コラム

アニメ『史上最強の大魔王、村人Aに転生する』が、予想外に面白い件

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なろうの「○○」を全力利用⁉

アニメ「史上最強の大魔王、村人Aに転生する」と言う作品を、皆さんは知っているだろうか?

2022年4月から始まったなろう小説を原作としたアニメ作品で、ノベライズコミカライズもされている作品だ。

原作は2017年8月から、今現在も連載されている。

<内容>

神話に名を刻む、史上最強の《魔王》ヴァルヴァトス。王としての人生をやり尽くした彼は、強さゆえの孤独から平凡な生活に憧れ、数千年後の世界に、村人アード・メテオールとして転生した。しかし、転生した未来では魔法文明が衰退。魔法そのものが弱体化していた。初めての友人であり幼馴染みのイリーナとともに魔法学園へと入学したアードだったが、特別な存在になることをどれだけ拒絶しても、その力が規格外であることを隠せなかった。畏敬の念を抱く者、言い寄ってくる者があとを絶たず、さらには、かつて世界を恐怖に陥れた《魔族》も暗躍し始め–。元《魔王》は平穏かつ平凡な人生を手にすることができるのか。波乱に満ちた学園ヒロイックファンタジー、開幕!

アニメ公式サイト:https://murabito-a-anime.com/#top

この様な作品なのだが、私は原作もノベライズもコミカライズも知らずに、新番組だからとアニメを見始めた。

なので、アニメ版だけの評価となるが、これが本当に面白い。

一部、気付いている人は気付いて楽しんでいる様子だが、世間では、それほど意外と話題になっていない。

なので、今回、簡単に取り上げて見る事にした。

ある種の「アンチなろう」なアニメ化

本作は、そのまま作品の設定を鵜呑みにし、既にいくつかアニメ化もした「転生後衰退世界で無双系作品」として楽しむとすると、まあ、それはそれで楽しめる人は楽しめるだろう。

しかし、それだけの作品なら、私は、本作をそこまで大きく評価は出来ない。

本作のアニメ版の奥深い楽しみ方は、しっかりした「なろう系」の作品としてのアニメ化の体裁を整えたまま、同時に「アンチなろう系」とも言える構成を取っていると言う点にある。

なんて事を言っても、

https://pbs.twimg.com/media/DryVucjU4AA8H6x.jpg

千代ちゃんみたいな事を思う人もいるかもしれない。

だが、現在3話放映された話の全てで、この作品では、原作が持っている「ガバガバ設定」や「ノリだけの展開」に対して、明らかにアニメ制作側が意図して「そうはならんが、なっている」と言う描写を、なろうのルールでは無い一定のリアリティを持って、真面目に丁寧に心がけている。

なので、原作でガバやノリが気にならない人は、そのまま受け入れられるし、そこに引っかかるタイプの人は、アニメ側の配慮によって、受け入れる事が出来ると言う状態になっているのだ。

これは、私の不勉強なら申し訳ないが、アニメ化したなろう作品の中では、初めての試みなのでは無いだろうか?

そして、このなろう系を愛する人も、なろう系の悪い意味での適当さが気になってしまう人も、両者を救済する姿勢は、実は、物凄く愛があるのでは無いだろうか?

1話目のメタな面白味

そもそも、強くなり過ぎて「敗北を知りたい」と、どっかの死刑囚みたいな事を言って転生した主人公の魔王。

自分を弱くして強者と戦いたいとか、強者がいる時代に生まれ変わりたいと言うスタートだった主人公は、開始3分でアード少年となり「対等な立場の友人が欲しかった」と言い出す。

その後「対等な立場じゃないから、友人が去って行った」みたいな風だったのに、実際は「ただのコミュ障だった」と言うアードの苦難が、メタな台詞を織り交ぜながら進んでいく。

英雄の村長に紳士的になれと言われ、友達欲しさに紳士を目指すが友達は出来ない。

八つ当たりに魔物を虐殺していると、規模こそ違うが魔物を八つ当たりで殺してまわっているヒロインのイリーナと出会う。

そのままアードは、イリーナのストーカーとなる。

その後、魔物の大発生で村が襲われ、ピンチのイリーナを救う形で魔物を一方的に蹂躙する。

イリーナが「友人に裏切られた過去のトラウマで孤独になっていた」事を聞きだせたアードは「友人を裏切った過去のトラウマで孤独になっていた」的な回想を挟み、絶対に裏切らないと約束して初めての友達を手に入れる。

