勝つ事に全力で取り掛かります。
ですが、手に入れた力を日常でも活用してやろうなんて事を考える事もあります。
その際は、圧倒的な力で目的を達成するでしょう。
その内、主人公は自身の元来持っていた、正義感やお人好しと言う、日常では持て余していた特性が、特殊な力を手に入れた事で、初めて役立ち、しっくりと来る感覚を得ます。
ゲームを通して、主人公は成長し始め、劇的な活躍を続け、ゲームの中でも頭角を表していきます。
力を持つ者達の中で、有名になる
主人公は、大抵の場合、ゲームへの参加は、ゲーム全体から見ると最後の方です。
つまり他のプレイヤーから見ると新人、あるいはカモに見られる事になります。
ですが、特別な能力に恵まれていたり、元来持つ才能が開花する事で、劇的な成果をあげてしまい、ゲーム全体の中で目立つ存在となります。
目立つと、どうなるか?
味方も敵も、主人公に近づいて来るのです。
そうすると、主人公は気が付けば、ゲームの中心にいる事になります。
味方は増え、近づいて来る敵はドンドン倒し、気が付けば名前を知られる存在へと成長する道を、着実に辿っている訳です。
迫りくる危機
主人公の事を快く思わない、力を持つ人々が生まれるでしょう。
ゲームであれば勝利の邪魔だと思う人が、使命や目的であれば主人公の活躍が邪魔になる立場の人が現れます。
この敵対者のポイントは、あくまでも主人公と同じゲームや使命の上で対立するプレイヤーと言う事です。
ゲーム「Fateステイナイト」では、主人公と同じ立場である聖杯戦争のプレイヤーと言えるマスターと呼ばれる人が主人公以外に6人存在し、1人を除いて全員が敵対者として襲ってきます。その中でこの中ボスとでも言うべき立場のキャラクターは、イリアとバーサーカーでしょう。
ゲームを通して強敵を撃破、した……けど?
主人公は、様々な苦難の末、なんとかゲームを勝ち上がります。
ゲーム、あるいは使命の終わりは近づき、物語は佳境に入ります。
最後の対戦相手と対峙する事に、遂になった、その時です。
最後の対戦相手によって、ゲームの、使命の、衝撃的な裏側を、本当の意味を突きつけられ、葛藤する事になります。
ゲーム「Fateステイナイト」では、前回の聖杯戦争から続く因縁と陰謀が暴露され、黒幕のいいように操られていた事が判明し、野望を止めなくてはならない事になります。
アニメ「ウィクロス」では、この時点で既に裏がある事がすでに分かっていたゲームの、更に黒い裏側を知り、状況を打開する為に主人公達は試行錯誤を続けます。
最後の戦い
敵の黒幕が表立って動き出します。
その本当の目的が関係者や、圧倒的力を持っている事で余裕がある敵の口から語られ、主人公や仲間達は全力を持って阻止に向かいます。
ここで、敵にとって予期しない事が起きます。
ここまで競い合ったり、掌の上で踊っていた、ある種、黒幕にとって道化の筈だった主人公が、試練を乗り越え、成長した結果手に入れた力。
それが、黒幕の力と同じ性質を持ち得る、黒幕の天敵とも呼べる存在だった事が判明します。
ゲーム「Fateステイナイト」では、黒幕が聖杯を使ってろくでもない事をするのを阻止しようと主人公達は総力戦を仕掛けます。その際、主人公が最終的に手に入れた能力は、黒幕と同質のものでした。
アニメ「ウィクロス」では、黒幕が最初に作った二体のルリグが、最終的にどちらともに主人公側についてしまい、黒幕は圧倒的だった優位性を失ってしまいます。
この様に、圧倒的な力を持ち、入念な計画を立てていた筈の黒幕は、主人公によって計画を狂わされます。
黒幕とは正反対の性格や思想ながらも、似た性質を実は持っていた主人公。
その偶然によるゲーム参加こそが黒幕の敗因と言う訳です。
フィナーレ
主人公と仲間達の活躍によって黒幕は倒され、野望は阻止されます。
ゲームは終わりを迎えました。
共に戦った仲間達も、それぞれが日常に戻っていきます。
相棒タイプの特別な力の場合、主人公は場合によって相棒との別れを経験する事になります。
作品によっては、涙無くしては見られないシーンとなるでしょう。
こうして、主人公が世界を救い、仲間達と別れ、最高の形で夢の様な時間は終わり、物語は感動のフィナーレを迎えます。
主人公と相棒は、たとえ別れる事になっても、強い繋がりが消える事はありません。
ゲーム「Fateステイナイト」では、相棒であるセイバーを召喚するのに聖杯が必要だったのですが、黒幕の野望を打ち砕くために聖杯を破壊してしまい、セイバーは元の時代に帰ってしまいます。(ED1)
アニメ「ウィクロス」では、相棒であるタマを生み出した呪いを解いて黒幕を救う事でゲームを終わらせますが、代償としてタマと別れる事となります。(ですが、タマはカードから出て人の姿になり帰ってきて、それだけなら嬉しい演出だったのですが、呪いのゲームはまだ続編へと続くと言う凄い展開が待っています)
まとめ
以上、力持つ者達のゲームとは、平凡だった主人公が、偶然特別な力を手に入れ、力を使ったゲームに巻き込まれ、ゲームの裏側にあった野望を阻止する物語と言う事でした。
この形式の物語のポイントは、主人公をしっかりと仲間やライバルを通して、対比させて描き、最後に黒幕の対の存在となる様に描く事にあります。
主人公と黒幕が、正反対だったり、似た境遇や共通点があるが、主人公には仲間がいて、黒幕には仲間はいないが力だけは桁違いにある。
黒幕一人に対して、黒幕と似た性質の力と、仲間達の存在によって対等に並び、黒幕を最後には打ち倒す流れは、鉄板であり、王道です。
また「力を得た者の責任の物語」と似ている部分がありますが、主題や構成、必須要素等が微妙に違うので比べて見てもいいかもしれません。
この記事が好きな作品探しや、この形式の物語を作る時の参考になればと思います。
必須要素
◆特別な力
成長の旅
- 旅の目的、夢や目標
- 目的を同じくする仲間の存在
- 大事なのは成長の過程で、真の報酬は仲間
特別な力
- 魔法の力のルール
- 叶えたい願い
- 魔法の力を知る協力者
- 魔法の力無しで叶える本当の願い
◆特別な相棒
相棒
- 揃って初めて完全となる主人公と相棒の二人
- 相棒と近づかせ、同時に対立させる事情
- 二人でないと解決出来ない問題
特別な力
- 魔法の力のルール
- 叶えたい願い
- 魔法の力を知る協力者
- 魔法の力無しで叶える本当の願い
「力持つ者達のゲーム」該当作品
◆特別な力
◆特別な相棒
※地道に追加、修正予定。
※他の形式の物語も知りたい場合は、物語カテゴリーをご覧ください。