パラダイムで見る昔話「小人のくつ屋さん」「鶴の恩返し」

昔話を分析・解説

今回のテーマは「小人のくつ屋さん」と「鶴の恩返し」だ。

小人のくつ屋さん

引用:青空文庫

https://www.aozora.gr.jp/#main

著者:グリム兄弟

https://amzn.to/38QVFcG

翻訳:大久保ゆう

プロローグ

 あるところに、くつ屋さんがおりました。

日常の時

 自分がわるいことをしたわけでもないのにとにかくお金がなくて、一足のくつを作るだけの皮しかもう残っていません。

切欠の時

 ある夜、あくる朝に仕立てようと皮を裁ち切っておきました。

 心根のよい人でしたから、ひそやかにベッドで横になりながら、おいのりをとなえつつ、ねむりに落ちます。

 朝になって、おいのりしたあとで、さて仕事に取りかかろうとすると、気づけば一足のくつはとうに仕上がり出来上がっていて、つくえにちょこなんと立てられているのです。

悩みの時、決意の時

 びっくりたまげたその人は何とも言えずに、間近に見てみようと、くつを手に取りました。

 すばらしい出来のくつで、ぬい目も寸分まちがいなく、まるで、たくみの手になるもののよう。

試練の時

 まもなく、お客さんがやってきましたが、もう大まんぞくでしたので、よけいにお金を支払ってくれました。

 つまり今度は二足分のくつが作れるほどの皮が買えたわけです。

 そして夜になって、あくる朝、気持ちも新たに仕立てようと皮を裁ち切っておきました。

 ところがその手はかからずじまい。

 というのも、起きたときにはもう出来上がっていたからで、お客さんにとっても申し分なし、お金がたんまりふところに入って、次には四足分のくつが作れるだけの皮があがなえました。

 さらにあくる朝早くには、仕上がった四足のくつ、こんな調子がどんどん続いていきます。

 夜に裁ち切っておけば、朝には勝手に出来上がっていて。

 たちまち暮らしも立つようになり、とうとうお金もちになりました。

切欠の時

 クリスマスも近いある夜、皮も裁ち終わったくつ屋さんは、ベッドに入る前におくさんに言いました。

「今夜ためしに寝ずの番をして、どなたが手助けしてくれているのか、たしかめてみるのはどうかね。」

 おくさんもうなずいて、明かりもつけておくことにしました。

 部屋のすみにひそんで、自分たちの前には服をかけておいて、そこからのぞきみるのです。

 すると夜がふけたころ、目にとびこんできたのは、ふたりの小人さん、服は何も着ておらず、くつ屋さんの仕事づくえの前にじん取ると、したくずみの仕事に取りかかり、まずはぬって、ちくちくとんとん、小さな指でたくみにすばやく、くつ屋さんも目をはなせず、どぎもをぬかれてしまいました。

 手を止めないまま、やがて出来上がると、つくえの上にちょこなんと立てて、ぴょんととびおりて走りさっていきます。

悩みの時

 あくる朝、おくさんがくつ屋さんに言うには

「あの小人さんたちが、わたしたちをお金もちにしたのですから、お礼をしなくちゃなりませんよ。走り回っているのに、何も身につけるものがありませんから、寒そうでかないません。よろしいですか、ちいさな下着に、上着に、それからチョッキとズボンをぬいますよ。それに一足ずつ、くつ下もぬいますから、あなたはそれぞれに、くつを一足、作ってあげなさいな。」

決意の時

 だんなさんも、ぜひにということで、その夜、仕事をやり終えると、裁ち切った皮のかわりに、心づくしのおくりものを、つくえにそろえておいて、小人たちがどうふるまうのか、見とどけることにしました。

試練の時

 夜もふけて、とびこんできた小人さんたちが、さあ仕事と思ったところ、見つかるのは皮のきれではなく、ぴったり体に合った小ぎれいなおめしもの。

 小人もびっくり立ちすくみましたが、たちまちうれしくなってためしてみます。

 そわそわどたばた、すてきなおめしものを手に取って着こむと、歌をうたってくれました。

 さ ぼくらも おしゃれさん!
 もう くつ屋は にあわない!

 そして小人さんたちは、足ぶみしながらおどり回り、いすにつくえにとびはねて、とうとう戸口からおどり出ていきました。

エピロ―グ

 そのとき以来、小人さんたちは出てこなくなりましたが、生きているあいだ、くつ屋さんは何でもうまく行きましたし、やることもみんな大せいこうでした。

解説

まず、このオチの強引さが面白い。

小人が靴作りに来なくなったが、その代わりに良い事をしたので何故かわからないが、もっと良い状態になったと言う話である。

グリム童話だから強引さで押し切っていて、こちらも受け入れない訳にはいかないが、現代の新作では中々難しい〆である。

また、なぜ小人が可哀想な境遇の主人公と言うだけで助けてくれるのかも謎で、どこまでもフワッとしている話だ。

では、そのフワフワ設定を、もう少ししっかり作って行くと、どうなるだろうか?