紳士な青年に成長したアードは、友達となったイリーナと学校に行く事となって1話目は終了する。

ヒロインと主人公が、過去に裏切られた者と、過去に裏切って後悔した者と言う補完関係が成り立つ事が判明し、絆を結ぶシーンこそ良い話として描写されるが、それ以外のシーンに対して、アニメでは、抜けたキャラクターが空回りするコメディ作品として丁寧に描いている。

原作本来の設定意図としては、真面目な設定だった可能性があり、類型の他作品では間違いなく転生の根拠だった「敗北を知りたい」が、速攻で堂々と切り捨てられ、平然と友達作りに移行するスムーズさは、何気に凄い。

同時に、目的の変化が、ある意味で芯を喰っていて、真理と言える。

目的が変化するが、実は、そこまで遠くない。

敗北を知りたいのではなく、対等な存在と知り合いたかったと言う答えを、バキなら長い時間をかけてバトルを通して描く所を、本作では開始3分で悟るのだ。

2話目のメタな面白味

学園長に褒め倒され、アードとイリーナが英雄の子供で、全然村人Aではない事が判明する。

実技を免除され学科試験を受け結果を見ると、アードは0点で合格してしまう。

理由は、模範解答ではないが、遥かにレベルが高い回答だったと言う話だ。

教室に行くと伯爵家令嬢のサキュバスでヒロインのジニーが、爵位も実力も上の不良学生エラルドにいびられている場面に遭遇する。

ジニーへの謝罪を求めると、国内最年少で高い実力があるらしきエラルドとの決闘で勝ったらと言う話になる。

そこに、アードの前世での部下オリヴィアが担任教師としてやってきて、決闘を許可してしまう。

ここで転生が、職務放棄ぐらいの軽い感覚だった事が判明する。

七光りと煽られるが、アードの実力を察したエラルドは言葉を撤回するが、アードが天然で煽りまくった直後、圧倒的実力差を見せつけて謝罪の言葉を引き出す。

アードは、オリヴィアに、職務放棄した魔王の転生体なのではと疑念を持たれ目をつけられる。

その後、授業でダンジョンの魔物狩りをする事になり、アードはジニーに魔法をレクチャーする。

パワハラとセクハラでジニーが自信を喪失しているとアードは予想する。

落とし穴に落ち階層主のミノタウロスと遭遇した一行は、アードがボコボコにしたミノタウロスにとどめを刺す様にジニーを鼓舞する。

イリーナが一緒に階層主を倒したと喜ぶが、イリーナは何もしていない。

地上に戻ると、エラルドと取り巻き達が、懲りずにジニーに「どうせ無能女はくっついてただけだろ。楽な人生だよな」「色仕掛け色仕掛け」「大魔導士の息子も情けねぇな」と煽る。

ジニーは「私の事は何と言われてもかまいません。でも、アードさんの事は訂正してください」と立ち向かう。

「まさか、あいつに惚れたのか、こりゃ英雄男爵の娘と修羅場だな」と言われたら、「大魔導士の息子も情けねぇな」と言ったエラルドの取り巻きではなくエラルドをウィル・スミスみたいなノリでひっぱたき「二人を侮辱する事は私が許しません」と、ジニーは啖呵を切る。

微妙に、噛み合っている様で噛み合ってない会話が凄い良い。

エラルドが「生意気な、このサキュバス」と言いかけた所で、イリーナが魔物の毛皮をエラルドにぶちまける。

二人目の友人ジニーをイリーナと比較して評価していたアードが、ダンジョンの3階層クリアを命じられて最下層をクリアした事でオリヴィアにつかまって2話目は終了する。

この2話目から、面白さが加速していく。

差別主義者のエラルドだが、一貫して実力者に対しては素直だし、間違いを訂正出来ている良い所がある。

一方で、イリーナは実は、1話目のゴブリン戦も、2話目のミノタウロス戦も、ここぞと言う場面ではマジで何もせずに、アードにくっついてるだけで楽な人生を謳歌している。

「エラルドさん、煽る相手間違ってますよ!」と言うのをシレっと描きつつ、ジニーはジニーで、エラルドに仲間を侮辱されたから手が出たみたいに動いているが、ジニーが実に理不尽な暴力を、一番嫌いであろうエラルドに振るっている。

