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【レビュー】The Silver Way 魅力と多様性でストーリーを動かすキャラクターデザインの発想と実践【書評】

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最高のキャラクターデザイン教科書

著者の、ステーヴン・シルヴァーさんは、日本だと「キム・ポッシブル」等の作品のキャラクターデザインが有名だろう。

『卓越性は天賦の才能ではなく、勤勉の報酬として与えられるものである』

と言う、イギリスの画家ジョシュア・レイノルズの言葉を自身へ向けたメッセージにして、キャリアを積み重ねてきたと言うシルヴァーさん。

本書は、シルヴァーさんが25年を超えるキャリアの中で開発してきた様々なテクニックを、体系立てて整理し、誰でも習得可能な状態にまで丁寧に噛み砕いた、キャラクターデザイン基礎理論の集大成的な物である。

実践すれば、天賦の才が無くとも、勤勉さによってのみキャラクターデザインの高みに辿り着ける。

そんなガイドブックだ。

2017年4月にアメリカで発売されるとベストセラーとなり、2021年3月にやっと日本語訳版が発売された。

しかし、日本人の絵に対する好みの問題なのか、この本、日本でそこまで大きく注目されていない。

だが、ちょっと待って欲しい。

絵柄の好き嫌いはあるかもしれないが、本書はアートブックでもあるが、絵のテイストの好みとかの前に、かなり優秀なデザインの参考書なのだ。

キャラクターデザインをレベルアップさせたいと考えている人は、真面目に一度手に取って欲しい

本当に、良書だから。

The Silver Way 魅力と多様性でストーリーを動かすキャラクターデザインの発想と実践

スティーヴン・シルヴァー (著), 平谷 早苗 (編集), 株式会社Bスプラウト (翻訳)

<内容>

詳細なしに伝わるデザインを目指す!
キャラクターの”らしさ”を表現する方法を説いた、世界標準の教科書!

掘り下げ、特徴を引き出し、構造を与えると、シンプルなキャラクターにも生命がこもります。

ドローイングの腕を磨きたいプロのアーティストなら、知識の整理に。
ポートフォリオを作りたい卒業したてのデザイナー志望者なら、業界の必須常識を知るために。

本書を読んだ後には、「自信」と「技術」が身につきます。

「ストーリーを伝える」「魅力ある」キャラクターをデザインするための基本を理解しましょう。

人気アニメーション番組(「キム・ポッシブル」「ダニー・ファントム」「Oops! フェアリー・ペアレンツ」)のキャラクターデザインを手がけたアニメーション業界のアーティストであり、Silver Drawing Academyのオーナーとして後進の指導にあたる著者が、数十年にわたる経験をまとめた1冊。

アドバイスや勇気、インスピレーションを得るために、繰り返し読んでいただきたい書籍です。

  • 出版社 : ボーンデジタル
  • 発売日 : 2021/3/20
  • 言語 : 日本語
  • 大型本 : 248ページ
  • ISBN-10 : 4862464971
  • ISBN-13 : 978-4862464972
  • 重量 : 1.4㎏
  • 商品寸法 : 12 x 0.8 x 9 inches
  • サイズ:A4 変形判、フルカラー

<著者プロフィール>

スティーヴン・シルヴァーは、人気のキャラクターデザイナーであり、経験豊富なアートインストラクターです。彼が創立したSilver Drawing Academyで学んだ生徒は、何百人にものぼります。ロサンゼルスを拠点にしたこのスクールでは、オンラインやオフラインのクラスから、プライベートワークショップや個人向けのメンターシップまで、あらゆるレベルのアーティストに学びの機会を提供しています。「キム・ポッシブル」「Oops! フェアリー・ペアレンツ」「ザ・ペンギンズ from マダガスカル」などのキャラクターデザイン、ディズニー・テレビジョン・アニメーション、ソニー・ピクチャーズアニメーション、ニコロデオンアニメーションなどのプロジェクトに参加した長年の業界経験を生かし、生徒たちが業界で活躍する後押しをしています。

良いキャラクターデザインとは何か

  1. キャラクターデザインとは?
  2. 日々のスケッチで役立つテクニック
  3. SilverWay、5つのフェーズ
  4. すべてはジェスチャーにあり
  5. 構造をマスターする
  6. 顔、そして頭部
  7. クリーンアップと塗り
  8. 子どもと動物

と言う感じに本書は、8つのチャプターで構成されていて、各チャプター毎にテーマに沿ってキャラクターデザインについて徹底的な解説が行われている。

その上で、デザインの成否を決める要素と、実例を使った成否、実際にテクニックを使うにはどうすれば良いか、そしてデザインプロセスの実例、等を読み手を導く様に示してくれる。

