創作論

【創作論】読み手を気持ち良くする物語技法の考察

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快感とは欲求の処理?

創作の場では、

  • 感動展開
  • 衝撃展開
  • 泣ける演出
  • 伏線回収
  • カタルシス

などなど、いろいろと語られるものである。

しかし、それらを分解、整理すると、その多くは何らかの「気持ち良さ」の設計に行き着くものだ。

人は、気持ち良かった作品を、作者の続編や過去作を、求め続ける。

では、その「気持ち良さ」とは何か?

重要なのは、快感とは、必ずしも幸福感ではない、という点である。

むしろ多くの場合、

  • 欠乏
  • 緊張
  • 抑圧
  • 停滞
  • 不一致

みたいな、むしろマイナスな事を処理した時に快感が発生する。

つまり物語の快感とは、マイナスを満たした末に発生する欲求の処理であると見る事が出来る。

今回は、そんな読み手を気持ち良くする技法を、構造的に整理する。


溜めた物を解放する

例えば、

  • 長い誤解が解ける
  • 告白する
  • 本音を言う
  • 復讐する
  • 勝利する
  • 泣く
  • 怒鳴る
  • 報われる

これらの共通は、感情圧力の解放である。

重要なのは、先に圧力を溜めること。

不満ゼロ状態で解放しても、気持ち良くなりにくい。

逆に、

  • 抑圧
  • 屈辱
  • 我慢
  • 制限

等が長いほど、解放時の快感は強くなる。

いわゆる、典型的なカタルシスだ。


「見たかった物」を見せる

読者は常に、こうなって欲しいを意識・無意識問わず持っている。

例えば、

  • 天才が本気を出す
  • 悪人が破滅する
  • 努力が報われる
  • 仲間が再集結する
  • ライバルと共闘する
  • 前期主人公が助けにくる

など、これらは期待の充足だ。

特に重要なのは、予想外性より期待していた物を最高の形で出す方が、気持ち良くなる場合が多い点だろう。

伏線回収にも関わってくる考えだ。


不一致を一致させる

人間は、ズレにストレスを感じる。

例えば、

  • 誤解
  • 実力不相応評価
  • 身分差
  • 本音と建前
  • 能力隠し

など、これらは、「本来あるべき状態と現実がズレている」構造を持っている。

そして、それが

  • 正当に評価される
  • 正体が明かされる
  • 誤解が解ける
  • 実力を証明する

ことで、快感が現れる。

これは、認知の整合によって起きる気持ち良さだ。


リズムを作る

快感は内容だけでなく、時にテンポでも発生する。

例えば、

  • 二段、三段オチ
  • 反復
  • 加速
  • 台詞回し
  • アクションの連鎖
  • 繰り返し、バンク

など。

これは脳が、気持ち良い予測との一致を、快感として処理するために起きると考えられる。

ギャグで「天丼」が成立するのも似た考えだろう。

リズムに乗ると気持ち良くなり、それが処理速度ギリギリで一致すると、更に気持ち良くなる。


有能感を与える

読者は、自分が理解できていると感じると、快感を得る。

例えば、

  • 難しい伏線の一部にでも気づけた
  • 犯人を予想できた
  • 設定の意味を理解した
  • 台詞の裏を読めた

これらは、知的な快感だ。

重要なのは、簡単すぎないこと。

また、難しすぎても、見る人は置いていかれてしまう。

理想は、「少し頑張れば分かる」レベル。

いれが出来ると、読者を参加者に出来る。


「格差」をひっくり返す

例えば、

  • 弱者が勝つ、ジャイアントキリング
  • 見下されていた人物が逆転
  • 底辺から成功
  • 無名が大物になる、大物を超える

これらが、なぜ気持ち良いのかは、人間が抑圧構造にストレスを感じるから、その解消で気持ち良さが発生する。

そして逆転は、世界秩序をも書き換える。

特に、

  • 周囲が驚く
  • 手のひら返しする
  • 評価が逆転する

まで描かれると、かなり気持ち良い。


安全状態へ帰還させる

快感は、危険の終了でも発生する。

例えば、

  • 戦争終結
  • 帰宅
  • 朝日
  • 生還
  • 病気からの回復
  • 日常への復帰

これらは、緊張解除を象徴する。

ホラー映画後に安心するのも、似たような構造だ。

つまり、このタイプの快感とは、幸福そのものではなく、負荷状態の終了によって発生する。


「理解できなかった物」を理解させる

人間は、未整理の情報を嫌う。

だから、

  • 謎解き
  • 真相開示
  • 伏線回収
  • 世界設定説明

などは、どれも快感になる。

ただし重要なのは、説明ではなく、整理される事だ。

バラバラだった情報が、一つの形に統合される時、脳は強い快感を得る。


感情の同期を起こす

読者は、キャラクターと感情の同期をすると気持ち良くなる。

例えば、

  • 一緒に怒る
  • 一緒に泣く
  • 一緒に喜ぶ
  • 一緒に達成感を得る

など。

この時、読者は、他人の感情を追体験している。

だから、

  • 感情の積み上げ
  • 動機共有
  • 苦労共有

が重要となる。

突然泣かれても、同期していないと快感にならない。

共感出来ない登場人物や、共感への積み重ねが不足した物語の立ち上がり時には、この快感を起こせず不利に働く場合も多い。


「意味があった」と感じる

例えば、人は苦痛単体では快感を得にくい。

だが、

  • 努力が実る
  • 犠牲が繋がる
  • 死が無駄ではなかったと分かる
  • 過去が現在を救う

になると、苦痛に意味が付与される。

これは物語における、価値の変換である。

読者は、「この過程には意味があった」と思うと、報われるべきと感じているほどに、大きく満足感を得る。

逆に、積み上げが無意味化されると、強い不快感が湧く。


まとめ

快感とは、圧力を処理した結果であると言えるだろう。

物語における快感は、単純な幸福描写では、大して発生しない。

本質は、

  • 緊張
  • 欠乏
  • 不一致
  • 疑問
  • 抑圧

を発生させ、それを解決・整理・解放すること。

つまり、

「問題」

「蓄積」

「処理」

が快感構造の基本になる。

逆に言えば、最初から満たされている作品は、気持ち良さを作りにくい。

だから優れた作品ほど、先に読者を飢えさせる。

そして最後に、欲しかった物を与える。

その瞬間、読者は「気持ち良かった」と感じるのである。

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