目次
設定良し、作画良し、音楽良し、なのだが……
配信日に期待して視聴。
作品リンク:https://www.netflix.com/browse?jbv=81345945
以下、感想をば。
アニメ映画「バブル」とは?
<メインスタッフ>
企画・プロデュース『君の名は。』『天気の子』などの川村元気。
監督『ギルティクラウン』『進撃の巨人』などの荒木哲郎。
脚本『魔法少女まどか☆マギカ』などの虚淵玄。
キャラクターデザイン原案『DEATH NOTE』『バクマン。』などの小畑健。
音楽『進撃の巨人』『プロメア』『機動戦士ガンダムNT』などの澤野弘之。
<内容>
重力を操る泡(バブル)によって壊れてしまった東京を舞台に、家族を失い、危険な遊びに興じ続けていたひとりの少年と不思議な力を持つ少女の出会いを、リアル感と幻想的な空間を併せ持つ美しい色彩を背景に新感覚の映像美と圧倒的な躍動感で描いている。
物語のモチーフは『人魚姫』。脚本家の虚淵は、荒木監督との話し合いで”少女が恋した末に泡になる”のを”泡が恋して少女になる”ように組み替えることにしたのが物語の着想源だと明かしている。
Wikipedia引用
と言った布陣、内容の作品。
これだけ豪華スタッフが関わって、失敗なんてあり得ないと思うかもしれない。
だが、一個人の感想としては、目では非常に面白いが、一転して心では退屈、と言うのが正直な感想であった。
バブルは、こんな物語
謎の降泡現象が世界中で起き、東京で、集まった泡が爆発して都市部が壊滅。
そのまま東京が謎の泡に包まれて、重力異常を起こした世界。
東京での爆発災害で孤児となった子供らは、重力異常を利用したパルクールを通して、限られた資源を賭けあうと言う、ルールのある弱肉強食の日常を生きていた。
主人公のヒビキは、災害時に東京タワーにいて生き残った過去がある。
元々特殊な聴覚障害があって音に敏感な事で周囲に馴染めなかったが、音に敏感な事を利用した特殊能力と、飛びぬけたパルクールのセンスによって、周囲からは一目置かれていた。
そんなヒビキは、泡の爆心地である東京タワーから歌声が聞こえると引き寄せられ、事故に遭う。
命を落としかけたヒビキを救ったのは、泡が変身した青髪で猫の様な美少女、ウタであった。
ウタの高い身体能力に目をつけ、ヒビキが所属するパルクールチームに引き入れ、チームはウタを受け入れ、交流の中でヒビキも周囲に溶け込める様になっていく。
すると、よそ者の配信者パルクールチームがヒビキの所属するチームに、仲間を誘拐し、返して欲しければと勝負を挑んでくる。
チームが一丸となって仲間を取り戻すが、再び降泡現象が起きて東京は破滅の危機に陥ってしまう。
泡であるウタが破滅を止めようと姿を消す中、仲間達はパルクールの技術を活かしてウタを救い、東京の破滅を止めようと奔走する。
SF設定を前面に押し出しているが、基本おとぎ話
見始めると感じるのは「これはSF」と言う主張だ。
脚本の虚淵玄さんの趣味を感じさせる、良い意味でSFSFしたSF設定が展開し、それが作品に対してSFとしての期待感を高めてくれる。
「まどマギ」とか「ガルガンティア」とか「ゴジラ」とか、あの辺のSFですよ~と言う空気が初っ端で作られる。
しかし、本作は、SF設定が下地に存在しているのに、それが存分に機能していない。
なので、SF的な謎の解明も、事態の解決も、カタルシスも、非常に弱いか、無い。
本作は、SF作品のフリをした、近未来を舞台にした「おとぎ話」なのだ。
だから、むしろKEY作品の「kanon」とか「Air」とか「クラナド」とか、あっち系の作品だと思って挑まないと「あれ?」と言う事になる。
【bad】「重力は壊れた、好きに跳べ」と言うキャッチ
キャッチコピーとしては、別に悪くない。
いや、悪い。
劇中、確かに、東京の重力は東京タワーに近づくにつれ壊れている。
だが、肝心の劇中で、重力の乱れは、都合が良いパルクールの足場形成以外に活きていない。
なので、好きに跳ぶと言っても、基本的には重力に従って跳んでいるわけで、このキャッチから感じた「重力が壊れた世界が舞台で、キャラクター達が重力異常を利用して凄いアクションします!」みたいな期待感が、なんかしっくりこない。
更に言うと、作品の見所をプッシュするキャッチコピーとしては正しいが、本作の重要なコンセプトは「SF設定で近未来を舞台に人魚姫をやる」事で、それが一切伝わってこない。
まあ、それも仕方なしな所はあるので、後述。
【bad】引っ掛かりが残る舞台設定
孤児達が大災害後の町で物資を賭けてパルクール勝負と言う基本設定が、なかなか飲み込みづらい。
パルクールが状況にマッチするのは、分かる。
だが水底からサルベージした貴重な資源を、賭けにまわす意味が分からない。
【bad】SF設定、蔑ろ問題
