気持ちが良い邦画
日本アカデミー賞を受賞し話題となる以前から、面白いと話題となってロングラン公演をしていた「侍タイムスリッパー」がアマプラで見れたので、見た感想等を。

あらすじ
<内容>
時は幕末、京の夜。会津藩士高坂新左衛門は暗闇に身を潜めていた。「長州藩士を討て」と家老じきじきの密命である。名乗り合い両者が刃を交えた刹那、落雷が轟いた。やがて眼を覚ますと、そこは現代の時代劇撮影所。新左衛門は行く先々で騒ぎを起こしながら、守ろうとした江戸幕府がとうの昔に滅んだと知り愕然となる。一度は死を覚悟したものの心優しい人々に助けられ、少しずつ元気を取り戻していく。やがて「我が身を立てられるのはこれのみ」と刀を握り締め、新左衛門は磨き上げた剣の腕だけを頼りに「斬られ役」として生きていくため撮影所の門を叩くのであった。
と言うのが公式のあらすじ。
本作は、幕末の侍が雷にうたれ、現代の時代劇撮影所にタイムスリップしてしまい、記憶喪失の役者として周囲の優しい人々に支えられ、導かれながら、「切られ役」として成長していく前半。
そして続く後半は、切られ役として頭角を表した主人公が大きな役を貰えるチャンスに恵まれたと思いきや、タイムスリップした時に敵として立ちはだかっていた侍もタイムスリップしていて主人公と同じルートで大物役者になっていて、二人が映画撮影を通して過去の因縁を清算するまでの物語として進んで行く。
登場人物が基本良い人
主人公が世話になる寺の住職夫婦、主人公と縁があり密かに想いを寄せる事になる助監督、他にも登場する人々が基本的に善人で、見ていて嫌な気持ちになる様な事はほぼ無い。
途中で主人公に絡む事になる不良少年達も、運悪くゲロをくらって怒ってたっぽいし、理不尽な悪でも無いだろう。
そして何より、主人公が侍として、人として、筋が通っていて好感が持てて、見ていて応援出来るキャラクターで非常に良い。
構成が綺麗
本作は無駄が無く、無理が無く、脚本の都合で「こうしたい」と言う所を要所要所で必要な設定でちゃんと下支えしていて、見ていて違和感が湧く事が無い。
幕末の侍が現代にタイムスリップし、優しい人たちに助けられて適応し、天職的に「切られ役」となって活躍していくのに最短の道が自然な形で用意され、そしてその道がしっかり面白く演出されている。
その上に、作品のテーマの要素として「時代の流れに取り残されたもの」があり、
- 幕府に仕えた侍
- 時代劇ブームが過ぎた後の時代劇業界、切られ役
として生きる事になる
- 未来にタイムスリップしてしまった侍
と言う特殊な存在が、周囲が容赦なく変わっていき、翻弄されながらも、どうにか「時代に合った形を模索する」事で、良い変化をしていく。
その際、主人公は一貫して「時代の流れに取り残された要素」にこだわり、過去を見ると、上手く行かない。
だが、今を見て、自分の意思で「時代に合った落としどころ」を選び取ると、報われる事となる。
物語の前半は、侍から「切られ役」と言う時代に合った落としどころを選んだ事で、主人公は映画で大きな役を貰えるまでに成長した。
後半になると、過去の因縁と相対し、主人公は既に過ぎ去った過去ばかり見てしまい、侍に戻っていってしまう。
映画的には、侍に戻り過去の因縁を断ち切ると言う展開を、主人公の闇落ちで、絶望的な状況であると同時に、劇中の映画の撮影としは「真剣勝負の一発撮り」と言うヤバい映画撮影を行う滅茶苦茶盛り上がるシーンでもある事で、暗くなる様な暇は無い。
主人公が過去の因縁を断ち切ったのは、真剣勝負の果てに手に入れた筈の勝利、では無く、その先で手に入れた筈の「何か」に触れて、辿り着いて気付いたからであり、ここで主人公は過去では無く、今を見て生きる道を再び選ぶ事で過去を清算し、明るい未来に繋がる道が開けたわけだ。
終わりに
切られ役の師匠とかカッコよかったけど、あとは、何気に監督が良かった。
「真剣勝負で撮影しましょう」ってシーンで、主人公とライバルの2人は事情を分かって「過去の因縁を断ち切るぞ」とやるのだが、監督はただの「良い画を撮れるかも!」って狂人で、映画バカキャラも良いし、その事に主人公とライバル以外の誰一人気付けない状況でスルーされてるのも含め面白かったです。
あと、ちゃんと面白い映画が評価されるって嬉しいし、もっと応援したくなるよね。
真剣勝負のシーンは、かなり良かったので、未視聴の人は是非見てみよう。




