人の愚かさを煮詰めたパニックコメディ
すごい面白かったけど、2度は見たくないイライラ作品。
作品リンク:https://www.netflix.com/title/81252357
以下、感想をば。
Don’t Look Upは、こんな映画
冒頭、地球直撃コースの巨大彗星を発見したケイト・ディビアスキーと、彼女の師であり軌道計算したランドール・ミンディ博士の二人が、地球の危機に対処を迫られる事から物語が始まる。
だが、二人の言葉を大半の人は信じず、誰も迫る問題に対して行動しようとしない。
仕方なく、対処可能な人々をどうにか無理やりにでも動かす為に、ケイトとランドールは仲間と共に法を犯して、危機を伝える活動を始める。
と言う感じで始まるのだが、この映画、とにかく登場人物の大半が癖が強い上にクソ野郎ばかり。
中でも、アメリカ大統領ジェニー・オルレアンと、その息子で首席補佐官のジェイソン、ハイテク企業BASHのトップであるピーター・イッシャーウェルの3人への、視聴していてのヘイトの溜まり方は凄い。
基本は、バカな権力者や影響力を持つ人々に対して、正しい事をして欲しい人達が振り回されるのを皮肉たっぷりに描いている作品で、見る人をかなり選ぶ。
避けられない嫌な奴の描き方が上手すぎる
人間、社会で生きていると嫌な奴と必ず遭遇する。
その際、環境を変えられればいいが、中には避ける事が状況的に出来ない嫌な奴が現れる事がある。
学校の先生、会社の上司、役所の職員、等々、何かしらの「これを、この人にやって貰わないと困る」と言う事がある時に、その人の人生のボトルネックとなる厄介な人々だ。
彼らには彼らの業界の暗黙のルールや、それまでの生き方から形成された価値観によって、得をする為にバカな行動をしている。
なのだが、それが、その人達にとって得が見えないイレギュラーな対応になった時、行動に繋がらなくなる。
そして、その人達を避けられず、分かりやすい得をさせる事も出来ない様な状態では、お願いを聞いて貰う事は非常に難しい。
賄賂がダメなら共通の目標を作ったり、共通の敵を作ったり、脅迫したり、何らかの方法で「行動しないとダメな状況」を嫌な奴の為にお膳立てしないといけないわけだ。
本作では、地球滅亡への対処を大統領に頼みたいのに、大統領はいつもやっている自身のスキャンダル対応や政治的駆け引きに夢中で、無視してくると言う形で描かれる。
本当に見ていてイライラするが、同時に主人公達への共感度も非常に高い。
役所でたらい回しにされたり、立場が上の人にお伺いを立てないといけない状況に置かれた事がある人は、みんな「うわぁ」と思えるだろう。
そんな日常に潜むイライラの規模を大きくした上で振り回される主人公達の可哀想な姿を見て、時々笑えると言う感じの作品だ。
主人公達がブチギレて叫んだり怒鳴るシーンでは、見ている方も共感出来る上に、状況的にそれが正しいかどうかも分かるだけに、情緒が搔き乱される筈だ。
終わりに
ちなみに、本作はバッドエンド寄りのビターエンド作品である。
あんなテンポで、6ヵ月強しかないのに彗星への対策は本当に間に合うのか?
そう思って見る事になるが、結果は言わずとも視聴者は体感で薄々分かる。
クライマックスのシーンは、それまでの演出されたグダグダから一転、切なさがある良い終わりで個人的には好きだった。
2段、3段のオチがあるので、エンドロールも最後の方までしっかり見よう。
果たして人類は生き残る事が出来るのか、誰が生き残るのか?
改めて言うが、人を選ぶイライラパニックコメディ映画だが、同時に良く出来た面白い作品でもある。
冒頭のノリで無理じゃ無かったら、是非最後まで見よう。