SFとして見出した不幸な人は、本作の劇中描写が終始気になり、本筋に集中出来ないかもしれない。
重力異常の法則性が曖昧で、パルクールの足場や面白いステージを作る為の都合が良い設定以上の働きをしておらず、浮いている物と重力の影響を受ける物の差が描かれない事で、ずっと気持ち悪い。
さらに、泡が実は意思を持つ知的生命体と言う設定なので、本作はファーストコンタクト物と言う側面を持つが、別の知的生命体との遭遇と、人魚姫と言う物語をリンクさせた構造自体は面白いのだが、人魚姫設定側に引っ張られ、更にコンセプトでもある泡設定にも引っ張られ、肝心のSF設定が、全然活かしきれていない。
泡型知的生命体の目的の詳細がマジで分からず「宇宙の中でチリが集まって、形を作って、やがて爆発して、チリになっても再び重力とか静電気で集まって」と言う性質に似た生命体が地球と接触したらしき事は分かっても、なぜ歌うのか、なぜ重力異常が起きるのか、渦の正体は、ブラックホールの正体は、何をしたかったのか、映画を見るだけでは、本当に「???」と言う感じだ。
お約束で各自補完してくれと言う事だとしても、視聴者に丸投げし過ぎに感じた。
【bad】おとぎ話設定、蔑ろ問題
SF設定だけならともかく、SFに裏付けられるファンタジー設定も、まあ気になる。
ヒロインのウタが、人と接触すると泡に戻ると言う設定だ。
なのだが、初っ端でウタはヒビキに人工呼吸をしていて、もろに接触しているスタートだ。
直後から、急に「触れられたら泡になって消える」とアピールが始まり、実際に触れると、触れられた部位だけ泡になる。
この設定の曖昧さが、SF設定の曖昧さと合わさって倍気持ち悪い。
更に、泡になって消えてしまうから、好きな人と触れ合えない、みたいな雰囲気を出しているが、ウタは、そもそも「泡型の知的生命体」なので、泡になっても人間フォームが解けるだけなので、劇中の展開に緊張感は薄い。
ネタバレになるが、泡に戻ってもピンピンしてるしね!
「100分、何を見せられてたんだ?」と、その設定のガバガバだけでも思わせてくれる。
泡が基本フォームで、人型に一定の条件でなれるなら、別に何も困らない。
例えば、レゴブロックがあって「軽くでも触るとバラバラになるよ」と言われ「ウッカリ触ってバラバラになった」としても、また組み立てれば良いし、レゴってそういう物だし、「え?」と言う感じに近いと言うか、なんと言うか。
泡が弾けたら死亡とか、そう言う条件提示が無いと機能しない設定を雰囲気で運用してる感。
【bad】100分に詰め込み過ぎ問題
この作品は、およそ100分程度の作品だ。
つまり、脚本では100ページ、小説では薄めの1冊、テレビアニメの尺で見ると5話程度。
なのだが、内容としてやりたい事が100分スケールの作品にしては詰め込み過ぎで、キャラクターが地味に多いし、イベントも多いのに、そのどれもが薄味に調整されている。
主人公のヒビキとヒロインのウタ以外は、大きな時間が取れない。
なので、味方チーム、ライバル2チーム、敵1チームで各チーム6人+αぐらいのキャラが、リーダー以外は薄く描写され、リーダーさえもキャラクターとして掘り下げるには時間があまりにも足りない。
主人公達を見守るメンターや、劇中で数少ないSF設定を追っているキャラとか、本当ならもっと時間をかけて描く必要があったが、時間が無い事で見事にバッサリいかれ、メンターの大活躍シーンとか、人によっては「そう言えば、そんな事少し言ってたな」と設定を忘れ、本来なら熱いシーンの筈が、熱く感じるには視聴者が自分で補完しないといけないと言う状態だ。
100分に詰め込むなら、キャラ数は、相当絞りたい。
そうしないと、キャラを時間内に十分に掘り下げる事が出来ないからだ。
本作は、やりたい事を乗せまくって、削り損ねた事で、微妙な視聴感を形成してしまっていると言えるだろう。
【bad】主人公の行動と、大団円が繋がっている様で繋がっていない問題
主人公は、終始ウタの存在を求め続ける。
なのだが、上記したSFやおとぎ話な設定が雑な処理が多い為、主人公が赤い泡やらお姉さまからウタを取り戻した事で、何をどうしてセカンドインパクトが防がれ、世界とウタが救われたのかが、かなり曖昧だ。
主人公が自分でファーストインパクトは、自分がウタと接触したのがお姉さまの逆鱗に触れた的な事を言っているが、それも描写が具体的に無いので、マジでさっぱり意味が分からない。
- ヒビキは特殊な音を聞ける能力者
- 謎の泡が発生しファーストコンタクト
- ヒビキがウタの歌を聞いてファーストインパクト発生、東京壊滅、ウタがヒビキを救う
- 5年後、孤児になったヒビキが記憶が無くなりながらもウタを求めて東京でパルクールしてる
- ウタの歌に導かれてヒビキが事故に遭い、ウタがヒビキを救おうとして人フォームに
- 以降、ウタは人と触れると泡になる。直前の人工呼吸はノーカン?