そう、この物語を補完していくと、基本としては「鶴の恩返し」に近づいていく。

鶴の恩返し

Wikipedia引用

日常の時

 昔々、ある所に貧しい老夫婦が住んでいた。

切欠の時

 ある冬の雪の日、老爺が町に薪を売りに出かけると、猟師の罠にかかった一羽の鶴を見つける。

悩みの時、決意の時

 かわいそうに思った彼は、鶴を罠から逃がしてやった。

試練の時

 激しく雪が降り積もるその夜、美しい娘が夫婦の家へやってきた。

 親に死に別れ、会った事もない親類を頼って行く途中、道に迷ったので一晩泊めて欲しいと言う娘を、夫婦は快く家に入れてやる。

 次の日も、また次の日も雪はなかなか止まず、娘は老夫婦の家に留まっていた。

 その間、娘は甲斐甲斐しく夫婦の世話をし、彼らを大そう喜ばせた。

 ある日娘が、顔も知らない親戚の所へ行くより、いっそあなた方の娘にして下さい、と言う。

 老夫婦は喜んで承知した。

試練の時

 その後も孝行して老夫婦を助けていた娘が、ある日「布を織りたいので糸を買ってきて欲しい」と頼むので老爺が糸を買って来ると、娘は「絶対に中を覗かないで下さい」と夫婦に約束を言い渡して部屋にこもり、三日三晩不眠不休で布を一反織り終わった。

「これを売って、また糸を買ってきて下さい」と彼女が夫婦に託した布は大変美しく、たちまち町で評判となり、高く売れた。

 老爺が新しく買ってきた糸で、娘は2枚目の布を織り、それはいっそう見事な出来栄えで、更に高い値段で売れ、老夫婦は裕福になった。

危機の時

 しかし、娘が3枚目の布を織るためにまた部屋にこもると、初めのうちは辛抱して約束を守っていた老夫婦だが、娘はどうやってあんな美しい布を織っているのだろうと、老妻の方がついに好奇心に勝てず約束を破って覗いてしまった。

絶望の時

 娘の姿があるはずのそこには、一羽の鶴がいた。

 鶴は自分の羽毛を抜いて糸の間に織り込み、きらびやかな布を作っていたのである。

 もう羽毛の大部分が抜かれて、鶴は哀れな姿になっている。

 驚いている夫婦の前に機織りを終えた娘が来て、自分が老爺に助けてもらった鶴だと告白し、このまま老夫婦の娘でいるつもりだったが、正体を見られたので去らねばならないと言うと、鶴の姿になり、別れを惜しむ老夫婦に見送られ空へと帰っていった。

解説

まず「鶴の恩返し」の場合は、どうして主人公が助けて貰えるのかの設定がしっかりある。

そして、物語中盤に「切欠の時」ではなく「危機の時」が訪れ、機能している事で、密かに福をもたらしていた存在の正体を知った事への代償を払うピンチが訪れる展開があり、「絶望の時」では、鶴が去った事で老夫婦は本当に大事な存在を失う事になる。

で、強引なハッピーエンドと、アッサリしたバッドエンドの両作を比較してみたが、この構造の物語は、もちろん強引じゃないハッピーエンドも存在する。

その一つ、有名なのがピクサーの名作「レミーのおいしいレストラン」である。

要するに、これらの作品は「表に出せない相棒との共同事業で成功していく物語」と言えて、相棒と主人公の関係と、相棒と人間社会との関係を整える事が出来れば、その先にはハッピーエンドが待っているわけだ。

「鶴の恩返し」の場合は、存在しない「契機の時」に、おばあさんがおじいさんに対して「何してるの! 早く探しに行って!」と後押しでもすれば、「解決の時」には、みすぼらしくなった鶴を見つけ出して、改めて純粋に娘として迎え入れる様なハッピーエンドだって、十分に望める。

表に出せない相棒との共同事業で成功していく物語

この拡張性は、かなりあると思う。

人間社会に見た目から馴染めないであろう友好的な存在を利用して、秘密を守りながら成功していくなんて、幾らでもパターンを見つけ出せるだろう。

小人、鶴、鼠と、要するに人以外なら何でも良いし、人でも人前に出せないなら問題無いと言う事だ。

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