創作論

【創作論】ダークヒーローの描き方

記事内に商品プロモーションを含む場合があります

創作でダークヒーローを書こうとすると、多くの人は「どんなダークヒーローを出すか」です。

しかし、ダークヒーロー物の肝が分かっていないと、ダークヒーローがダークヒーローとして活躍出来ないなんて事が起き得ます。

ダークヒーローが成立するかどうかを決める肝は、ヒーローや悪役の非道さや残虐さではなく、「なぜ悪が法では裁けないのか」が読者に納得できるかどうかです。

普通のヒーローは法や組織と協力する事もできます。
スーパーヒーローでも、警察の手に負えない悪者を倒したら、警察が動き、逮捕され、裁判があり、犯罪者は刑務所に入る事になります。

一方でダークヒーローは、その「仕組みが機能しない世界」だからこそ存在できます。

つまり、ダークヒーローは、なんとなく手に負えない悪人を倒す存在ではありません。

その世界の法の限界を埋める存在と言う事です。


凄い悪人より、「法で止められない悪」を作ろう

例えば、同じ悪者でも、

  • 激情の末に一人を殺した人
  • 法律の穴を利用し、何百人もの人生を破壊しているが直接の殺人には至っていない人

この二人の悪者では、ダークヒーローが狙う対象は後者になります。

前者は、法で裁けます。

しかし後者は、証拠が揃わない、権力に守られている、法律の想定外の手口を使っているなどの理由で、司法が機能しません。

だからこそ、法の外にいるか、外に行くと決めた、何者かが必要になるのです。

ここを逆にすると、ダークヒーローの筈が「法律を無視して好き嫌いで人を裁く危険人物」に見えやすくなります。


犯罪内容の「悪そうさ」ではなく「危険度」を評価しよう

ダークヒーローが見るべきなのは、罪の重さだけではありません。

上記した前提を踏んだ、社会に対する危険度です。

これは、次のような項目で考えると整理しやすくなります。

被害規模

何人が被害を受けているか。

一人か、百人か、一万人か、一億人か。

社会インフラや国家にまで影響するのか。


継続性

放置した場合、今後も被害は増え続けるのか。

偶発的な事件なのか。

継続的な搾取なのか。


再犯性

反省する可能性はあるのか。

止めても同じことを繰り返すのか。

今回限りなのか。


法的免責性

ダークヒーローを描く上では、最も重要な項目です。

なぜ法では裁けないのか。

ここに納得感が無いと、主人公が法律を破る理由も弱くなります。

警察に通報しろで終わってしまうのでは、ダークヒーローは活躍出来ません。


権力利用

  • 高い地位を利用している。
  • 資金力がある。
  • 組織を盾にしている。

政治家、企業、宗教、軍、貴族など、権力構造そのものを利用して逃げ続ける存在です。


証拠隠滅能力

  • 証拠を消せる。
  • 証人を買収できる。
  • 報道を操作できる。
  • データを書き換えられる。

これらが重要なのは、法は証拠が無ければ動けないからです。

だから証拠を消せる者は、それだけで危険度が上がります。


社会への影響

その人物が存在することで、

  • 「真似する人間が増える」
  • 「社会制度そのものが壊れる」

という場合は、単なる犯罪者よりも危険です。

悪のカリスマ的な存在は危険と言えます。


法をハックする悪を書く

ダークヒーロー作品では、「法で裁けないぐらいの暴力的な悪役」よりも「法律を利用する悪役」の方が、厄介な強敵になります。

例えば、

  • 法律の穴を利用して利益を得る。
  • 部下や末端、ブラックバイトだけが犯罪を実行する。
  • AIやシステムを利用して責任を分散する。
  • 海外法人等を使い資産を隠す。
  • 議員特権や王族特権を利用する。
  • 巨大企業として圧力を掛ける。

こういう相手は、見る人も「確かに普通では止められない」と感じやすくなります。

敵が強い理由が、戦闘能力だけでなく「社会システムに守られていること」になるからです。


主人公にもルールを

ダークヒーローは、上記条件から、法を破り正義を成します。

だからこそ、主人公側にも厳しい制約が必要です。

例えば、

  • 法的手段を試した。
  • 客観的証拠を十分集めた。
  • 被害が現在も続いている。
  • 今後も止まらない。
  • 他に止める方法が存在しない。
  • 私怨ではない。
  • 社会全体の被害を減らす目的である。

こうした条件を、可能な限り多く満たして、初めて、主人公は制裁を実行する事に納得感が生まれます。

そうすれば、読者は「好き嫌いで人を裁いている」のではなく、「最後の手段として動いている」と受け取りやすくなります。


ダークヒーロー最大のテーマは「弱者の為に罪を背負う覚悟」

ダークヒーローは、自分を正義とは考えません。

むしろ、逆であるべきです。

自分もまた法律を破る罪人だと理解している方が、認知が正しいと言えます。

それでも、「このまま放置した方が、もっと多くの人が苦しむ」そう判断したから、自ら罪を背負うわけです。

この覚悟があるからこそ、見る人はダークヒーローに共感できます。

もしダークヒーローが、「俺は正義だから悪を裁いても許される」と安易に考え始めると、その瞬間、その人物はダークヒーローではなく、独善的な暴君に近づいてしまいます。

あくまでも、弱者を守る為に、心を弱者側に寄り添い置いたまま、生きる世界や行動を悪側に置く、心と身体がチグハグな、両者を跨ぐ存在である必要があります。

だからダークヒーローは、弱者に寄り添い幸せを願いながらも、弱者と共にいられないと言うジレンマを抱えた切ない存在になるわけです。


最後に

ダークヒーローを書くときは、「どれだけ悪い悪役か」を考える前に、「なぜ法が機能しないのか」を、速攻で設計してみてください。

その理由が明確になるほど、主人公が法の外へ踏み出す理由にも説得力が生まれます。

そして、主人公が裁く基準を「悪人かどうか」ではなく、「法では止められず、放置すれば社会への被害が拡大する存在かどうか」に置けば、単なる私刑ではなく、法と正義の限界を問うダークヒーロー作品として深みを持たせることができるでしょう。

法が機能しない社会、法を無効化する悪が整えば、ダークヒーローは必要とする人々に切望されるわけです。

これは怖い事に、現実でも同じ事が言えます。

最近だと、某配信者殺害事件にて、被害者の生前の行為が余りにも鬼畜過ぎる上に、加害者が一通り法に助けを求めた末に救われなかった事で自力救済に走っていたとして、被害者とその関係者や外野の弁護士が叩かれ、加害者が同情されると言う異常事態が起きて話題となりました。

法を悪用する悪者は、厄介で、それをすると被害者になっても誰も同情してくれないぐらいはヘイトを溜め、間違いに対して間違いで正した方が支持されるなんて事が現実に起きるわけです。

物語る工房をもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む