エラルドの取り巻きの罪や、二人に触れるだけでNGと言う感覚なら、まあ、ギリって言うラインだが、一度気付くと、エラルドが口こそ悪いが、結構かわいそうなのだ。

ジニーはジニーで、理不尽な暴力を振られる側から振る側になっていると言う……

3話目も、しっかり面白い

1話、2話と来て、3話連続、そんなに面白く出来るのかとドキドキだったが、3話目は、更に上回ってきた。

なろう系内では真面目に展開しているが、外から見ていると白けそうなガバに対して、こんな処理方法があるのかと唸りたくなる。

と言うか、良い感じに笑える様に誘導されている。

3話目は、不審な集団に対してアードが自信満々に「自分の読み」を語るシーンが、本当にヤバイ。

誰も肯定も否定もせず、シュールに進んでいくのだが、悪役達の「間」が、「そんなわけないだろ」って言う風に聞こえてしまい、最強なのに頭が悪い主人公によって悪事の計画が偶然暴露&破壊される切なさは、なんとも言い難い。

更に、魔族を倒した事で城に呼ばれる一行なのだが、イリーナとジニーは、ほぼ何もしておらず、褒美だけ貰っている状態だったり、「ご乱心なされたか」的な提案もツっこみセリフも、視聴者も同じ感想だよって感じで、最高に代弁してて面白い。

とりあえずジニーは「エラルドに顔向け出来るの?」って感じに結果的になっているのだが、都合が悪い部分はスルーして進む物だから、劇中で誰かがツっこむまでは、黙ってアードの活躍に黙ってついて行こうって言う腹黒さがあるのか、弩天然なのか、すっごい気になる。

もう、そんな感じで、アード、イリーナ、ジニーの3人が悪い奴じゃないが天然でヤバイのを、アニメでは良い感じに処理して話が進んでいくのが、マジで面白い。

記事の〆

現在、アニメは3話までしか放映していない。

アマプラでは、最新話だけdアニメストアだが、順次アマプラになる形式? でアマプラに入っていれば見放題枠で見れる。

なので、見た事が無い人は、騙されたと思ってチャレンジして欲しい。

素の、なろう作品そのままとして見ても、普通に楽しめると思うが、個人的には、ちょっとだけメタに、作品の本来なら「ガバ」の部分を、上手にコメディに昇華している、視聴者によるツッコミで完成すると言う形式のアニメとして、すっごく面白いので、もっとみんなに見て欲しい。

マジで、戦いが終わった後に、何もしてないキャラが何かした風にセリフを言っているだけで、相当面白いから。

既に、4話が超楽しみ。

ニコ動とかウォッチパーティ向けの作品ですよ。

余談

Amazonレビューで、

なろう転生もので多く感じる不満は
・作り手側がウケると思っている設定やセリフがスベっていてダサい。
・観ている側が萎えているところに作中のキャラが作中のキャラに対して「すごい!」「天才だ!」と言っちゃう。

という上滑りするところ。観ているとしんどく感じてきてしまう。

でもこの大魔王転生、キチンと「スベるところはスベらせる」が徹底されている。
なろう特有のスベりを
「このスベりっぷりを観てくれよ!」
という滑稽さに昇華させている。

https://www.amazon.co.jp/gp/customer-reviews/R3M47PF1BKHK3Z?ref=pf_vv_at_pdctrvw_srp

と言うレビューがあったが、非常に上手い表現だと感心した。

本来、いらない事をして「滑る・白ける・つまらなく・等々……」マイナスを感じるシーンで劇中の「よいしょ」を、あえて入れず、可能な限り現実的に正しく処理する事で、シュールなコメディとするとは、あまり見ないある種のアンチなろうな側面があるやり方で、非常に面白い。

これは、もっと評価されるべきアニメだと個人的には思っている。

4話以降も、と言うか最終話まで突っ走って欲しい。

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