- 色々ある
- ウタとお姉さまが接触したらセカンドインパクト開始
- セカンドインパクト止める為にウタが東京タワーに行くが失敗
- みんなでウタを迎えに行く
- ウタを取り戻し、セカンドインパクト回避、東京を包む泡も消える
- ウタは泡に戻ってヒビキと一緒にいる
みたいな感じなのだが、ウタを取り戻すと、なぜセカンドインパクトが止まってお姉さまが消えるか、許すか、なんかなるのかが、マジで初見だとし、考えても分からん。
各自で自己補完必須なん?
【good】キャラクター自体は、結構好き
ストーリーの構成、設定の雑さ、尺の問題、等の犠牲となった感があるが、キャラクター達は内外のデザイン共に良い。
掘り下げがしっかり行われれば、それぞれ魅力的になりそうな点で、とても勿体なく感じた。
作中、やたら愛を感じたのは、関東マッドロブスター・リーダーでCV三木眞一郎だろう。
なのだが、女性キャラが非常に少ない本作は、ヒロインのウタが刺さらないと、美少女を求めている層には、まあ辛い。
そんなヒロインも、個人的にはスライムみたいな泡フォームの方がコミカルさが上乗せされた分可愛く感じてしまった。
やっぱ人外の魅力は、人外度が高い時の方が発揮されるんすよ。
【excellent!】アニメーションと音楽は、物凄い!
内容は、一応のまとまりを見せている物の、まとまっているだけで面白く無い。
なのだが、それを表現するアニメーションや音楽の出来は、流石にキレッキレだ。
気持ちが良いパルクールシーンを見る為だけに本作を見る価値は、十分ある。
物凄いご都合主義アイテムとして登場するジャンプシューズとか、まあ、スタジオ的にも立体起動装置をやりたかったのが透けて見える。
派手さと言う意味では良いが、100分の作品でやるには、色々と無理やりが過ぎて、ストーリー面では良いイメージが無い物の、飛び道具としては魅力的ではある。
そんな派手なシーンを彩る音楽は、澤野さんのファンとしては十分聞き応えがあった。
終わりに
総評としては、アクションシーンを見る為に見るのは、大いにありだ。
だが、100分に詰め込めるだけ詰め込んでそのままコンガリ焼いた詰め込み過ぎアニメ映画と言う感じなので、映画としての純粋評価では、酷評は逃れられない。
しかし、さすが一流のスタッフが集まっているだけあって、要領オーバーに詰め込み切りながらも一定のまとまりを持った脚本は、キレこそ悪いが綺麗に均され、雰囲気映画としては合格点にある。
だが、豪華スタッフ売りをしたからには世間からの期待値は上がるので、トータルではマイナスだろう。
SFかファンタジー、どっちかに寄せきってしまった方が、ストーリー面は確実に面白くなったはずだ。
なんとも、もったいない作品と言うのが、率直な感想である。
ファーストコンタクト物にするなら、ヒビキとウタを人と泡の架け橋としてタイムリミットまでにお姉さまと接触させる様にするとかの方が分かりやすかったし、人魚姫で行くならウタを徹底して切ないキャラクターとして描いて視聴者全員がウタの事を大好きになる様にした方がウケは良かっただろう。
重力異常下でのパルクールを目玉にしたいなら、いっそ架空スポーツモノに割り切るのもアリだが、いずれも100分に収めるならメインは一つに絞った方が他も輝いただろう。
個人的には、初見時「こいつら絶対、重力異常とか泡の秘密を掴んで技術転用してジャンプシューズ開発して、その実験でパルクールやってるだけっぽいのに、マジで配信してるだけだし独自技術でジャンプシューズ開発しただけの超有能過ぎる敵チーム(そんなに悪い奴じゃない)」が意外と好き。