シルヴァーさんは、デザインの成否判断要素として、

  1. バランス
  2. 構造
  3. カリカチュア(デフォルメ)
  4. コントラスト
  5. 色(配色)
  6. フォーム(立体形状)
  7. ライン
  8. シルエット(ネガティブスペース:地&ポジティブスペース:図)
  9. プロポーション
  10. 統一(ユニティ)
  11. リズム
  12. バリエーション(多様性)
  13. シェイプ
  14. ボリューム

と言うデザイン要素を挙げていて、これらが必要な時に適切に使用出来ているかどうかで、デザインの成否を判断しています。

デザインを実際に行う例では、キャラクターの創作からデザインまでのプロセスを公開していて、その要所要所では、基本的な事から踏み込んだ事まで、テクニックのコツを、良い例と悪い例の両方を示しながら解説しています。

160~161ページ、チャプター6:顔、そして頭部、DO:シェイプと斜線の角度をプッシュする、より引用

【question】この絵で練習しても、この絵しか描けないのでは?

みたいな心配をしている人も、いるかもしれません。

大丈夫です。

自分の絵で、しっかりテクニックを使えます。

著者のシルヴァーさんは、カートゥーン調の絵で説明されていますし、そのまま真似をすれば似たようなデフォルメの効いた絵も描けるでしょう。

ですが、肝心の参考書としての解説は、もっと根本的な部分からの根源的なテクニックで構成されているので、どの様なキャラクターデザインにでも適応が出来ます

例えるなら、デッザン教本に記載されている絵を描く技術が、写実的な絵にも記号的な絵にも適応出来る様に、キャラクターデザインならどんなデザインのキャラクターでもシルヴァーさんのテクニックは使えます。

例え、平面的なデザインでも、立体的なデザインでも、デフォルメが強いデザインでも、リアルなデザインでも、例外なく適応可能です。

【good】とにかく説明が丁寧で分かりやすい

分かりやすく図の例を交えて説明されるので、個別のテクニック解説で分からないと言う事は、まず無いと思います。

ラフや、デフォルメの効いたシンプルな絵が多く使われ、真似をすれば紹介されたテクニックだけなら、すぐに出来る様な気にさせてくれます。

絵が描ける人なら、説明を見ながら自分の絵に取り込むのは、容易な筈です。

また、非常にロジカルな説明に終始している為、ロジックを覚える事が出来れば、感覚では無く考えながらテクニックの再現が出来ます

法則性を明かされる事で、絵に仕掛けられた様々なテクニックに気付ける様になると、キャラクターデザインへの見方が何段階も深くなり、目から鱗が落ちる人もいるでしょう。

【good】発想を掴むテクニック例が豊富

例えば32ページで、カリカチュアと言うキャラクターの特徴的な部分を強調したり印象的にデザインする手法を使う際に、モデルの写真を、どのように使うとイメージを広げる助けになるかが複数の写真とイラストを使って具体的に示されていたりします。

顔の写真を、見る目を細めたりPhotoshop等を使ってボカす事で、ディティールを曖昧にしてパーツのある領域の位置関係にだけ目を向けさせたりを、実演で見せてくれるので「こんなやり方があるのか」と言う気付きにダイレクトに繋がります

【Hmm】人によっては、絵柄が合わないかも

シルヴァーさんの絵柄は、日本のアニメでは少ない、かなりデフォルメが効いたデザインをしています。

私は、海外アニメに抵抗が無いので、非常に魅力的に見えますが、表現スタイルの差は人によっては大きな壁になると思います。

例えば、実写とアニメのどちらかを上下と考えている人や、文学小説とライトノベルのどちらかを上下に考えている人が一定数いる事に似ています。

ですが、本来そこに上下は無く、何かに最適化されたデザインと言うだけです。

日本的キャラクターデザインが好きな人もいれば、その反対の人もいます。

シルヴァーさんのキャラクターデザインに慣れ親しんでいない人がアメリカより、日本に多いのは仕方がない事です。

ですが、先に書いたように、使われているテクニックのレベルは世界クラスですので、絵柄の好き嫌いでそれを学ぶ機会を損失するとしたら、とても勿体ない事だと言えます。

本としての評価は?

個人的には、最高でした。

定価3800円、税込4180円は、適正価格と言えます。

元の値段が、大型の本なので決して安くは無いですが、こう言ったハウツー本としてクオリティは非常に高く、人によっては価格以上の価値があります。

ただ、大きめの本で横開きなので、取り扱いが大変に感じる人は、いるかもしれません。

図も文字も多い為か、電子書籍化されていないのも、人によっては少し残念。

ですが、キャラクターデザインのレベルを向上させたい人には、一度は目を通して貰いたいですし、何度も繰り返し読んでテクニックを習得して欲しい、そんな本です。

「詳細無しに、絵で伝わるデザインを作る為の、世界標準の教科書」と帯でうたっていますが、煽り文句に偽り無しです。

本書発行元リンク:株式会社ボーンデジタル

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